先読み!マーケット 第十三話

概要

第十三話 2010年 オピニオンリーダーの旅行はどうなる?

厳しかった2009年が暮れましたが、新年に入って国内旅行市場はどう動くのでしょうか。

本稿では、昨年2009年11月末に実施したオピニオンリーダー層へのアンケート調査結果を紹介しながら、2010年の動向を占っていきたいと思います(調査の概要)。

注)本稿で用いる「国内旅行」は観光やレジャー、保養などを主な目的とする旅行を指します。出張・業務、帰省など家事を主な目的とする旅行は除きます。

■ 旅行回数は反発、単価抑制続く

まずは旅行回数です。今後1年間の宿泊を伴う国内旅行回数の増減見込みを尋ねたところ、オピニオンリーダー層の35%が昨年に比べて「増える」と回答しました。逆に「減る」と回答した人は18%で、「増える」が「減る」を上回りました。前回の2008年11月調査では「減る」が「増える」を上回っていましたので、市場は2009年を底として反発する局面にあるとみることができます。とはいえ、2007年11月調査に比べれば依然として低水準です。【図1】

図1 今後1年間の旅行回数

図1 今後1年間の旅行回数

次に旅行費用をみていきましょう。今後1年間における国内宿泊旅行1回あたりの費用の増減見込みを尋ねたところ、2009年11月調査では、「増える」と「減る」の割合がそれぞれ2割強で拮抗する結果となりました。「減る」が「増える」を上回っていた2008年11月調査に比べると改善してはいますが、昨年の低水準が維持されるということで、2010年も旅行費用の引き締め傾向が続くものとみられます。【図2】

図2 今後1年間の旅行1回あたり費用

図2 今後1年間の旅行1回あたり費用

■ ネット予約で費用を抑える

では、彼らは旅行費用をどのようにして抑えようとしているのでしょうか。

オピニオンリーダー層全員を対象に『あなたが年間の国内宿泊旅行の費用を減らそうと考えた場合、どのようにして支出を抑えますか』と尋ねたところ、「ネット予約で費用を抑える」(49%)が最も多い結果となりました。【図3】

ここで注目したいのは、「安い旅行商品を探す」「お土産代を減らす」「交通費を減らす」などの費用削減策が軒並み比率を下げている一方で、「ネット予約で費用を抑える」だけが高比率を維持しているという点です。宿泊費や交通費など個々の費目で比較検討せずとも、とりあえずネットで予約すれば費用を抑えられるという認識が、オピニオンリーダー層で定着した様子がうかがえます。

 図3 旅行費用の抑制方法(複数回答)

さらに、この「ネット予約で費用を抑える」動きは、徐々に市場全体へと波及していました。オピニオンリーダー層を抽出する前の”旅行好き層”の結果と見比べると、2008年11月調査の時点ではまだ両層の比率に10ポイント近い差があり、「ネット予約で費用を抑える」動きはオピニオンリーダー層が先行していました。しかし、2009年11月調査では旅行好き層での比率が大きく伸び、オピニオンリーダー層とほぼ同じ水準まで達していることがわかります。【図4】

2009年は主要旅行会社の取扱額の低迷に対し、宿泊予約サイトは好調を維持しました。「ネット予約は割安」と判断したオピニオンリーダー層の認識がより幅広い層へと浸透することで、2010年はますます宿泊予約サイトの活用が拡大することが見込まれます。

図4 「ネット予約で費用を抑える」人の割合

図4 「ネット予約で費用を抑える」人の割合

図5 回答者層の概念図

図5 回答者層の概念図

■ 旬の食欲を刺激せよ!

さいごに、2010年オピニオンリーダー層の旅行意欲をくすぐるツボをご紹介しましょう 『あなたがついつい旅行に行ってしまうのはどういう時ですか』と尋ねたところ、1位「紅葉が色づきはじめると」、2位「美味しいものが食べたくなった時」という結果となりました。「休暇」や「同行者」というファクターよりも、自発的な動機が上位にあがるのはまさにオピニオンリーダーの特徴。そして、彼らは「季節」や「食」という要素に強く反応してきました。季節感あふれる旅先の情景や、旅先ならではの旬の食に関する情報を彼らにうまく届けることができれば、恋人や配偶者を誘って訪ねてきてくれるに違いありません。【図6】

図6 ついつい旅行に行ってしまうのはどんな時?(複数回答)

図6 ついつい旅行に行ってしまうのはどんな時?(複数回答)

【参考】この設問の選択肢は以下の通りです。
年末年始の休暇/ゴールデンウイーク/お盆休み前後/祝日と土日曜日が近い時/春の便りが聞こえると/梅雨が明けて夏が来ると/紅葉が色づきはじめると/雪の季節になると/大きなイベントや祭りがあると/新しい宿泊施設がオープンすると/小説や映画等に感動してその舞台に/美味しいものが食べたくなった時/安い旅行商品を見つけると/自動車やカメラ、服などを買うと/仕事で一息ついた時/旅仲間に誘われると/地域団体や趣味のサークルで誘われると/子どもにせがまれると/恋人や配偶者に誘われると/特にない

次回は、2010年オピニオンリーダー層が志向する旅行内容をご紹介します。

私どもでは皆様が日頃感じている旅行市場への疑問や関心のあるテーマなどについてお便りを募集しておりますので宜しくお願いします。ではまた。

< 川口・塩谷 >

この研究・事業の分類

関連する研究・事業
関連するレポート
発注者 公益財団法人日本交通公社
プロジェクトメンバー 川口明子/塩谷英生
実施年度 2009年度