スペインにみるインバウンド推進体制と地方分散化施策 4.カタルーニャ州観光局

2014.05.13

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第4回 カタルーニャ州観光局

<組織>
 1995年にカタルーニャ州政府観光財団として設立され、2010年に民間事業者が会員として参画する枠組みを導入し、現在の組織形態となった。1995年の段階では純然たる自治州政府の一機関だったが、徐々にPPP(Public Private Partnership、官民連携)の導入を進めている。

<財源>
 カタルーニャ州はスペインで唯一観光税(Tasa turística)を持っている。観光税は、ホテル、アパートメント、キャンプサイト、農家民泊などあらゆる宿泊施設を対象としている。観光税は2012年の11月より導入しており、2014年が年単位で徴収した観光税を予算化する初めての年になった。観光税の総額は4000万ユーロのうち、70%にあたる2,800万ユーロをカタルーニャ州が管理し、残る1,200万ユーロは市町村に配分される。州は2,800万ユーロのうち1,300万ユーロをプロモーションに、1,500万ユーロをその他の観光政策に支出しており、州政府観光局にはこのプロモーション予算が割当てられている(予算総額2,300万ユーロの57%)。そのほか、カタルーニャ州政府からの予算が700万ユーロ(同30%)、他に観光局としての収入と観光局会員からの会費収入(後述)等で13%を占めている。

 バルセロナ市観光局はスペイン国内でもPPPの導入で最も先進的な事例であるが、PPPの導入というのは簡単ではない。民間と公的機関の間には、利益を追求するか、公益性を追求するかという目的の違いもあり、また組織としての性質も根本的に異なる。PPPを推進するにあたり重視したのは、政策を中長期的に考え、計画を実行する際は必ず単年度で成果を検証するという点である。

<事業内容>
カタルーニャ自治州政府観光局概要  州政府観光局としての主要業務はプロモーションであるが、特定の国籍の旅行者やイベント参加者の安全を確保するために警察と連携する等の取り組みも行っている。プロモーション業務を通じて旅行会社との関係性が密になれば、例えば日本人の団体客が来る場所や日程に合わせて警官を重点的に配備するなどの対策を取ることも可能になる。政府機関としての州政府観光局があるからこそ、こうした取り組みも可能である。

 もう一点、州政府観光局としては、州内における旅行者の分散化も重要な課題である。観光税から得た収入を観光振興の遅れた地域のプロモーションに利用することで、州内の是正に取り組んでいる。もちろん、PPPを推進する上では時に民間事業者と州内の分散化を目指す観光局との間に意見の相違は生まれることもあるが、そこはあくまで公的部門として役割をこなす必要がある。観光局の諮問委員会の構成メンバーである州内の5つの公的機関は、州政府観光局が行う平準化、分散化の取り組みを支援することが多く、現状ではそれほど深刻な問題にはなっていない。

このほか、市内には、カタルーニャ州政府観光局が運営する観光案内所が2か所あり、そのうち空港の観光案内所についてはバルセロナ市と共同で運営している。

<自治体・民間との連携>
 カタルーニャ州では毎年、中央政府とプロモーションに関する連携協定を締結している。これは「TURESPANA」として知られるスペイン政府観光局と連携して行うあらゆるマーケティング・プロモーション活動に関するものであり、特に地理的に遠い市場へのマーケティング活動を対象にしている。

 また、自治州の権限が強いスペインにおいて、この連携協定は、複数の自治州にまたがった観光開発に関するプログラムを行うための協定でもある。例えば、ヨットなどの水上スポーツに関する観光資源開発やマーケティングについては、広域な海面を活用するという意味で自治州間の連携が重要になる。カタルーニャ州はスペイン国内でも古くから水上スポーツの推進に取り組んでおり、大会等を実施する際は各競技団体と連携してホテルやガイドの手配を行っているが、そのプロモーション等についても政府観光局との連携協定に基づいて行っている。また、最近では「ピレネー・プログラム」という新しい観光プログラムを開発し、ナバラ州、アラゴン州、カタルーニャ州が政府観光局との連携協定に基づいて共同で事業を行った。

 自治州内の自治体や民間事業者とは、観光局の会員制度を通じて連携を図っている。観光局の会員は年間7.5万ユーロの会費を政府観光局に納める代わりに、諮問委員会と呼ばれる協議会に加盟する。メンバーは、カタルーニャ州旅行業会、同ホテル協会、同キャンピング協会などの民間業界団体が5枠、バルセロナ市やジローナ県など自治体枠が5枠となっており、その他にカタルーニャ自治州政府が5枠を持っている。

 またこうした制度上可能な連携以外にも、個人ベースのネットワークも構築されている。例えば、カタルーニャ州政府観光局には様々な人材を12カ国(市場)の旅行会社やホテルなどに送る在外研修奨学金制度があるが、同制度を利用した職員が帰国後市町村の観光推進組織に入るなどの事例もこれまで数多くあった。こうした連携は「短期的には目に見えた効果を生まないが、中長期的には非常に重要なネットワークになる」(Torrent氏)のである。

 

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