概要
私なりに観光学と術の体系をまとめたのがこちらの一覧表です(表2参照)。日本観光研究学会の前身である「日本観光研究者連合」の初代会長に選出されて、発起人として観光の体系をどう考えるか、というのでまとめたものです。学校にずっといたものだから、観光学みたいなものを体系化しなきゃいけないと思い、こういう考え方が観光政策のベースにも必要ではないかと考えて作りました。
「1.観光原論」は、人間にとって観光は何か、観光の意義・役割・定義は何かということですね。特に、観光の意義・役割・定義の部分などは、もしかしたら文学部の仕事かもしれない。ただ単に経済の面からだけ考えるのではなく、それをどう使うかという消費まで考えないといけないと。さらに、その消費の中で、生きていくための衣食住プラスアルファについて考えることが近代国家、先進国の役割じゃないかと思います。
「2.観光理論」は、観光についてはこういうことを勉強すべきだろうということです。「4.観光開発各論」では、観光地を歴史、温泉、山岳・高原などに分類しました。
「7.観光政策」は観光というのは観光庁や国交省だけでなく、各省庁が全部政策として取り組まなければダメだということで、財務省が関連する財政の話もあれば、外務省の国際交流の話もあるだろうと網羅的に書いています。
この表の右肩の一番上に1987年とありますが、その下にいくつか日付が書いてあるように、何回か改訂しています。文部省の学術十進分類法を真似して作ったわけです。10×10で、100項目が並んでいるということです。時代とともに交通容量など、新しい項目や概念なども追加しており、最初は10項目すべては埋まっていなかったと思います。
この分類表は観光を勉強している人が、今自分がどこにいるか、迷わないための地図のようなものとして提案したんです。こういうことを前提にせずに観光計画などを作るのは、地図を持たずに旅行しているようなものですよ。
地図というのは時代の変化とともに、改訂するでしょう。同じようにこの表も、どんどん改訂する必要があります。その中で自分の役割は何かということを知るという意味でも、地図が必要であり、方法論として常に全体像を眺める必要があります。
自分は観光のどの辺を勉強しようかという指針にもなります。例えば既存の学問で、経営学をやった人は観光政策や観光経済をやろう、とか。ただ、今でもあまりこういうものの必要性は議論されていませんよ。
ただ単に、今の観光地にどうやったらお客が呼べるかだけではなく、まず、「1.観光原論」をしっかり考え、そこから政策を打ち出すことは、発展途上国にも参考になるのではないでしょうか。
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発注者 | 公益財団法人日本交通公社 |