"旅のスタイル"を見直してみませんか? [コラムvol.43]

2008.08.08

研究調査部 大隅一志
研究員コラム

<はじめに>

 最近、観光活動や観光産業の地球温暖化問題への影響が指摘されはじめるなか、おりしものガソリンの高騰も加わり、自家用車(マイカー)旅行にとっては逆風の時代といえます。確かにマイカーは魅力的な旅行手段の一つですが、この機会に、あらためて"マイカーを使わない旅"の良さを見直してみてはどうでしょうか?

<便利な「送迎バス付き旅行商品」>

 東京駅八重洲南口にほど近い「丸の内鍛冶橋駐車場」。ここが、首都圏近郊観光地の大型リゾート施設や交通事業者・旅行会社などの運行する観光地行き直行バスの発着ターミナルの一つであることをご存知でしょうか?行き先は、草津、那須、いわき、箱根、伊東等々。
 先日、取材を兼ねて少し覗いてみました。集合時間に近い9時30分を過ぎる頃になると、バスターミナルは、小さな子供連れの家族客や熟年夫婦などでかなりのにぎわいを見せていました。冒頭に記した社会情勢もあってか、今夏は、例年以上にマイカーを控え、バスを利用する人が多いように見受けられます。

<車のない暮らしや旅も悪くない>

 地球環境や健康への関心の高まりのなかで、最近では"ロハス(Lifestyle of health and sustainability)"という言葉も社会に浸透し、程度の差こそあれ、個々人がそれぞれのライフスタイルの中でそれを意識した行動をするようになってきました。私も、家族ぐるみでそうしたライフスタイルに近づけたいと、できることからはじめています。
 一番の変化は、マイカーの所有をやめたこと。本音を言えば、月々の駐車場使用料や車検などの車の維持費、つまりは経済的な理由が大きいのですが、この機会に "車のない暮らし"を試してみようと思ったこともきっかけのひとつです。実践して4年になりますが、自宅が横浜市の私鉄沿線にあり生活の利便性に恵まれていたことも幸いし、多少の不便はあるものの日常生活にはほとんど支障がありません。どうしても必要な時にはタクシーやレンタカーを使えば何とかなります。おかげで自転車を使ったり歩く機会も増え、近隣を熟知するようにもなりました。"自動車は所有するもの"という呪縛からも解き放たれた気がしています。
  "マイカー放棄"は私(我が家)の旅行スタイルも変えつつあります。親の車を拝借して、あるいはレンタカーを借りて、という方法もありますが、最近は、あえて自家用車を使わない旅行スタイルを楽しんでいます。
 最近試した1泊2日の旅行を2つ紹介します。

「越後湯沢への旅」
 ホテルとリゾートマンションを運営するリゾート運営会社が、東京からの新幹線と宿泊をセットにし、旅行会社を通して販売しているパッケージ旅行商品。越後湯沢駅からの無料送迎バスやプールやジムなどの付帯施設が利用できるほか、夏休みシーズンは、施設周辺でのとうもろこしの収穫やジャガイモ堀り、そば打ち、早朝のカブトムシ捕り、渓流釣りなど子供や家族で楽しめるグリーンツーリズム体験やクラフト体験、熟年にも喜ばれるナイトコンサートや蛍鑑賞会など多様な世代が楽しめる豊富なオプション・プログラムが用意されており、車がなくとも施設周辺で自由な時間の使い方のできるサービスを提供しているところから、利用者には好評のようでした。

「いわきへの旅」
 最近のヒット映画「フラガール」の舞台となった福島県・いわき市のスパ・リゾート施設の提供している宿泊とリゾート施設入場料のセット商品。特筆すべきは、首都圏の主要ターミナル駅(東京、池袋、横浜など)からの送迎バスが無料で利用できること。私も利用してみましたが、交通費がかからず経済的な上、実に快適な時間を提供してくれました。リゾート施設にとっては無料のサービスですが、それによる宿泊客やリピーターの獲得という点において効果的なようです。
 こうした旅行商品には、部分的な荷物の運搬の苦労、好きな時間に好きな場所に簡単に行けない、といったデメリットはあるものの、?自分で運転しなくてよい(疲れない)、?渋滞やそれによるストレスがない、?移動の時間を自分の好きな時間に使える(休む、読書する、家族と話をする、車窓の風景を楽しむなど)、?旅行費用全体での割安感がある、などメリットも少なくありません。

<"マイカーを使わない旅"のススメ>

 マイカー旅行は、自由自在な旅行を楽しみたい人、家族が多く旅行費用を極力節約したい人などに都合のよい手段であることは確かです。ドライブが何よりも好きな人やオートキャンプを楽しみたい人には、それ自体が目的にもなります、しかし、マイカーを使わないことで、多少なりとも、観光活動による地球環境への負荷の軽減に貢献するとともに、マイカー旅行とは違った旅の楽しみも味わうことができます。
 ドイツのシュバルツバルト地域では、ホテルと交通機関、自治体が連携し、宿泊客に対し、地域内の鉄道やバスなどが無料になるサービスの仕組みを提供し、公共交通の利用を誘導し、宿泊客にも好評のようです。
 わが国の観光地も、環境負荷の軽減に向けた仕組みづくりへの本格的な取り組みが求められますが、同時に旅行する側も、あらためてマイカーに依存した観光スタイルを見直してみることも必要ではないでしょうか。

東京駅
東京駅「丸の内鍛冶橋駐車場」入口
主要観光地のリゾート施設への無料直行バスの案内


バス
目的地行きのバスに乗り込む利用客。家族連れが多い

 

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