観光まちづくりの財源を考える-安定した独自財源をどう確保するか [コラムvol.38]

2008.07.04

研究調査部 朝倉はるみ
研究員コラム

 日本人の旅行目的の中で、老若男女を問わず最も人気があるのが「温泉」です。にもかかわらず、宿泊客が低迷している温泉地が多いということも事実で、まさに需要と供給のミスマッチが起きていると言えます。温泉地が抱える課題は、個々の温泉地固有のものもありますが、多くの温泉地に共通するものも少なくありません。その1つが、温泉地におけるまちづくり財源の問題ではないでしょうか。具体的には観光推進組織、つまり観光協会におけるまちづくり財源をどう安定的に確保するかということになります。

■観光推進組織のまちづくり財源

 そこで、いくつかの温泉地における観光推進組織の財源をみると、その収入は、大きく「会員からの収入(会費)」「自治体からの補助金・委託金等」「イベントや駐車場など観光客からの収入」「その他」に大別されますが、それぞれの温泉地によって大きく比率が異なります。
 北海道の阿寒湖温泉は、「自治体からの収入」が6割強を占めていますが、これは「観光ルネサンス事業」等をはじめとする国の補助事業を積極的に導入しているためで、地元負担分を含めた補助金が約4,000万円含まれているためです。
 群馬県の草津温泉は「湯もみショー」の観覧料6,200万円が観光協会の収入になっているため、「観光客からの収入」が4割を占めています。
 兵庫県の有馬温泉は、「会費」が収入の半分を占めていますが、これは旅館組合及びそれに所属しない旅館数軒から約2,500万円を観光協会の会費として納めているため、他の温泉地に比べ会費比率が高くなっています。
 大分県の由布院温泉は、「自治体からの収入」と「観光客からの収入」が3割ずつを占めています。

■安定財源とは

 観光推進組織の事業規模は、当財団の調査によれば、下図に示すように全国平均で約2,500万円、そのうち6割を自治体に依存しています。しかしながら、今後ますます市町村財政は厳しくなるものと予想され、観光協会等への補助金も残念ながら増加は望めません。
 そうなると、観光協会等の独自財源は、会費と観光客からの収入となり、これらをどうやって安定的に確保するか、増加させていくか、がまちづくりを含めた観光協会等の事業継続・充実のための課題となります。
 会費については、会費値上げ、あるいは会員増加、という方法が考えられますが、観光地におけるまちづくりは多様な主体の参加が不可欠であることから、観光関連事業者だけでなく、一般住民を含めた幅広い主体を巻き込んでいくことが望まれます。
 観光客からの収入については、前述した草津温泉の「湯もみショー観覧料」のように、地元の地域資源を商品化して収入に結びつける方法や、駐車場管理なども安定的な収入となりえます。草津温泉では約1,800万円以上が観光協会に、有馬温泉は旅館組合に約2,100万円以上が収入として計上されています。また阿寒湖温泉ではロングランイベントによる収入が約1,300万円弱にのぼります。
 しかしながら、観光客数が減少しては安定財源とはなり得ないため、リピーターや連泊客にも支持されるような質の高いショーやイベント、体験プログラム等を提供することが必要となります。

■新規事業で新たな財源確保を

 観光客から得られる収入の1つに物販があります。今回調べた4温泉地の中では、草津温泉と由布院温泉が、いずれも400万円前後の収入があります。由布院温泉観光協会では、2008年1月から温泉の源泉を使用したスプレータイプの化粧水の販売を始めました。これは同協会初の企画商品で、今後も焼酎や飲料水等の独自商品の販売を計画しています。阿寒湖温泉でも、ある商品を観光協会から各商店へ卸すことにより、販売価格の一部を観光協会の収入にする予定です。また、有馬温泉では国の補助事業を導入して新規事業を起こそうという計画があります。
 温泉地をはじめとする観光地におけるまちづくりには、様々な形で行政予算が投入されます。しかしながら、まちづくりの推進主体となる観光協会等が有効に機能していくためには、過度に行政に依存することなく、受益者である地元の資金(=会費)と観光客から得られる資金(=観覧料や駐車場代、物販等)という独自かつ安定財源を確保していくことが不可欠となります。
 また、場合によっては、入湯税の活用や法定外目的税の創設、環境協力金などを導入し、温泉源を含めた地域資源の維持管理のためのコストを受益者である観光客が負担するという仕組みも検討していく必要があります。

 なお、当財団では2008年6月より、観光まちづくりに熱心に取り組む全国の温泉地をネットワークし、共通する諸課題についてその解決策を模索するプラットホーム「温泉まちづくり研究会」(https://www.jtb.or.jp/investigation/index.php?content_id=149)を創設しています。

温泉地における観光推進組織の収入内訳(2007年度)
温泉地における観光推進組織の収入内訳(2007年度)
 *注:全国の観光関連組織の事業規模
       2006年度、(財)日本交通公社が全国地方自治体対象「観光関連組織に関するアンケート調査」より
           ・年間事業規模(収入規模) 1団体平均 25,605千円

 

この研究員のその他のコラム

 

最新研究員コラム

観光研究コラム一覧