村がリゾートになった!?~中国・杭州を訪れて [コラムvol.143]

2011.06.20

研究調査部 守屋邦彦
col-143

 景勝地として知られる中国・杭州に、「村がリゾートになった場所」があると聞きました。村がリゾートになるとは一体どんな状況なのか?どんな人が訪れているのか?興味が尽きないその地に行ってみると、そこには「古くて新しいリゾート」がありました。

■地元の人にもあまり知られていない「リゾート」

中国の新幹線。指定席は日本のグリーン車のようなシートで快適。 中国の新幹線。指定席は日本のグリー
ン車のようなシートで快適。
 6月中旬、私は中国・上海から杭州へと向かいました。行き先は「アマンファユン(法雲安縵)」。中国十大風景名所の1つにも数えられる西湖の近くにある、アマンリゾーツが北京に続き中国2軒目として昨年(2010年)1月に開業したリゾートです。ファユン(法雲)村は、古い街並みが残る場所として少し前から国が管理をしていたようで、アマンリゾーツがその地のリゾートとしての整備を依頼されたようです。一体どんな場所なのか・・・。
大通りからアマンファユンへと続く道 大通りからアマンファユンへと続く道
。案内サインは上の写真のものともう
一つ(この場所よりやや手前)のみ。
 上海からノンストップの新幹線で45分、杭州駅に到着。タクシーに乗り込みリゾートの住所とおおよその場所が記された地図をタクシーの運転手に見せるも「?」という雰囲気。運転手は中国語以外わからず、私も中国語は挨拶レベルなので仕方ないな、と思いながらも繰り返し伝えるとなんとか大体の場所は理解できたようで無事出発。中国人を中心とした観光客で賑わう西湖の周囲を走ること30分、地図で見るとそろそろリゾート周辺のはずなのですが一向に看板などは見当たらず。タクシーの運転手も不安になったようで車を降りて地元の人に聞いてみるもあまり的を得た回答があった様子は無し。最後はタクシーの運転手がリゾートに直接電話をかけて道順を聞きようやく辿り着きました。リゾートの送迎を利用するからタクシーを使わない?そもそも電車で来る人はいない?(杭州国際空港から車で小1時間の距離)。あまり地域と接点がない?いろいろな疑問が浮かびました。

注)本来簡体字で記載されているものを、筆者が日本の漢字で記載している

■別世界に入り込んだような空間

リゾート正面入口 リゾート正面入口  ホテルに到着するとそこはやはりリゾート。正面に従業員がおり荷物を運んでくれます(この先は車の進入は出来ません)。フロントも非常に趣のある雰囲気で、客室や他の施設も含め基本的には昔からの建物を活用しつつ、中はほとんどが木をベースにしたものとなっており落ち着いた空間を作り出しています。
 チェックインを済ませ、従業員に施設案内をされながらフロントから客室へ。各施設は基本的に施設内のメイン通りとそれと並行する川に沿って建っており、建物が隠れてしまうような緑の中を歩く感じです。訪れたのが平日の夕方ということもありましたが、非常に静かな雰囲気で虫・鳥の鳴き声や川の流れる音だけがよく聞こえます。つい2時間前までいた上海とはあまりにも違う世界です。
客室内部 客室内部  客室に到着し、一体ここの周辺はどうなっているのだろうと思っていたところ、客室には周辺を含めたイラストマップが。これを見て、ここアマンファユンが寺院や茶畑に囲まれた場所に立地していることがわかりました。日本で例えるなら高野山の一画に位置しているようなイメージでしょうか。
 その後ホテルの従業員に聞いてわかりましたが、ホテルになる前は農家の方や僧侶の方などが住んでいたようです。現在はこの施設の中に住民がいるわけではありませんが、リゾートとして開発された後も、この村が隔離された空間になっているわけではなく、住民、あるいは寺院を訪れる一般の観光客の出入りは自由とのことです(車の進入を妨げるゲートがあるので、心理的には出入りが自由という雰囲気はしないかもしれませんが・・・)。

リゾート施設内外を仕切る入口
リゾート施設内外を仕切る入口。車の
進入を妨げているだけで、歩行者は誰
でも通行可能。

寺院に向かう僧侶達
朝、リゾートのメイン通りを通って寺
院に向かう僧侶達(右はリゾート従業
員)。後ろの建物はリゾート宿泊者の
ためのライブラリー。

■食事はヘルシーが基本?

 リゾートに到着した時間が遅かったこともあり、部屋の中や自分の宿泊施設の周辺を見ていたらあっという間にあたりは暗くなってしまいました。人里からやや離れた場所でもあり食事をするために出かけていくのは大変なので、リゾート内に点在する5つのレストランから選ぶことに。結局、地元杭州料理のレストランに行ったのですが、従業員に聞いてみると、5つのレストランのうち2つはリゾート直営ですが、残りの3つは地元の企業によるテナントとのこと。リゾート施設内に地元の企業によるテナントのレストランがあることにも少々驚きましたが、更にこのリゾートの半数近くは杭州出身、すなわち地元出身者が雇用されているとのことでした(とはいえ、そこは高級リゾート。単に地元出身者だからといって採用するわけではなく、きちんとホテルで働くための勉強を大学等でしていることが条件になっているようです)。先ほど述べた行き来が自由であることや、地元企業、地元出身者の活用などをみると、地域とのつながりは形となっているようですが、一方でタクシーの運転手などが知らなかったことからすると、地域との接点という意味でもやや格差があるのかなと感じました。
直営レストラン「スチームハウス」での朝食 直営レストラン「スチームハウス」で
の朝食
 また、朝食はホテル直営の2つのレストラン(洋食or中華)からチョイスが可能。今回は中華をセレクトして行ってみた所、出てきた料理は写真の通り。お粥にチンゲン菜の炒め物、野菜まんに蒸しまんじゅうとヘルシーなものが並びました(一緒に訪れた若い同僚は「白と緑しかありませんね・・・」とやや悲しい感じでした)。なお、朝は営業していませんが、レストランの1つは「ベジタリアンハウス」の名の通り、肉のないメニューとなっていましたし、その他のレストランもどちらかというと質素なイメージでしたので、高級リゾートというイメージとはやや異なるものでした。

■地域に溶け込んだ高級リゾートの可能性

 駆け足のアマンファユン滞在でしたが、このリゾートに私は「高級宿坊」というイメージを感じました。客室はすべて無料Wi-fiが完備、施設内にはスパやジム、更にはヘアカットも可能という整った空間で、都市の賑わいからやや距離を置き、野菜を中心としたいわば精進料理のようなものを食べ、別世界の空間の中で自分を見つめ直す・・・。そんな旅がこのアマンファユンが提供する「世界観」なのではないかと思います。
 アマンファユンは開業して約1年半ですが、宿泊客の割合は概ねアジア系と欧米系で半々とのことで、最近は中国人の宿泊客も増え、杭州周辺からの利用も多くなっているといいます。日本でも、伝統的な建物や街並みを宿泊施設などとして活用し、日本人宿泊者、更には外国人宿泊者が訪れるようになっている例は出てきていますが、アマンファユンのように地域や施設が伝えたい「世界観」をより明確にしていくことが、更に魅力を増し、吸引力を高めるポイントなのだろうと思います。個々の施設や自然に囲まれた雰囲気などの面からみても、日本の地方部において「地域に溶け込んだリゾート」の展開可能性は十分にある・・・そう感じることができたアマンファユンへの旅でした。

 

この研究員のその他のコラム

 

最新研究員コラム

観光研究コラム一覧