売上を増やす簡単な質問をする方法 [コラムvol.125]

2010.09.17

観光調査部  安達寛朗
研究員コラム

 先日、パソコンを買い替えました。家ではあまり作業しないため、安いパソコンでよかったのですが、一つだけ譲れないことがありました。それは、テレビをパソコンのモニターとして使いたい、ということです。
 しかし、テレビをパソコンモニターとして使う場合は、実際にテレビをパソコンにつなげてみないと、きちんと映るかどうかがわからないそうです。私は10日以内であれば返品できる契約でパソコンを購入したので、その期間内にきちんと映るかどうかを確かめなくてはなりません。

 早速、家電量販店に行き、テレビメーカーから推奨されていた接続用のケーブルを店員さんに探してもらいました。しかし、何軒の量販店を尋ねても、一向にケーブルの在庫がないのです。これでは、ケーブルを取り寄せている間に期限の10日が過ぎてしまいかねません。
 そこで、ダメもとで「テレビをパソコンのモニターとして使いたいのですが・・・」と、あるお店で聞いてみました。すると、「それならこのケーブルがいいですよ」とのこと。どうやら、テレビメーカーの推奨していたケーブルは既にほとんど扱われておらず、違うケーブルが主流となっていたようです。

■「ドリルと穴」の話は知っているけれど・・・

 マーケティングを学ばれた方であれば、これはセオドア・レビットの「ドリルと穴」*1の話と同じだと勘付かれた方もいらっしゃると思います。まさにその通りで、私の欲していたものはケーブルそのものではありませんでした。テレビをパソコンモニターとして使いたい、ということだったのです。店員さんは、「どうしてそのケーブルが欲しいのですか?」という簡単な質問さえすれば、多少なりともその店の売り上げを増やすことができたのでした(ケーブルはそれなりの値段がしました)。

 しかし、「お客さまが本当に望んでいるものは何か、を考えよ」と指摘することは簡単でも、いざ自分を店員の立場に置き換えてみると、適切な質問ができる人はどれほどいるでしょうか。家電量販店で接客してくれた人の多くは、「ドリルと穴」の話を聞いたことがあったでしょう。彼らは知識も豊富で販売員としてのスキルも十分に積んでいます。

 知識を具体的な行動に結びつけることは、それほど難しいことなのです。

■地道な基本の反復練習を

 レビットが、「ドリルと穴」について書いたのは40年以上も昔のことです。しかしいまだに、お客さまの言葉の背景に目を向けよ、という姿勢・考え方をきちんと身に着けている人は(私を含めて)多くないのではないでしょうか。
 書店に行けば、いろんなタイトルの本が毎月出版されています。もちろん、それらの本の中には有意義なものも多く含まれているでしょう。しかし、もっと基本的な考え方を習得することの方が、私たちにとっての優先順位は高いのではないでしょうか。
 新しい概念や方法論は、実は基本的な考え方をアレンジしたり、拡張したもの、という場合も少なくありません。まずは、基本的な考え方を繰り返し練習して、自分の血肉にすることに多くの時間を割くべきなのかもしれません。

*1 1968年にセオドア・レビットが「マーケティング発想法」の中で、「4分の1インチ・ドリルが100万個売れたのは、人びとが4分の1インチ・ドリルを欲したからでなく、4分の1インチの穴を欲したからだ」という話を紹介した。なお、この言葉そのものは、レオ・マックギブナの言葉である。

 

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