訪日客の地方訪問意向について考える [コラムvol.362]

2018.01.29

観光経済研究部 主任研究員 外山昌樹

 当財団では、インバウンドの効果を大都市圏以外にも波及させるという問題意識のもと、訪日外国人旅行者の地方訪問というテーマについて、継続的に研究を行ってきました。たとえば、2013年には機関誌「観光文化」219号において、「アジアのFIT客を地域へ呼び込む」という特集を組み、地域がFIT客を受け入れるための環境づくりについて考察しました。2017年には、同じく機関誌「観光文化」233号において、「外国人観光客の消費を地域経済活性化につなげるには」という特集を組み、全国各地の事例調査を通じて、インバウンドによる経済波及効果を高めるために行うべき施策を整理しました。

 今回のコラムでは、株式会社日本政策投資銀行と当財団が共同で実施している「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(平成29年版)」のデータを用いながら、訪日外国人旅行者の地方訪問をいかに促進させるかという点について考えたいと思います。

高い地方訪問意向

 「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」では、訪日旅行を経験したことがある回答者に対して、日本の地方観光地への訪問意向について尋ねています。ここでいう地方観光地とは、首都圏・都市部から離れた地域としています。

 下の円グラフは、特に地域を限定せず、地方観光地全般への訪問意向を尋ねた結果です。ご覧のように、「ぜひ旅行したい」または「機会があれば旅行したい」と答えた人は、全体の9割以上にのぼり、高い訪問意向を持っていることが読み取れます。

図表1 地方観光地全般への訪問意向 zuhyou1-toyama362

具体的な地方観光地への訪問意向はまだ低い

 それでは、具体的な地方観光地への訪問意向はどのようになっているでしょうか。以下の表は、60の観光地リストの中で、行ってみたい観光地を選択した回答者の割合をまとめたものです。トップクラスにいるのは、東京、富士山、京都といった有名観光地であり、40%以上の回答者から行ってみたいと思われています。その一方で、多くの地方観光地は、選択率が10パーセント未満となっています。東京、富士山ほどの高い訪問意向になることは現実的ではないにしても、もう少し訪問意向が高くなる「伸びしろ」はあるように思えます。

図表2 具体的な地方観光地への訪問意向(観光地リストからの選択率) zuhyou2-toyama362

訪日客が「したいこと」と地名との結びつきを強くする

 どうすれば具体的な地方観光地への訪問意向を高められるのかという問題を考えるにあたり、別の調査データを見てみたいと思います。以下の表は、訪日客が地方観光地でしてみたいことを尋ねた設問の中で、上位にあがったものをリスト化したものです。ここに載っている体験は、実は、多くの地方観光地で十分に楽しめることであるといえます。しかし、現状では、こうした体験が楽しめる具体的な地名が浮かんでこないために、訪日客の具体的な地方観光地への訪問意向がやや低くなっていると解釈できます。

図表3 地方観光地でしたいこと zuhyou3-toyama362

 したがって、今後求められてくるのは、訪日客に対して、地方観光地でしたいと思われている体験と、具体的な地名との連想を強く持ってもらうことです。実はこうした活動こそが、いわゆる「ブランディング」と呼ばれているものにあたります。地方観光地のブランド化とは、単に広告物の作成やPRを行うだけではなく、そうした取り組みの根底に「旅行者のニーズと地名との結びつきを強める」という意識を持つことであると考えます。

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