各家庭から始める「休み方改革」 [コラムvol.389]

2019.02.13

観光政策研究部 主任研究員 岩崎比奈子

 今年も春節のシーズンを迎え、東京をはじめ全国各地へ中華圏から多くの観光客が訪れています。1週間の休日とされていることもあって家族揃っての旅行も多く、何とも羨ましい限りです。

 私も幼い頃は、夏休みは両親の実家に長期滞在するのが恒例で、その片道に丸一日かかる道中を含めて楽しい旅の想い出ですが、そんな旅はいつも「働き盛りの父親は不在」でした。

国が推進する「キッズウィーク」

 国は平成30(2018)年度から、「都道府県・市区町村など一定の地域単位で、全国一律・一斉といった形ではなく、地域の実情に応じ、教育現場や企業の取組などを踏まえ、学校休業日の設定をはじめ、多様なやり方で自主的に取組を進めていただくことを想定。国は、地域の取組を支援」するとしています(出典:キッズウィーク総合推進会議資料)。つまり、学校休業日の分散化や働く保護者の有給休暇の取得促進により、親子が共にゆっくりと休日を過ごせることを通じて、家庭や地域の教育力の向上と休み方改革、地域・観光振興を推進していくとしています。

 こうした様々なねらいが盛り込まれたキッズウィークに関する調査として、今年度、当財団は経済産業省から「キッズウィーク関連調査事業※」を受託しています。この事業は、都市部や製造業集積地、観光地といったいくつかの地域特性を網羅するように全国9つの地域を調査実施地域として選定し、各種調査を行っています。

各地での調査からみえてきたこと

 キッズウィークに対しては、我が国では実際に体験したことがある人がまだ少ないため、「導入の効果がわからない」「関係者があまりに多くて、誰とどのような協議(合意形成)をすればいいのかわかりにくい」といった声もあるかと思います。

 今回の調査では、キッズウィークに関わる主体を図1のように整理しました。中心に「保護者」と「子供」がいて、学校や保護者の勤務先、そして地元地域の意向が、彼らの休み方について大きな影響を与えます。今回の調査ではこうした関係者へアンケートを実施し、キッズウィーク導入に期待することや懸念される点などを尋ねています。

 ここでは、その結果からみえてきたことの中から以下の3点を指摘します。

①住民にとって「平日に休む理由」があること

 調査を実施した9つの地域の中には、地元住民が総出で参加する古くからの祭礼やイベントがあり、その開催日に連続する日を「体験的学習活動等休業日」とすることでキッズウィークを創出している自治体がありました。この場合は住民からの賛同を比較的容易に得ることができそうです。

 また、観光業が主産業である地域では、観光事業所に勤務する保護者の強い希望として「仕事を休みやすい時期の平日が学校休業日になれば、親子で過ごせる時間が増えるので歓迎だ」という声も聞かれました。

②キッズウィーク導入を検討する推進主体と協議の場があること

 上記の観光地のように、感覚的に「平日が休みになったらいいな」という保護者が多いと思われる地域であっても、それを総意として取り上げ、学校管理規則を一部改正して休日を多様化しようとすることは、先に挙げた図のように多くの主体が絡む状況においては、容易なことではありません。「キッズウィークの導入が、我が町の子供達にとって良いことなのだ」と信念を持って推進する主体がなくては事は起こらず、実現に向けて進みません。教育界か行政か、もしくは観光地における観光事業従事者でもある保護者の総意なのか、それは地域の実情に応じてとなりますが、いずれか主導する主体が必要です。

③より広域での実施も検討する

 本調査では全9地域の保護者に対してキッズウィーク導入に向けた意見も尋ねていますが、その中で、特に都市部や近接する自治体へ多くの保護者が勤務している地域では、「近隣自治体とともにキッズウィークを導入してほしい」という意見がみられます。これは、保護者からの「学校がお休みになっても、親が休めるかは経営者・職場の理解次第」「親が休めなければ、子供が一人で家にいることにもなりかねない」という切実な声の裏返しです。

 今年度は単独自治体での導入、または導入に向けた検討が進みましたが、調査を実施した9つの地域が少し先導する形ででも、より広域でのキッズウィーク導入に向けて検討されることが期待されます。

キッズウィークの本格導入に向けて

 様々な目的を掲げて取り組まれているキッズウィークですが、私は「休み方改革」を後押しするものになることを期待したいと思います。「子どもの教育」という社会全体で支えていくべき観点を通じて、誰のどのような休み方が社会全体に良いインパクトを与えるのか。気兼ねしながら子育て世代だけが休むということではなくて、お互いに「充実した休み方」を社会全体で共有するといったイメージです。

キッズウィークのようなまだ経験者が少ない休日環境については、まずは親世代が経験を重ね、休み方を学ぶ必要があるでしょう。「我が町では毎年この時期(日)は小・中学校がお休み」と予めわかっていれば、自ずと家庭内でその過ごし方を事前に相談し、各家庭の実情にあった休日の過ごし方が生まれてくるのではないでしょうか。

 キッズウィークだからといって、必ずしも遠くへ旅行することだけが推奨されるべきではなく、親子が一緒に自宅で過ごすことも、働く親にとっては「休み方改革」の第一歩になると思います。実際、子供へのアンケートでは、「家族と過ごした休日の中で一番楽しかった想い出は何ですか」の問に対して、「遠くへおでかけしたこと」とともに「一緒に話しながら、ご飯を食べている時」、こうした回答も寄せられていました。

図1:キッズウィークに関わる主体のイメージ

市役所内のモニターでキッズウィークを告知(佐賀県武雄市)

キッズウィークに開催された家族向けのバスツアー(佐賀県武雄市)

※正式な調査名は「平成29年度補正インバウンド型クールジャパンビジネス環境整備事業 (キッズウィーク関連調査事業 )」

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