高速道路千円時代の「クルマでの移動」 [コラムvol.95]

2009.08.28

研究調査部 堀木美告
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 この夏、皆さんはどのような休暇を過ごされたでしょうか。高速道路と自動車をめぐって様々な動きがあり、その影響で夏休みのプランを変更された方も多いかもしれませんね。今回はこれらの動きを踏まえ、あらためてクルマでの移動について考えたことをいくつか書いてみたいと思います。

■観光地の駐車場調査の記憶

 学生の頃に観光地の駐車場について実態調査をしたことがあります。当時(約20年前)、若い人たちのクルマへの興味は現在に比べれば一般的に高かったと思うのですが、私の周囲では普段の生活の中で好んでクルマを利用している人が特に多かったように思います。そんなこともあって私自身クルマで出かける機会は(自分で運転する場合と同乗させてもらうケースをあわせて)、都心部にある大学に通う大学生としては比較的多かった方だと思います。友人たちと出かける際にもクルマを利用することがままあり、そんな中で観光地の駐車場に興味を持ったわけです。
 調査のためには実際に観光地へ出かけることになりますが、そのためには事前情報が必要です。当時の大学のネット環境というと、やっと個々の学生にアカウントが交付され始めたばかり。まだまだ情報収集手段としても一般的には定着していませんでしたし、自宅のPCはほぼワープロ専用で、ネットには接続されていませんでした(!)。そんな状況ですから、事前情報収集は旅行情報誌やガイドブックの類に頼るところが大でした。
 特に参考になったのは昭文社から出版されていた「車で行って遊んで泊まる」というシリーズのガイドブックです。当時、このシリーズ以外にもいくつかドライブ旅行に特化したガイドブックが刊行されていたと記憶しているのですが、このシリーズは主要な観光地の駐車場周辺の様子が詳細な地図で示されており、アクセス道路と駐車場、主たる観光対象との位置関係を把握するなど、調査を進める上で大変参考になりました。

■久しぶりに高まる「クルマでの旅行」への注目

 これらドライブ旅行に特化したガイドブック以外に、定期刊行される旅行雑誌でも年に一度(たいていは新緑の季節か紅葉のシーズン)にドライブ旅行の特集が組まれていましたのですが、最近そのような特集を見かけることは全くといってよいほどなくなりました。これは一つには「ドライブ旅行」というカテゴリーが特段の注目を集めなくなったことと、カーナビの情報端末としての高度化と普及が進んだこと(相対的に紙媒体の利便性が低下したこと)によるのではないかと考えていました。
 しかし今春、「旅行読売」の5月号では「高速料金割引!日帰り新緑ドライブ」と称した特集が組まれました。さらに最新の9月号は第1特集が「SA・PA、ルート情報付き 高速ドライブ」、第2特集が「観光、帰省の途中に 人気の道の駅」で、どちらもクルマを利用する旅行者をターゲットにした特集号となっています。

■帰省旅行の手段としてのクルマ

 この背景として大きいのは、皆さんもご推察のとおり「高速道路のETC休日特別割引」でしょう。
 明治安田生命保険が今年の夏休みの過ごし方についてインターネット調査した結果*1によると、「帰省する」と答えた人が39.8%で、昨年調査に比べて12.7%もの増加を示しました。また、帰省する人の手段は「自動車(高速道路)」が52.1%で最も多く、その3人に1人は割引制度が影響したと答えたそうです。
 一方、実態に目を向けると、お盆の時期には平日にも拡大して割引制度が適用された結果、お盆期間中の交通量は前年比14%増、30km以上に及ぶ渋滞の発生は2倍強だった*2とのこと。
 お盆の時期の帰省旅行は、「必要に迫られての旅行」という一面もあるでしょうから、一般的な旅行とは移動手段選択の基準が異なる可能性~例えば一般的な旅行に比べ、より経済性の視点が強くなること~が考えられますが、多くの人が割引制度を利用して帰省したことは間違いないようです。では、一般的な旅行において、移動手段としてクルマはどのように捉えられているのでしょうか?

■好調なエコカーの販売とクルマでの移動の魅力

 私は2008年6月にも「自家用車での移動を考える」と題してコラムを書いているのですが、その中でクルマの特性を「自在性」、「ドアtoドア性」、「私的空間性」として整理した研究成果を紹介しつつ、環境意識の高まりや原油価格の高騰からクルマ離れが進む可能性について触れました。背景にはクルマという移動手段が有するこれら3つの特性に「環境へのインパクト」を加えた4つを移動手段選択の際の指標と仮定すると、4つの指標はどのようなバランスで作用するのか?という問題意識がありました。
 ここで今春以降のエコカー市場に目を向けてみるとどうでしょうか。これまで国内で手に入る一般的なハイブリッドカーといえば、トヨタの「プリウス」でしたが、ご存知の通り2009年2月にホンダが「インサイト」を新たに市場に投入しました。トヨタが旧型を値下げして新型(2009年5月発売)と併売したことも話題になりましたが、いずれの車種も好調な販売状況にあるようです。
 これらのエコカーを購入した客層の生活一般の指向性と自動車利用のスタイル等をきちんと分析しないと確かなことは言えませんが、販売状況を見る限りでは、「環境へのインパクト」というハードルがクリアされれば、クルマはまだ魅力的な移動手段であるようです。

 それでも、やはりクルマの使い方は変わってくるでしょう。移動することそのものが楽しみの一部であるような「ドライブ旅行」が今後どのように変わっていくのか。引き続き注目していたいと思います。


*1 2009年8月10日付 読売新聞の記事による
*2 2009年8月18日付 毎日新聞の記事による

 

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