高まる自動運転へのニーズ [コラムvol.340]

2017.03.21

観光経済研究部長 主席研究員 塩谷英生

自動運転車に試乗して

 先日、「自動運転車の観光振興への利活用に関する研究会」のメンバーでもある群馬大学の小木津先生を訪れた際に、自動運転車の後部座席に試乗させていただいた。

 車両自体には一般的な乗用車が使われているが、ルーフの上にレーダーやカメラの類が積載されていることや、トランクルームに自動車を制御するための装置が設置されている点が通常と異なるところである。

 先生の実験は、自治体等の許可を得て大学周辺の公道の一部で行われている。車窓からの風景はよくある地方都市の住宅地といった印象で、狭い道路やカーブも多いので、決して運転が簡単な道というわけでもない。

 少し調整をしながら走るほどに、「それでは」ということでハンドルから手が離れて自動運転に切り替わった。月並みだが「おお」という感嘆の声が自然と出てくる。

 速度は法定速度を超えないように少し低めに設定されている。これはアクセスコントロールの加減で瞬間的にスピードが出てしまうことがあるからだ。急カーブも小刻みにハンドリングしながら曲がっていく。調整すればもっとスムーズに曲がることもできると言う。

 自動運転は、一般道の方が高速道路よりも高い技術と多くの情報処理が要求される。信号もあれば、対向車も、歩行者もいる。この日は道路工事も行われていた。こうしたイレギュラーな状況も完全自動運転の場合は処理して対応しなければならない。群馬大では文部科学省の支援を受け、国内の大学で初めて自動運転専用試験路を建設し、さまざまな交通状況に対応した安全性の検証を進めていく予定となっている。

自動運転へのニーズ調査

 国内においては高齢者の増加による交通事故のリスクや運輸業界のドライバー不足が社会問題化し、海外においてはテスラ社やGoogle社など、自動運転の事業化へ向けた動きが加速している。こうした環境変化の中で、我が国においても自動運転車普及への関心が高まっている。

 完全自動運転車が普及すれば、我が国の旅行市場において、インバウンドに続く「セカンドインパクト」が発現することは間違いない。

 「旅行・観光消費動向調査」によれば、15年の国内宿泊旅行における自家用車を利用した旅行の消費額は6.7兆円、日帰り旅行では2.1兆円であり、自動車旅行の消費額は合わせて9.1兆円となる。これが何倍になるのかは現段階で予想が難しいが、仮に1.5倍とすると4.5兆円の増加であり、これは16年のインバウンド消費額の3.7兆円を凌ぐ規模となる。国内旅行市場は活性化し、もちろんインバウンド客にとっても嬉しい移動手段になるだろう。

 安全性の確認と道路交通法の改正には未だ時間がかかるだろうが、意外に早い時期に高速道路や一般道路の限られた区間を皮切りに、自動運転が認められていくのではないかと思われる。

 そうした中で、調査票の作成には手間取ったが、2月中旬に自主研究の一環として「自動運転へのニーズに関する消費者調査」を実施することができた(全国20歳以上対象。1次調査約1万名、2次調査約1,200名)。実はまだデータのクリーニングが済んでいない段階であるが、1次調査結果のポイントを少しだけ紹介したい。

 「これからの日本の社会や経済を考えた時、自動運転車は普及した方が良いと思うか」という設問に対しては、予想以上に肯定的な意見が多くなった。「普及した方が良い」と「どちらかというと普及した方が良い」を合わせると58%が肯定的な意見を占め、否定的な意見は15%に留まっている。但し、「どちらとも言えない」と「わからない」も、合わせて28%を占める。

 自動運転による旅行が普及した場合のメリットについては、「交通事故の減少」「渋滞運転でのストレス緩和」「高齢者が旅行しやすくなる」が上位を占めた。

 「運転から解放され時間を有効に使える」「遠くへ行くのが苦でなくなる」も高く、鉄道等からモードチェンジが起こる可能性もある。しかし、ユニーク列車等との間で良い意味でモード間競争や連携が進むことを期待したい。今回は11%に留まった「通信技術を使った新たなサービスが増える」も、具体的なサービスが消費者にイメージできるようになれば、もっと高い比率になっていくだろう。

図 自動運転車の普及に対する考え方と自動運転普及のメリット
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資料:「自動運転へのニーズに関する消費者調査(速報値)」((公財)日本交通公社・17年2月実施)

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