平成の市町村合併で思うこと-求められる新たな地域イメージづくり- [コラムvol.22]

2008.03.07

研究調査部 有馬義治

 「平成の大合併」によって、従来の市町村数が約44%減少しました。この合併で多くの新しい市町村が誕生しましたが、その名称にやや問題があったりして、名称から大体の位置やその地域の特徴をイメージしにくいところも少なくありません。今後、新たに誕生した市町村が域内に有する資源等を生かし、その位置や特徴を含めた新しいイメージが広く定着するような取り組みが求められます。

■「平成の大合併」による市町村の変化

 「平成の大合併」が一段落して約2年経ちます。ここでいう「平成の大合併」の期間は、総務省が作成している関係各種資料に従って、平成11(1999)年4月1日から平成18(2006)年3月31日までとします。ちなみにこの期間設定による合併第1号は、平成11(1999)年4月1日に兵庫県篠山町など4町が合併して誕生した篠山市です。
 この平成の大合併により、平成11(1999)年3月31日現在で3,232あった市町村が、平成18(2006)年3月31日現在では1,821市町村と、1,411市町村減少しました。約44%の減少率です。これは、明治22(1889)年の市町村制施行に伴う「明治の大合併」、昭和28(1953)年10月から昭和31(1956)年9月までを中心に推進された「昭和の大合併」と並ぶ大規模な市町村合併です(表1)。これにより、都道府県別の市町村数では、富山県の15市町村を始め、市町村数が20に達しない県が6県誕生しました(表2)。また、広島県など4県で、市町村数が70%以上減少しました(表3)。
 平成の大合併は、基本的に昭和40(1965)年施行の「市町村の合併の特例に関する法律」の下に各種の特例措置を講じて進められたものですが、その後も、平成17(2005)年4月に施行された「市町村の合併の特例等に関する法律」(合併新法)に沿って、市町村合併が続いています。

■新市町村の名称について

 平成の大合併に伴って誕生した新しい市町村の名称は、合併した市町村のある郡名を取り入れたもの、合併した市町村のある地域全体を代表するような観光資源等の名称をつけたもの、合併の中核となった市の名称をそのまま残したもの、近隣の大都市名や県・旧国名など従来の地名(全部または一部)と東西南北を組み合わせたもの、合併前の市町村とは関係のない新しい名称をつけたものなどがあり、他にもいろいろなパターンがあります。
 しかし、これらの新市町村名の中には、名前を聞いただけでは大体どのあたりにあるどんな所なのか、私たちの業務に即して言えばどんな観光資源なり観光特性を持った地域なのか、イメージしにくいものも少なくありません。
 以下はすべて筆者の個人的な意見になりますが、いくつかパターンをあげると、まず、名称があまりに漠然としていて、位置がわかりにくいものがあります。たとえば、岩手県の奥州市(水沢市、江刺市、前沢町、胆沢町、衣川村が合併)、山梨県の中央市(玉穂町、田富町、豊富村が合併)、愛媛県の四国中央市(川之江市、伊予三島市、新宮村、土居町が合併)などです。これらは、地域外の人たちにも市の位置がある程度わかるようにPRしていくことが大きな課題でしょう。
 また、類似した市町村名が近接してあるケースも、それらの違いがわかりにくいものです。たとえば、山梨県の甲斐市(竜王町、敷島町、双葉町が合併)と甲州市(塩山市、勝沼町、大和村が合併)、静岡県の伊豆市(修善寺町、土肥町、天城湯ヶ島町、中伊豆町が合併)と伊豆の国市(伊豆長岡町、韮山町、大仁町が合併)、高知県の四万十市(中村市、西土佐村が合併)と四万十町(窪川町、大正町、十和村が合併)などです。これらは、お互いに地域の魅力をどう差別化して伝えていくかが大きな課題でしょう。
 観光の観点からは、従来から観光地としても一定の評価を得ていた中心都市名を引き継いでいるが、市域が大きく広がり、従来の中心都市と性格や資源性の異なる地域が含まれるようになった都市も、位置がわかりにくいという問題はありませんが、新たに加わった観光魅力をいっそうの観光振興と新たな観光地イメージづくりにどのように生かしていくかが課題となりそうです。たとえば、栃木県日光市(日光市と今市市、足尾町、栗山村、藤原町が合併)、長野県松本市(松本市と安曇村など4村が合併)、岐阜県高山市(高山市と上宝村など9町村が合併)などがあげられます。
 反対に、北海道で阿寒町と合併した釧路市(他に1町が合併)、群馬県で伊香保町と合併した渋川市(他に4村が合併)など、従来から観光地として名前の知られていた市町村と合併した都市では、新たに加わった観光地の知名度を、どう都市のイメージに結びつけ、ひいては地域活性化につなげていくかというような課題が出て来るでしょう。

■求められる新たな地域イメージづくり

 前項であげた以外にも、平成の大合併で誕生した市町村の名称と、その位置や町の特徴を含めたイメージとのマッチングが今後課題となるところは各地にあると思われます。個人的には、やはりどうかと思う市町村名もありますが、重要なことは、新しい市町村名が悪いのではなく、従来の名称を引き継いだところを含め、新たな市町村名とその町の姿がまずは地域住民に、さらに全国に定着するような取り組みを、今後どう進めていくかということだと思います。
 私たちの業務に関わる観光振興、観光地づくりという面から言うと、新たな市町村としてのキャッチフレーズというか、まずは一つの観光地として市町村全体をカバーするイメージづくりが重要と言えるのではないでしょうか。また、内に向かって一つの市町村として住民の意識をまとめていくとともに、外に向かってはきちんとした地域イメージを発信していく上で、観光振興という共通テーマで地域の一体感を醸成していくことは、非常に有効な手段の一つであると思います。当財団でも昨年度までに、北海道釧路市、秋田県由利本荘市、福島県喜多方市、長野県塩尻市、三重県松阪市、三重県桑名市などで、合併後のエリアを対象とした観光ビジョンづくり等のお手伝いをしています。

表1 市町村数の変遷
市町村数の変遷
資料:総務省の「政策/地方行財政/市町村合併」のホームページから作成。
   但し西暦の年表示は筆者が追加。
(注)東京都の特別区を含まない。

表2 都道府県別の市町村数(少ない順、平成18年3月31日現在)
都道府県別の市町村数
資料:表1と同じ

表3 都道府県別市町村数の減少率(上位5県と下位5県)
都道府県別市町村数の減少率
資料:表1と同じ
(注)東京都は特別区を含まない。

 

この研究員のその他のコラム

 

最新研究員コラム

コラムバックナンバー