みなとまち観光の可能性  [コラムvol.103]

2009.11.20

研究主幹(観光政策相談室長) 岩佐吉郎
研究員コラム

地方の元気と観光振興による地域活性化

 人口減少、高齢化・少子化がすすむ中で、地方の活性化は、重要なテーマである。地域活性化に向けて国が取り組む様々な支援事業も、地域に効果的な成果を残し、次の世代への活性化の芽だしとなる地域の元気づくりが期待されている。
 しかし、地域の元気といっても "地域年齢"のようなものがあるように思われ、地域がどこまで元気になれるか(できるか)には地域差がある。体力的にも能力的にも修練をこれから積む10代、20代の地域もあれば、頑張ってはいても"地域年齢"が70代、80代のところには、青年期のような溢れる体力は期待できない。むしろ、老練の円熟した技と知恵を磨いていかに活かすかが目標となる。
 全国的にみると、多くの地域で観光振興による活性化を図ろうとする地域が多くみられる。経済活性化のために、観光イベントや観光宣伝・プロモーションを展開してより多くの観光客を誘致しようとしている。しかし、このことが観光振興にとって悩ましい問題でもある。
 本来、魅力ある観光地とは、地域の農業や漁業、製造業など多様な産業、自然・環境や歴史、そこに住む人々の生活、習慣、文化等様々なことがそこそこにバランス良く元気であるところ(=快適で美しく楽しく住みよい地域)に、観光が覆い被さるようにして立地するような状況が理想である。そのためには、それぞれの地域がもつ要素がそれぞれ魅力的で元気よくあることが大切である。
 地域がもつ資源、素材の魅力を、観光客誘致や観光産業活性化のためにすぐに活用しようとする前に、地域が持つ魅力をどう評価するか、どう再構築・再整備していくかを考える必要である。特に、"地域年齢"が老齢化した地域では、その地域の高齢者の方々が代々引き継ぐ技や知恵、絶滅に近づく資源や生産をいかに次世代に引継ぎ、守り育てる取り組みが急務である。

地域の「パブリック・コア(人が集まり、にぎわう場所)」の喪失

 歴史的に団体旅行中心に需要が拡大していった観光旅行において、観光地での玄関口は鉄道駅であり、駅前に交通ターミナル、情報、飲食・物販サービス等いろいろな機能が集積して駅前広場、駅前商店街が栄えてきた。しかし、昭和50年代以降は、高速道路網整備の進展ともに、旅行形態も鉄道旅行からマイカー旅行へと主流が変わっていった。観光地側の玄関口も鉄道駅ターミナルから高速道路インターチェンジへと転換してから、かつては機能を集中させて、人を集めて栄えていた駅前広場や駅前商店街は衰退し、地域の中心となる"パブリック・コア"はそのにぎわいを喪失させていった。
 観光客は、地域の中心である駅前へは訪れず、インターチェンジから直接、地域の観光資源・施設を訪れるようになった。地域側からすると、地域の"コア"の喪失により活性化が停滞し、観光客にとっては地域の"コア"で地域にふれる魅力を体験する機会を失った。地域の"コア"こそ、観光客や地域住民がより集まり、買い物や飲食、情報収集、交流(行祭事)を楽しむ地域の魅力の中心であったにもかかわらずである。

観光振興と港

 地域が駅前の"コア"機能を減退させていった現在、マイカー旅行主流の観光旅行に対応して地域の"コア"をどこに求めるかを考えたときに、今後は地域の中心近くに立地する港がその機能を代替して、地域の活性化に貢献する場所になるのではないかと考える。
 その理由の一つは、観光客(外来客)にとって、見知らぬ地域を訪れた時に港の位置がイメージしやすいからである。観光客はまず地域を訪れたら、その地域の情報を得たり、地域の美味しい料理や名産物を求めたいという欲求を持つ。しかし、残念ながら今は、直接、目的となる観光資源・施設を訪れて、地域の中心市街地へ立ち寄らず帰ってしまうケースが多い。かわって、高速道路のサービスエリアや幹線道路沿いの道の駅、インターチェンジ出口沿道に並ぶ"出口商店街"がその機能を代替している。地域は観光客(外来客)を市街地に入れないようにしているような状況である。
 これでは、地域の良さに触れ交流してもらう機会を、地域自らが無くしておきながら、一方でイベントを開催して人を呼び集めようとする矛盾がみられる。
 その他の理由として、港は「人と物」が海路と陸路で乗り換えるターミナルでありその溜まりで賑わうこと。ウォーターフロントの眺望を活かして魅力的な景観形成が可能なこと、その成果が地域を代表するイメージとして地域への誘客を促進させることができること等があげられる。
 以前、静岡県の観光振興戦略策定の手伝いをした時に、県内には下田港から清水港、焼津港など特徴ある7つの港をとりあげ、「しずおか・七みなとレインボー計画」と名付けて、それぞれの港が地域の"コア"としての魅力づくりを提案したことがある。港が地域の魅力イメージの骨格を形成して、観光振興に貢献することを期待した。

那覇港NSPNの取組

 約10年前から那覇港のウォーターフロントの魅力づくりに取り組んでいる。当時から沖縄観光の新たなる発展のためには、ゲートウェイである那覇市の観光魅力がネックとなると考え、「那覇市の観光魅力とみなとの問題」を観光業界や経済界の集まりにぶつけて議論を重ねた。
 あわせて、那覇市の都市計画課、沖縄総合事務局港湾計画課、那覇港湾空港整備事務所にお願いしてオブザーバーに入ってもらって、問題の共有化を図った。
 それが結実して、昨年、那覇港管理組合が「那覇港みなとまちづくり」マスタープランを策定するとともに、今年度から地元自治会、観光業界、経済界、地元事業者を中心にした民間活動団体「ナハ・シー・パラダイス・ネットワーク(NSPN)」が設立されて、内閣官房の"元気再生事業"の支援をうけて活動を開始している。単なる組織体制の整備ではなく、行動する活動母体の設立である。
 その目標は、地域の「パブリック・コア」としてみなとが機能し、朝日や夕日を見に、夕暮れの夕涼みに、"港に用事のない人"でもみなとを訪れ、賑わうみなとづくりを目指すことで、沖縄観光の発展にむけてその責務は大きい。

 

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