観光地を「売る」努力-Promotionの大切さ [コラムvol.21]

2008.02.29

研究調査部 朝倉はるみ

 観光客の減少に歯止めがかからず、「どうしよう・・・」と悩んでいる観光地は多いと思います。「観光客に来てもらう」ことを、「モノを売る」という行為と比較しつつ考えてみます。

■マーケティングの4つの「P」

 現代は、人々の嗜好が多様化し、商品に関する情報量や流通手段も多岐に渡っています。こうした中で、商品やサービスを販売していくためには、「マーケティング」、つまり「商品やサービスについて、その内容、価格、流通、販売促進を計画・実行することで、商品やサービスを提供する側(企業等)と、それを受ける側(消費者)双方の目的を満足させる仕組み」が重要となります。
 ご存じの方も多いと思いますが、マーケティングでは、以下の4つのPを一体的に考えます。

Product :製品やサービスの内容
Price :製品やサービスの価格
Place :製品やサービスを販売・提供する場所、流通
Promotion :製品やサービスを販売するための広報・宣伝活動、販売促進活動

■観光地にマーケティングの4Pを当てはめてみると?

 まず「Product」ですが、観光地、というある程度の空間を1つのProductと考える場合と、宿泊施設や立ち寄り施設のような個々の施設を指す場合があります。しかし、観光地では、ある施設の入り込み数が減ったからと言ってすぐその施設を閉鎖したりすることはできませんし、商店街の外観を昔の町並みに改修しようとしても、何年もかかってしまうことはよくあります。観光地では、Productのレベルアップに時間がかかるため、それを前提に他の3つのPを考えなければなりません。
 次に「Price」です。「モノ」は、全国どこででも同じ価格で販売することができますが、旅行の場合は違います。消費者の居住地を起点とすると、旅行費用は1つの「価格」に固定することができません。
 「Place」は、観光地にとっては旅行会社です。旅行会社の規模は大小様々あり、また交通機関(鉄道、航空、バス等)でも旅行商品を企画・販売していますので、最も効率的に、あるいは自分たちの観光地にふさわしいお客様を連れてきてくれる旅行会社と連携していくことを考えます。
 最後に「Promotion」ですが、これは観光地を売るために非常に大切な取組で、マスコミに対する広報活動(記事掲載や番組制作を依頼する方法)、宣伝活動、販売促進活動等に分類できます。かつては、「いいものをつくれば黙っていても売れた」ように、バブル期には「何もしなくても観光客が押し寄せてきた」という観光地もあるでしょう。しかし、バブルは崩壊、消費者の価値観も多様化して、旅行以外の消費目的も無数にあり、「(観光地は)観光客に来てもらうために最大限の努力をしなければならない」時代なのです。

■今こそPromotionを真剣に考えましょう

 「モノを売る」ために、メーカーはあらゆる努力をしています。自動車を例にとると、最近自動車が売れなくなっています。危機感を抱く大手自動車メーカー各社は、環境に対する社会全体の関心の高まりを受け、少しでも環境にやさしい車・低燃費の車や、デザインに特徴のある車と、毎年多くの「新車」を開発し、それを新聞や雑誌で広告し、テレビでコマーシャルをし、ホームページで詳細な情報を提供し、かつ全国各地の販売店では日夜セールスマンが家々をまわって販売しています。
 翻って、観光地はどうでしょう? ProductのレベルアップやPromotionにどのように取り組んでいるでしょうか? Promotionは、観光客数の増加といった明確な成果をすぐに出しづらい施策でもあるため、限られた予算の中で効率的なPromotion活動を行うためには、やはりきちんと計画を立てることが第一歩でしょう。どの雑誌に広告を出すのか、マスコミを何人招待するか、HPではどのような情報を出すか、旅行会社との連携等、消費者に観光地に足を運んでもらうための手法の組み合わせの計画を立てるのです。

■例えば、三重県では

 三重県は、2004年度に「観光振興プラン」と共に「誘客戦略」を策定しました。伊勢志摩や世界遺産「熊野古道」を有していますが、そうしたすばらしいProductをさらに磨き上げると共に、官民協働で効率的・効果的に観光客を誘致するためです。
 首都圏からの誘客を目的としたPromotion事業では、三重県に対する消費者の注意・関心の醸成を目的に、様々なメディアを組み合わせた情報発信事業を行っています。例えば、女性雑誌への三重県記事掲載や、モニターツアーの募集・結果報告をフリーペーパーで行うと共にモニター自身にラジオ出演してもらってツアーの様子を語って頂くこと、JRの車内広告、大手旅行会社の店頭販促キャンペーン等です。また、県は三重県への旅行商品を専門に販売する旅行会社のコンソーシアムを設立した結果(Placeの強化)、徐々に誘客の効果も出始めています。

■観光地は、ProductのレベルアップがPromotionの基盤

 しかし、マーケティングはPromotionだけに突出しても、その目的を達成することはできません。観光地においては、他の3つのPのうちProductのレベルアップも大切なことです。観光客が満足し、「また来たい」「誰かに勧めたい」と思われる観光地になることが、安定した誘客の基盤となります。
 観光地のPromotionは、魅力的なProduct(=観光地)と二人三脚で実施してこそ、成果(誘客)が期待できるのです。

<マーケティングの4Pを観光分野に当てはめた場合>
マーケティングの4Pを観光分野に当てはめた場合

 

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