首都圏での情報発信戦略-三重県の場合 [コラムvol.78]

2009.04.17

研究調査部 朝倉はるみ
研究員コラム

 当財団は、2004年度三重県の観光振興戦略策定と誘客戦略の策定をきっかけに、それらの戦略に基づいて首都圏における情報発信事業を広告代理店と共に2005年度以降お手伝いしています。

■エリア別の誘客戦略策定の目的

 2004年度に策定した誘客戦略は、三重県を訪れる消費者の居住地を中部圏、関西圏、首都圏、その他遠隔地(国内)の4つに分けて、それぞれのエリアからの誘客手法を提案しました。三重県全体としては、旅行嗜好や旅行経験率から誘致すべきマーケットを女性の中高年層及び若年層としていますが、居住地によって三重県への来訪経験や認知度が異なるため、居住地別に訴求すべき情報の内容や情報発信手法を検討しました。なお、誘客戦略は、第2期観光振興戦略(2008~2010年度)の策定に併せて、2007年度に第2期誘客戦略を策定しました。ここでは、誘客エリアに県内と海外を加え、6エリアとしています。

■首都圏における情報発信の必要性

 観光地の情報発信を行う場合、手法と共に発信される「場所」も考慮しなければなりません。情報発信を行う手法の1つであるマスメディアは首都圏に集中しており、観光地や商品、サービス等、様々な情報が日々首都圏から全国・全世界へ発信されています。つまり、首都圏からの情報発信は効率的といえます。三重県では、2010年の誘客目標を3、400万人としており、目標達成に向けて全国からの誘客を図る必要があり、そのためにも首都圏からの効率的な情報発信にとりくんでいるのです。

■旅行雑誌の読者アンケートからみる消費者の居住地別三重県イメージの違い

 2008年度の首都圏情報発信事業の1つとして、ある旅行雑誌への記事掲出と読者アンケートを実施しました。このアンケートは、読者の居住地によって三重県に対するイメージ等がどのように異なるかを分析し、今後のマスコミへの情報提供の参考資料とすることを目的としました。

Q.「三重県」と聞いてイメージするものは何ですか?
 フリーアンサーを類似語でまとめ、上位10位を整理したのが下表です。「伊勢神宮」をイメージする人が圧倒的に多く、2位以下の「伊勢志摩」「松阪牛」「真珠」を大きく上回っています。しかし、例えば「松阪牛」は首都圏でイメージする人が多かったものの、中京圏や関西圏といった近場、つまり来訪経験率が高いエリアではそれほどイメージされておらず、エリアによってイメージされるものが異なるものもあります。

<「三重県」と聞いてイメージするもの(フリーアンサー)>
「三重県」と聞いてイメージするもの

■マスコミへ提供すべき情報~公平な情報提供から「情報の選択」へ

 三重県は毎年2月上旬に東京と大阪で250名以上のマスコミを招聘して「メディア交流会」を実施していますが、2008年度はこの交流会とは別に、2005年度以降三重県の情報発信に協力いただいた雑誌編集者、そして今後協力頂けそうな雑誌編集者、10社、約20名をご招待して「メディア親睦会」を初めて開催しました。三重県の情報提供だけでなく、県職員と意見交換をしていただき、三重県の食材を使ったランチをお楽しみいただきました。
 三重県からの情報提供は、職員による2つのモデルコースの紹介でした。男性職員は家族旅行を想定し「手軽に松阪牛を楽しむコース」を、女性職員は女どうしでスイーツを楽しむ「伊賀上野コース」です。2人の職員は、実際に自分でそのコースを旅行し、食べ、買い物をしての提案でした。コース紹介の後の食事中は、各テーブルに県職員が同席し、マスコミからの質問に丁寧に対応しました。
 参加者からは非常に好評で、特に「県の事業で、具体的なお店(レストラン、物販店)が紹介されるのは珍しい」という意見がありました。つまり、行政の事業では「公平」が優先されるため、個々のお店(民間企業)を紹介することが難しいのですが、マスコミが欲しいのはそうした「個々のお店の情報」だということです。この情報交換会の後、ここで紹介されたコースを実際に旅行してみた、という雑誌記者の方もいらしたそうです。
 マスコミが欲しい情報は、消費者が欲しい情報でもあります。都道府県、市町村、観光地は、この点を意識してマスコミに提供すべき情報を選択することも必要でしょう。

 

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