周遊観光の楽しみ-3つの世界遺産を一度に! [コラムvol.42]

2008.08.01

研究調査部長 梅川智也
研究員コラム

1.はじめに

 先日、ユネスコの世界遺産委員会が「平泉の文化遺産」(岩手県)の登録延期を決めて話題(平泉ショック!?)となりました。平泉とともに2001年に暫定リスト入りし、2007年5月にはイコモス委員会から登録延期を勧告され、同年7月に一転して登録が決まった経緯を持つのが「石見銀山遺跡とその文化的景観」(島根県大田市)です。この差はなぜなのか・・・の議論は別にして、石見銀山は日本の世界遺産の中でもかなり地味な存在ですが、17世紀前半には世界の銀の約1/3を占めるほどの産出量を誇っていました。
 この石見銀山が世界遺産になったことによって、広島県と島根県の縦のルートには3つの世界遺産が一度に楽しめる周遊観光ルートが出来ました。つまり、原爆ドーム(96年12月登録)+厳島神社(同左)+石見銀山です。

2.広域連携と周遊観光

 昭和40年代、ディスカバージャパンの時代、小京都ブームの中で萩・津和野、つまり山口県と島根県の「横」連携が注目されたわけですが、この1年間は広島県と島根県の「縦」連携が注目されました。1999年に開通したしまなみ海道以来の出来事と言えるでしょう。
 「広域連携」とは、それまでライバルと意識してきた観光地どおしが協力する訳ですから、「言うは易し、行うは難し」の代表のようなものです。ただ、観光資源のタイプによって競合する場合とお互いに協力できる場合があり、この3つは後者と言えるでしょう。さらに、広島の「あなごめし」、「お好み焼き」、島根の「出雲そば」などローカルな味も楽しめます。
 ニューツーリズムや着地型旅行商品が注目される中で、観光行動の原点とも言える周遊観光の楽しみをもう一度認識することは大切ではないでしょうか。
また中国山地の中山間地域は、人口減少と高齢化の最先端地域と言ってよく、限界集落*1も数多く存在します。この地域の活性化のためにも、この縦ルートの誕生、そして育成は期待したいところです。

3.周遊観光の楽しみ-歴史と文化を楽しむ・島根県旧吉田村(現雲南市)

 島根県と言えば、石見銀山に加えて、出雲大社、松江市、玉造温泉、隠岐などなど素晴らしい観光地がたくさんありますが、私の記憶に強烈に残っている場所が、石見銀山からは少し東に離れますが県東部の吉田村です。今では合併して雲南市となっています。先般、数年振りに行く機会がありました。
 このあたりは奥出雲と言われ、松本清張の名作「砂の器」で有名になったJR木次線「亀嵩駅」(仁多町)や、そろばん生産日本一・「雲州そろばん」の横田町などがあり、独自の文化と神話が残る地域です。
 「たたら」*2とは、日本古来からの製鉄の方法で、近代的な製鉄法が入ってくる前までは砂鉄に恵まれた島根県はじめ中国山地が全国の製鉄の中心地でした。宮崎駿監督のアニメ「もののけ姫」にも登場します。そのモデルとなったのが「菅谷たたら」で、日本で唯一製鉄炉と建物(高殿)が残されていて、今でもたたら師たちの生活を伝えています。
 菅谷たたらを経営していたのは、日本一の山林王といわれた田部家。田部家は絲原家、櫻井家とともに「松江藩鉄師頭取御三家」と呼ばれていたそうで、旧吉田村の中心街はこの田部家を中心に形成されています。あの時代に砂鉄を溶かして鉄を作る技術があったこと、そしてそれが日本海側だけでなく、吉井川、高梁川を経て岡山県側にも運ばれ、備前長船などで備前刀と言われる刀剣の技術が残されていることに感動を覚えます。
 蛇足ですが、旧吉田村は「卵かけごはん」の町。卵かけご飯専用のお醤油・「おたまはん」-関東風(黒いキャップ)+関西風(赤いキャップ)があります。思わずお土産に購入してしまいます。

4.周遊観光の楽しみ-体験を楽しむ・広島お好み焼き体験

 広島と言えば「お好み焼き」。その本物が体験できます。何が本物かと言えば、体験する場所が本物のお好み焼き屋さんということ、そして使う道具がプロのものということです。ちなみに、広島市内のお好み焼き屋さんだけが集まるビルのとあるお店で体験できます。
 財団法人広島観光コンベンションビューロー(HCVB)のホームページ*3によれば、広島名物の「お好み焼き」は、戦後すぐに広まった「一銭洋食」がルーツとされ、昭和25年頃は現在の「中央通り」辺りには100軒以上の屋台がひしめきあっていたようです。昭和30年代に場所を移動。次第に屋台の数が増え(後の「お好み村」の原型)、そして、日本経済の発展とともに、そばやうどん、キャベツ、モヤシ、肉が重なっていき、今の広島お好み焼きの形をなしていったようです。現在、広島県内に約2,000店あるとのこと。
 この本物お好み焼き体験を修学旅行の学生にやらせたところ大いに受け、それをそのまま私も体験させてもらった次第です。実際にやってみると、なかなか難しい・・・。見るのとやるのでは大違い。店長さんによれば、同じものを同じように作るということが大変なのだそうで、それが出来てプロなのだそうです。
 広島のお好み焼きの最大の特徴は"重ね焼き"にあるのだそうです。生地を薄く延ばし、カツオ節を掛け、キャベツをたっぷり乗せ、その上に天かすと三枚肉を乗せます。その横で焼きそばを作ります。卵は一番最初に生地の下にしたような記憶があります。あとでヘラを両手に持って合体(緊張の一瞬です)させ、お好みソースをたっぷりかけて、ネギを乗せて出来上がり。例え、失敗しても食べるのは自分。自己責任原則が逆に気を楽にさせてくれます。

 「地域の光を観る」という、いわば観光の原点とも言える周遊観光旅行を体験してみては如何でしょうか。

*1:65歳以上の高齢者が集落総人口の過半数を占める状態
*2:詳しくはhttp://www.kankou.pref.shimane.jp/mag/04/12/ttr01.htmlをご覧下さい
*3:詳しくはhttp://www.hcvb.city.hiroshima.jp/navigator/okonomi_map/index.htmlをご覧下さい


石見銀山・大森の街並み
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旧吉田村・菅谷たたら
旧吉田村・菅谷たたら

広島・お好み焼き体験
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