九州ブルートレイン廃止とJTB時刻表1000号-観光旅行の一形態としての鉄道旅行を考える- [コラムvol.79]

2009.04.24

研究調査部 有馬義治
研究員コラム

 2009年3月に東京と九州を結ぶ最後の寝台特急が廃止されるなど、ブルートレインが次々と姿を消していますが、その一方で、観光利用に狙いを絞った列車や、地域住民も利用するが観光客も乗って楽しい車両・列車、鉄道自体を観光資源化した「観光鉄道」などが各地で現れています。今後、鉄道旅行が持つゆとりや、ゆったり感が見直されるのではないでしょうか。鉄道事業者としても観光地としても、鉄道の観光利用を促進して、それを観光地の活性化に生かす施策が求められます。

■寂しくなった夜行列車地図

 2009年3月14日のJRグループダイヤ改正で、東京-大分・熊本間の寝台特急「富士・はやぶさ」が廃止され、東京と九州を結ぶ「ブルートレイン」が姿を消しました。2008年3月のダイヤ改正でも京都-熊本・長崎間の寝台特急「なは・あかつき」と東京-大阪間の寝台急行「銀河」が廃止されており、今回の「富士・はやぶさ」廃止でかつては東北夜行とともに多数の列車が運転されていた九州発着のブルートレインが完全に姿を消すなど、ここ数年で、「ブルートレイン」と総称される客車の夜行寝台列車の廃止が急速に進みました。
 この結果、現在も定期運転されているブルートレインは、上野-札幌間の「北斗星」、上野-青森間の「あけぼの」、上野-金沢間の「北陸」、大阪-青森間の「日本海」の4系統各1往復のみとなり、他に数本の電車と客車の夜行特急、急行列車は走っていますが、夜行列車地図はずいぶん寂しくなったものです。さまざまな交通手段との競合の中で夜行列車の需要が大幅に減少し、鉄道会社のコスト削減の要請からも、夜行列車からの撤退はやむを得ないでしょうが、私自身もかつて何回も夜行列車を活用した鉄道旅行を楽しんだことがあるため、本当にこれでよかったのかという気も少なからずします。

■鉄道旅行の人気復活の可能性とJTB時刻表1000号

 観光旅行での利用交通機関は自家用車が中心の時代とはいえ、乗って旅行すること自体が一種の観光旅行ということで人気を保っている列車もあります。夜行寝台列車では、いずれも季節列車ではありますが、デラックスな車両を連結した「カシオペア」(上野-札幌間)と「トワイライトエクスプレス」(大阪-札幌間)は、高級リゾートに宿泊する感覚で根強い人気があるようです。
 そのほか、「ジョイフルトレイン、リゾート列車」と総称される専ら観光客の利用を想定した特別編成の列車、やはり観光利用に狙いを絞って各地で運転されているSL列車やトロッコ列車、伊豆急行(静岡県)の「リゾート21」や土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線(高知県)の海側展望列車などのように、地域住民も日常的に利用するが、座席配置等に工夫をこらして観光客にも楽しく乗ってもらえるようにした列車、JR各社や大手民鉄が取り組んでいる特急列車の車両デラックス化など、JR、民鉄を問わず、観光客の利用促進のために特徴ある車両や列車を走らせている鉄道が多数あります。
 さらには黒部峡谷鉄道(富山県)、嵯峨野観光鉄道(京都府)のように、鉄道自体が観光客の利用だけを想定した観光資源と言える「観光鉄道」もあります。この形態の鉄道として、この4月26日には福岡県北九州市で、門司港レトロ地区とめかり地区を結ぶ「門司港レトロ観光線」(北九州市が線路を保有して平成筑豊鉄道が運営)が新たに開業します。
 今後時間にゆとりのある「団塊の世代」が確実に増えていく中で、目下の経済状況が改善されれば、一つの時間の過ごし方として国内観光旅行への関心は今後も高まると思います。その時、自家用車や飛行機に比べてゆったりと時間を過ごせる鉄道の魅力が、また見直されるのではないでしょうか。上記のような各鉄道会社の取り組みも、それなりに効果があるものと思います。全くの個人的な感想ですが、鉄道は、車両の構造、座席配置にもよりますが、長距離を移動する場合には移り変わる車窓を眺めながらゆっくり酒を飲んだり物を食べたりできるのが、自動車や飛行機では得られない大きな魅力です。
 折しも、鉄道旅行、特に鉄道を利用した観光旅行では有用な情報源として多くの人に利用され、親しまれてきたJTBの「時刻表」が、この5月号で通巻1000号を迎えました。1925(大正14)年4月に日本旅行文化協会から発刊された『鉄道省編纂 汽車時間表 附汽船自動車発着表』を創刊号とし、以来84年間、ほとんど毎月発行されてきたものです。このような書籍が長期にわたってほぼ月刊で発行され、それなりに読者がいるということが、鉄道というものの魅力をよく表しているのではないでしょうか。

■鉄道旅行と観光地

 当財団が毎年調査している「JTBF旅行者動向調査」でも、国内の宿泊観光レクリエーション旅行で目的地まで主に利用した交通機関は、もちろん「自家用車」が最も多いですが、その割合は50%を少し上回る程度で、「鉄道」が常に20%前後を占めています。
また、最近は観光旅行でも「エコ」「環境にやさしい」ということが強く意識されるようになり、その面では鉄道が他の交通手段より優位性を持っています。さらに、2010年12月に東北新幹線八戸-新青森間、2011年3月に九州新幹線博多-新八代間の開通が予定されており、観光旅行での鉄道利用には大きなプラス効果をもたらすことが期待されます。
 国の施策としても、地域活性化における鉄道など公共交通機関の果たせる役割が見直されてきており、今年2月と3月に、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく「鉄道事業再構築実施事業」として福井鉄道(福井県)と若桜鉄道(鳥取県)の計画が認定されたといった動きも見られます。
 このように鉄道旅行にとって「追い風」とも言うべき動きがいろいろ出ている中で、鉄道事業者に対しては、観光客がもっと利用したくなる列車の開発と、列車ダイヤ等でもっと利用しやすい運行が望まれます。観光地にとっては、鉄道事業者と連携して、観光旅行者の鉄道利用の促進と、それを観光地の活性化に活かす取り組み、施策が求められます。そして個人的には、鉄道利用促進の一環として、高級でなくても快適に一夜を過ごせる夜行列車のリニューアル再生をひそかに望むところです。

パスポート
JTB時刻表2009年5月号
(通巻1000号)

 

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