ネットへの発信を後押しするリアルな交流 [コラムvol.151]

2011.10.07

研究調査部 岩崎比奈子
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 今年の夏、フェイスブックのパソコンからの利用者数が1,000万人を突破し、ネットユーザーの17%が利用するようになったとのこと、SNS(Social Network Service)が急速に広がっています(ニールセン・ネットレイティングス、2011年8月のインターネット利用動向調査より)。
 このSNSを使って、果たして地域の情報をうまく伝えることができるのでしょうか。

■お誘いは、ある日突然に。

 今年の2月中旬、仕事上の知り合いから「フェイスブックで一緒にあの頃の思い出を語ろう」というタイトルのメールが届きました。「あの頃の思い出」って?「語ろう」って? ワタシ達、そんな関係だったかしら。と今思えばモノ知らずでとても恥ずかしいのですが、そんな戸惑いも束の間、約10日後に、別の知人から同じタイトルのメールが届き、合点がいきました。こうして突然、私はフェイスブックと出会い、SNSの世界へ入っていったのです。
 フェイスブックを始めて半年も過ぎると、もう生活の一部のようになってきて、ネット環境の都合で長時間アクセスできないと何だか落ち着きませんし、最近何年も会っていない人や全く会ったことがない人から突然、メッセージや「友達リクエスト」が届いても、当初ほどにはドギマギしなくなりました。また、以前なら名刺交換程度で少ししかお話できなかった人とはそれっきりでしたが、フェイスブック上でお付き合いが続くといったことも出てきました。
 このように仕事や出身校によって、これまでにない形・スピードで人との関係が広がっています。

■感情を大きく揺さぶるフェイスブック

 私の「友達」にも、フェイスブックへタイムリーに、有益な情報・知見や興味深い話題をアップしてくれる人が何人かいて、私も日々、様々な情報や考え方のヒント、具体的なアクションのとっかかりをいただいています。
 同時に、きれいな花の画像や心に残る音楽、ほっとしたり感動的な動画をアップする人も多く、その都度、喜怒哀楽の感情を共有させていただいています。例えば、いわき市のスパリゾートハワイアンズの応援ソング「息吹」の動画を見て涙して、あらためて復興への意識を新たにしたり、この原稿を書いている今日、訃報が届いたアップル創業者スティーブ・ジョブズ氏への多くの哀悼メッセージに触れて、しばし彼の偉業を偲ぶといったように、(思考や論理を司る)“左脳”優先の生活の中で私の感情を大きく揺さぶるものが、フェイスブックになっています。

 私自身、自分の業務のこともお知らせしようと研修会やモニターツアーの開催告知をアップしますが、出張先にて列車事故や台風で足止めを食らって非常に困惑しているとか、とてもびっくりした風景や珍しい食べ物に出会った時など、何か大きく感情が動いた時に、やや衝動的にフェイスブックへアクセスしているように思います。

■深夜の議論に市民を惹きつけたもの

 最近、青森県八戸市でユニークなフォーラムに参加しました。八戸の魅力とその発信方法、八戸の売り出し方について、市民が徹底的に討論しようと、市外からもパネリストを招き、土曜日の夕方5時から翌日曜日の深夜1時まで、途中2時間半の休憩を挟んで8時間の長丁場でした。この時、深夜にもかかわらず、中心市街地にある会場へ集まったのが約50名で、ユーストリームの視聴者も同じく50名ほどいたとのことでした。
 フォーラム前は、この顔の見えないユーストリーム視聴者とどのように一体感をつくって議論を進めるか、果たしてそれができるのか、とても不安でした。結果としては、深夜にもかかわらず260ほどのツイッターの書き込みがあったとのこと、しかも概ね好意的な感想、建設的な意見だったとのことで、一安心すると同時に少し驚きました。地元関係者によると、こうした集まりでこれほど活発に意見が出ることは少ないとのことでしたので。 深夜の時間帯の議論に、何がそこまで市民を惹きつけたのでしょうか。

 私なりの解釈ですが、視聴者が会場の参加者(同じ八戸市民であり、中には知り合いがいたりする)が次々と発言し議論が盛り上がるのを見て、自然と会場の熱気が移り、ツイッターへの書き込みが増えたのではないでしょうか。
 また、これは実際に会場からいただいた声ですが、「ギャラをもらって来ているパネリストが言うことを、最初は斜に構えて聞いていたが、段々おもしろくなってきて、おしまいには何だか檀上のパネリストが仲間のように感じた」そうで、外から来た人間が八戸市民に少し近づけたことも、このフォーラムの盛り上がりに寄与したのではないかと思います。

 この体験から、見ず知らずのどこかの誰か(それがいかに高名な有識者であっても)が言うことは、よほどでない限りそれほど心に響かないのであって、自分がよく知っている人や同じ興味・関心を持つ仲間が言うことにこそ、反応することができるのだと感じました。これはフェイスブック上で、「友達」が発した一つの話題に「いいね!」やコメントが次々と寄せられる様子を見ていても、そのように感じます。

■地元を愛し、熱く語れる元気な市民

 クチコミが旅行計画に大きな影響を与えると言われています。観光地からの効果的な情報発信の方法として、すでに指摘されているように、フェイスブックなどのSNSを通じた「知り合い・仲間からの情報」が大きな力を持ってくるはずです。その時に重要なのが、誰が何を語るかです。

 八戸のみろく横丁や路地裏の飲食店では、狭い店内で偶然隣り合わせた旅行者と地元市民が、せんべい汁や地元の海産物・地酒などについて語り合う場面によく出会います。せんべい汁をおいしく、ワクワクしながら食べるための「ベンツ割り」や「アウディ並べ」といった小ネタを酒の肴に、楽しい一夜を過ごすのです。
 こうしたリアルな交流で高まった感情に押され、人はネットへ発信します。人々の感情を揺さぶることができるのは、地元を愛し、熱く語れる元気な市民の存在です。今、旅行者が求めているのは、こうした元気な市民との出会いなのではないでしょうか。


「テッテイ討論!Mid Nightフォーラムinはっち」(10月1日~2日、青森県八戸市にて開催)

八戸市館鼻朝市にて1 
八戸市館鼻朝市にて
 
八戸市館鼻朝市にて2 
八戸市館鼻朝市にて
 
せんべいピザ 
塩辛とチーズを載せた
「せんべいピザ」

 

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