国際的なMICE開催のその先に [コラムvol.323]

2016.10.31

観光政策研究部 主任研究員 守屋邦彦

 10月25日~26日に、当財団の自主研究として運営している「温泉まちづくり研究会」の第2回会合を三重県鳥羽市ほかで開催した。

 今回会合は「温泉地と国際MICE」を大きなテーマとし、今年5月26日~27日に開催された伊勢志摩サミットを例に、サミット開催に際して国や県、地元(行政、観光関係者)が求められた対応や生じた課題を共有するとともに、開催により得られた効果や今後に向けた取組みについて議論がされた。

 両日の具体的な内容については、温泉まちづくり研究会ホームページ(http://onmachi.jp/)や、当財団ホームページ内フォトレポート(https://www.jtb.or.jp/column-photo)をご参照いただきたいが、本コラムでは、国際的なMICE開催による効果やその先に向けた取組に関して挙げられたコメントを筆者の感想とともに紹介したい。

サミットとは

 まず、サミットについて簡単に説明しておきたい。サミットは日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシアの8ヶ国の首脳(※ウクライナ情勢を受けたロシアの参加停止により、14年以降は7ヶ国)並びに欧州理事会議長及び欧州委員会委員長が参加して開催される首脳会議のことで、国際社会が直面する様々な地球規模の課題について自由闊達な意見交換を通じて、物事を決定していく場である。サミットは国の行事であり、首脳会議をはじめ、首脳の配偶者の方々が参加される配偶者プログラムや、子どもたちの視点で話し合い首脳陣に提言するジュニア・サミット等の公式プログラムが執り行われる。なお、近年のサミットはセキュリティ面などを考慮した「リトリート(隠れ家)方式」が採用されており、前回の日本開催(08年)は北海道洞爺湖が開催地であった。

経済効果は1,000億円を超える

 サミットによる経済効果については、三重県や民間シンクタンク等が推計を行っている。三重県の推計では、サミット開催による三重県での直接的な経済効果は約483億円、メディア等による宣伝(パブリシティー)効果が約3,098億円、今後の観光客数の増加等のポストサミット効果が約1,489億円となっている。ポストサミット効果は複数の民間シンクタンクの推計でも1,000億円を超えており、サミット開催が、その後の三重県観光にとって大きな経済効果を与えていることがうかがえる。

効果は経済的な面にとどまらない

 サミットに限らず、MICEを開催することによる効果として経済的な面に対する期待は高い。これは一般の観光客に比べMICE参加者の方が消費額が高い傾向にあることや、MICE開催に際しての各種対応(会場設営、食事の提供、通訳手配など)に関わる業種の裾野が広く、波及効果がより高いことによる。しかしながら、今回の「温泉まちづくり研究会」の議論では例えば以下のような経済面以外の効果もあげられた。

 ●“誇り”が芽生えたこと
 サミットを受け入れた地域の方々には、「自分たちの地域はサミットに選ばれるような地域なんだ」という“誇り”が芽生えたという。こうした意識は、その後の自分たちの地域に対する見方や、外の人たちに対して自分たちの地域を紹介する際の言い方などの変化につながるものと思われる。また、こうした国際的MICEが無事に終われば「自分たちの地域でも対応できた、自分たちの地域は外国人観光客への対応や他の国際的MICEも受け入れられる地域なんだ」という意識も芽生えてくるという。こうした経験は地域にとって大きな財産といえるだろう。

 ●“次世代”へとつながること
 サミット開催は、各種産業従事者といった大人だけでなく、地域の子どもたちにも大きな効果を与えた。学校では「サミットとは何か」といった授業が行われ、こうした授業が諸外国に対する関心や世界的な視野で物事をみるきっかけにつながっている。特にサミットでは公式行事として「ジュニア・サミット」が開かれ、これに地域の方々も多く参加した。こうした点も国際的なMICEならではの効果の一つといえだろう。

国際的なMICE開催を今後につなげる

 様々な効果が挙げられるサミットだが、一方で「開催により注目されるのも1~2年がせいぜいで、その後は開催前に戻ってしまう」といった声も聞かれた。確かに、マスコミ等の注目は終了後には大きく下がってしまうし、「開催地だから行ってみよう」と訪れる観光客も徐々に減少していくだろう。こうした経済的な面での効果は減少していく可能性が高いが、先に述べたような受け入れた地域や関わった人に生じた効果はどうだろうか。地域への誇りであったり、訪れた人たちに対応した際のおもてなしの気持ちなどは、取り組み方によっては継続、更には拡大していくことも出来るのではないだろうか。三重県ではこうしたサミットによる資産を、その先につなげていくための取り組みを検討しているという。

 インバウンドに注目が集まる中、国際的なMICEの誘致・開催についても各地で様々な取り組みが行われている。もちろん、誘致を決めるまでの取り組みや無事に開催するための取り組みが重要であることはもちろんであるが、国際的なMICE開催の先には、地域を支えていく人たちが得られるより大きな効果があり、その効果をいかに維持・拡大するかが大事であること、この点に改めて気づかされた今回の研究会であった。

サミット会場となった志摩観光ホテル

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温泉まちづくり研究会の様子(筆者により研究会の趣旨説明)

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