理想の専門図書館像を追い求めて [コラムvol.331]

2017.01.16

観光文化情報センター 旅の図書館副館長 主任研究員 大隅 一志

 「旅の図書館」は昨年10月3日にリニューアル開館し、約3ヶ月が経過しました。この機会に、約3年にわたる図書館リニューアルの背景とその取り組みの歩みを簡単に振り返ってみたいと思います。

“テーマのある旅を応援する図書館”から“観光の研究と実務に役立つ図書館”へ~新たなコンセプト構築の背景

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 1973(昭和53)年の開設以来、“テーマのある旅を応援する図書館”としてご利用いただいた「旅の図書館」は、このたびの南青山への移転を機に、“観光の研究と実務に役立つ図書館”をコンセプトとする新たな図書館へと生まれ変わりました。

 振り返ってみると、その背景には、2つのターニングポイントがありました。

 最初のポイントは、図書館の運営主体である当財団の組織としての将来像を明確にした「’22ビジョン」の策定(2012年11月)で、その基本方針の一つに、「「旅の図書館」が実践的な学術研究機関の一組織として機能する」という方向性が示されたことです。このことによって、本部研究部門とは別々の場所で旅の情報提供を主とする図書館として運営してきた図書館について、“学術研究機関の図書館”としての位置づけが明確になりました。同ビジョンでは図書館について、①専門性の強化、②研究ライブラリー機能の強化、③広報機能の強化、④研究員の研究における利便性の向上、⑤観光文化の振興に寄与する蔵書の充実、という具体的な方向性が示されました。

 さらに、このビジョンをふまえて検討された社内プロジェクトでは、本部との一体化(隣接)、研究会が開けるようなサロンスペースを確保といった方向性は描かれたものの、この段階では、閉架式、すなわち研究機関の資料室的な内向けの図書館像もアイデアとして挙げられていました。

 現在のリニューアル後の“開かれた図書館”へと転換する大きなポイントとなったのは、移転計画がいよいよ本格的に動き出しつつあった2014年4~7月にかけての図書館構想の策定です。“図書館の可能性をどう引き出したら、観光研究機関としての組織の価値を高め、社会的役割をより発揮していくことができるか”。新しい発想による図書館像を創り上げるヒントを探るために、数多くの図書館に足を運び、スタッフと議論を重ねていく中で、目指すべき図書館像は次第に共有化されていきました。

 構想構築のプロセスで検討した資料の中に、当時描いた目指す図書館像があります。そこで描いた、全体のコンセプトとしての「様々な人と情報が集まる観光研究交流広場」、さらに「観光研究への興味・関心が高まる、研究の種を播く」、「財団の研究活動を肌で感じてもらえる(見える)」、「観光の研究や観光課題の解決に役立つ」、「研究者が集まりたくなる広場」といった具体イメージは、そのまま現在の図書館づくりのベースとなっています(図1)。

図書館リニューアルプロジェクト~3年の歩み

 2014年度初頭の図書館構想の策定から始まった移転・リニューアルに向けた約3年間は、研究・実務向け図書館の方向に軸足を置くための収蔵方針の大幅な見直し、観光の専門図書館としての独自分類の構築、図書・資料の選別・再分類、新ビル・図書館計画(書架・収蔵計画を含む)、運営計画、移転(引越)等々、新たな図書館づくりに向けた待ったなしの取り組みの連続でした(表1)。

 無事リニューアル開館が果たせた背景には、図書館だけでなく組織をあげて移転プロジェクトを推進できたことが何よりも大きな要因としてあげられます。

 また、数少ない図書館スタッフ自らの力で取り組んだ延べ6万冊を超える蔵書の整理・再分類作業には膨大な手間と時間を要しましたが、自館の蔵書を良く知り、強み・弱みを認識する上で大きな財産となりました。今思えば、こうした気の遠くなるような作業を続けられたのも、目標を共有し、“魅力ある図書館を作りたい”というスタッフの共通の想いが支えになったように思います。

これからも現在進行形で

 開館後の来館者には、旧館時代から利用いただいている方に加え、卒論の資料探しを目的とした学生や研究・実務に携われる方の利用が増加しており、少しずつリニューアル後の利用イメージに近づきつつあるように感じます。

 また、図書空間と一体となったシンポジウムや研究会、たびとしょCafeの開催など、図書空間を活かすことで、独特の雰囲気をもった研究交流の場の創出にも寄与できているように思います。

 理想とする図書館づくりは、まだスタートしたばかりです。専門資料の充実、レファレンス機能の強化、資料のアーカイブ(電子書籍)化等々、取り組むべき課題は尽きません。次代の研究者が育ち、新たな観光政策や魅力ある観光地づくりが展開されていく・・・その一助となる図書館を目指して、どこまでも現在進行形でチャレンジを続けていきたいと思います。

図1 構想策定時に描いた目指す図書館像(2014年5月)
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表1 旅の図書館リニューアル3年間の歩み
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