休暇の旅行中にどこで仕事をする? [コラムvol.446]

2021.05.24

観光地域研究部 地域戦略室長/上席主任研究員 守屋邦彦

はじめに

 新型コロナウイルスの感染拡大により大きく注目されたことの1つとして「ワーケーション(※1))」がある。2021年3月には観光庁がウェブサイト「『新たな旅のスタイル』 ワーケーション&ブレジャー」をオープンし、ワーケーションやブレジャー(※2)等の仕事と休暇を組み合わせた滞在型旅行を、働き方改革とも合致した「新たな旅のスタイル」と位置づけ、その普及促進を進めていることをはじめ、現在、各省庁および全国各地でその推進のための取組みが展開されている。

 現在、日本でワーケーションと呼ばれているものは、大きくは旅行のメインが「休暇」「業務」のいずれなのかで分けることができ、休暇メインの旅行中に一定の時間はテレワーク等で仕事をするものは「休暇型」、合宿型のミーティングなど業務メインの旅行中の空いた時間で余暇も楽しむものは「業務型」と呼ばれる。

 本コラムでは、当財団の自主研究の一環として2021年3月に実施したアンケート調査の結果から、「休暇型」のワーケーションと旅行先となる地域について考えてみたい。

※1:Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語。テレワーク等を活用し、リゾート地や温泉地、国立公園等、普段の職場とは異なる場所で余暇を楽しみつつ仕事を行うこと(観光庁「『新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー」より)
※2:Business(ビジネス)とLeisure(レジャー)を組み合わせた造語。出張等の機会を活用し、出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむこと(上記同様の観光庁サイトより)

新型コロナの感染拡大前から「休暇旅行中に業務を行う人」は存在

 まず、休暇型のワーケーションをどの程度の人が実施しているかについてであるが、同アンケートで「休暇の旅行中に業務(いわゆるワーケーション)を行ったことがありますか」という質問に対し、「本格的な業務(会議出席や資料作成等)を行ったことがある」と回答した方を休暇型ワーケーションの経験者と捉えると、その比率は7.5%であった。

 更に、この休暇型ワーケーションの実施が新型コロナの感染拡大前(2019年1月~2020年3月、以下「コロナ前」)か、拡大後(2020年4月以降、以下「コロナ後」)かで整理をしたものが図1である。これをみると、コロナ前からすでに「休暇旅行中に業務を行う人」が一定の割合で存在していたことがうかがえる。コロナ禍でテレワークが浸透し、ワーケーションも大きくクローズアップされたが、コロナ禍により「休暇型」のワーケーションを実施する人が急に増えた、というよりは、コロナの前から一定の需要が存在し、コロナ後に旅行そのものを控える人が出た一方で、ワーケーションを実施したい(出来るようになった)人も出現してきたと捉えることが出来るだろう(※3)。

 なお、休暇型ワーケーション経験者の年代をみると、コロナ前、コロナ後のいずれも20代・30代が全体の約6割を占めた。今後の旅行市場において中心的な存在となってくるであろうこの世代において、こうした休暇と仕事を融合した旅行を実施する人が多いことは、旅行先となる地域の今後の取組みを考える上でも重要といえるだろう。

図1 休暇旅行中の業務経験者の割合(当財団調査結果より筆者作成)

※3:経験者の割合自体が7.5%と高くないことから、それぞれの%の差は標本誤差の範囲内であり、この結果からコロナ前経験者よりコロナ後経験者の方が少ない、とは言い切れない。

約半数は地方部や観光地で「休暇旅行中の業務」を実施

 同アンケートでは休暇型ワーケーション経験者300名に、その際の旅行先について尋ねているが、約半数は「都市部(東京などの大都市、地方の市街地)」で、残り半数が「地方部(農村、山村、漁村など)や温泉地、リゾート地」を挙げた(図2)。ワーケーションのイメージとして、都会から離れた場所で気分を変えて実施するイメージもあるが、現状においては都市部での実施も少なからず存在することがわかる。一方で、農山漁村や温泉地、山岳・高原・海浜といった観光リゾートでの実施も合計で約半数となっており、こうした地域も「業務もできる滞在先」となってきていることがうかがえる。なお、同アンケートでは具体的な地名についても自由記述での回答を得ているが、都市部では東京や名古屋・大阪など、温泉地では箱根や別府など、山岳・高原では軽井沢など、海浜では沖縄などがみられた。

図2 休暇旅行中に業務を実施した際の旅行先(当財団調査結果より筆者作成)

旅行先で「普段とは異なる体験ができるか」も大事

 「今後も休暇の旅行中に業務を行いたいですか」という質問に対しては、約7割が肯定的な回答であった。一方で否定的な約3割の方々に対して、実施したくない理由を尋ねた結果が図3である。理由で最も多いのは「旅行中に仕事のことを考えたくないから」となっているが、コロナ前とコロナ後ではコロナ後で割合が低くなっている。これは、コロナ後にはテレワークも浸透し、オフィス以外で仕事をする機会が増えたことから、旅先で業務のことも対応しつつ休暇を楽しめるようになってきているとも捉えられるだろう。また「自宅や近所でテレワークするのと変わらなかったから」については、コロナ後の経験者でコロナ前に比べ割合が高くなっている。旅行先できちんと仕事ができることに加え、「普段とは異なる体験」ができることが次の休暇型ワーケーションへの実施にもつながるだろう。

図3 今後は、休暇の旅行中に業務を行いたくない理由(当財団調査結果より筆者作成)

おわりに

 ワーケーションについては、大きく注目が集まる一方で、コロナ禍が一定程度落ち着いた後でもワーケーションを実施する人は増えていくのだろうか、といった疑問も良く耳にする。しかし今回示したように、コロナ以前から「休暇の旅行中に業務を行う人」は存在しており、コロナ禍という旅行がしづらい状況においても一定の人が実施していること、以前に比べると旅館やリゾートホテルなどで物理的にも精神的にも仕事をし易くなったことなどから、コロナ禍が一定程度落ち着き旅行に出かける人が増える中で、こうした業務にも対応しながら旅行を実施する人が、急激にではないものの確実に増えていくことは期待できるだろう。

 旅行先となる地域では、こうした需要を獲得していくためには、Wi-Fiやワークスペースの整備といった業務環境を整えるだけではなく、旅行者がその地域を訪れること、更には滞在することの意味や価値を創り出すとともに、それを旅行者に伝えていくことが重要と考えられる。今後は、休暇型ワーケーションの需要獲得のためという視野にとどまらず、コロナ禍が一定程度収束した後も見据えて地域がどのような滞在価値を備えるか、といった今後の地域全体のあり方を模索していくことが求められると思う。

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