過去最高の1,341万人の訪日外客数を記録した2014年は、東京を訪れる友人、知人からホテルが取れないというのを耳にすることが増えました。いつもは都心に泊まっているのが、都心から離れたエリアしか空いていなかったという声を聞くことがよくありましたし、大阪も同様で、出張で行く際にホテルを予約するのに苦労したと知人がこぼしていました。
インバウンド効果で東京や大阪の宿泊施設の客室稼働率は高止まり傾向
実際、観光庁「宿泊旅行統計調査」を見ると、東京と大阪の宿泊施設の客室稼働率は年々上昇し、2013年の後半頃からは8割前後で推移しています(図1)。
図 1 都道府県別客室稼働率の推移
客室稼働率の上昇で宿泊料金も上昇傾向
宿泊料金の上昇はちょうど一年前の本コラムで触れたとおりですが、最近では宿泊料金の上昇について書かれた記事を目にすることも多くなりました。オンライン宿泊施設予約の大手であるホテルズドットコム(Hotels.com)の2014年上半期の「Hotel Price Index(HPI)」によると、日本国内9都市のホテル平均宿泊料金は前年比12%増加したそうで、名古屋を除く調査対象地域すべてで二ケタ増を記録したといいます。(*1)
訪日外国人の宿泊料金は増えていない?!
そういった中、非常に気になっているのが訪日外国人旅行者の宿泊料金の傾向です。図2に示した訪日外国人1人当たり費目別旅行支出の推移を見てわかるとおり、ここ2年ほど宿泊料金はほぼ横ばいで推移しています。2014年10月の消費税免税制度改正の効果で増加が続いている買物代とは対照的です。
図 2 訪日外国人1人当たり費目別旅行支出の推移
価格と質のバランスを
訪日外国人の宿泊場所も都心から周辺部へと広がっているという話を最近はよく耳にします。これまでは単に予約が取れないからという理由だけだと思っていたのですが、宿泊料金が横ばい傾向にあるということは、旅行会社や個人旅行者が、価格が上昇した宿泊施設を割高と感じて避けている可能性があるということを表しているのではないでしょうか。実際に、台湾で2015年の夏の北海道旅行ツアーが価格高騰で売れ行きが鈍化しているという報道(*2) もされており、記事の中では日本旅行のブームが冷めてしまうのではという懸念が示されています。
もちろん、ニーズに応じて価格が変動するのは当然のことではありますが、過度な値上げは満足度の低下や他の競合国・地域へと流れてしまうことにつながりかねません。
日本を訪れる外国人旅行者の約6割が日本を2回以上訪れたリピーターが占めており、リピーターの重要度は増すばかりです。旅行者がまた日本を訪れたいと思ってもらえるには、価格と質のバランスが大切なのではないかと個人的には考えていますが、みなさんはどうお考えでしょうか。
*1 Hotels.com「Hotel Price Index(HPI)」 http://hpi.hotels.com/japan/
*2「夏の北海道旅行ツアー、価格高騰で売れ行き鈍化[観光]」(NNA)http://news.nna.jp/free/news/20150804twd014A.html