日本の「展示会・見本市」の来場者数は? [コラムvol.119]

 観光庁ではインバウンド旅行者の数を将来的に3,000万人にする「訪日外国人3000万人プログラム」の一環として今年をMICE振興の年「JAPAN MICE YEAR」と位置づけ、各種取り組みを強力に推進していくこととしています。MICEとは企業等の会議(Meeting)、企業の行う報奨・研修旅行(Incentive)、国際会議(Convention)、イベント、展示会・見本市(Event/Exhibition)の頭文字ですが、今回は、このMICEのひとつである「展示会・見本市」について取り上げたいと思います。皆さんは「展示会・見本市」にどの程度の人が集まっていると思いますか?

■「展示会・見本市」とはどのようなものか

 「展示会・見本市」と一口にいっても様々な分類ができますが、大きくは「企業・団体等を対象に出展者を募集して開催するタイプ(本稿ではこれを「いわゆる’展示会’」と言うことにします)」と「単独企業が既存顧客・取引先を対象として開催するタイプ(「プライベートショー/企業個展」といわれるタイプ)」に分けることが出来ます。なお、中古車展やフリーマーケットといった「一般消費者にその場で直接販売することを主目的とするもの(一般的に「物産展」や「即売会」といわれるもの)は多くの場合「展示会・見本市」には含まれていません。
 また、もう一つの大きな分類としては「主にビジネスマンが来場し商談が主目的となるタイプ(一般的に「BtoB」と呼ばれるタイプ)」と「主に一般消費者が来場しPRが主目的となるタイプ(一般的に「BtoC」と呼ばれるタイプ)」があります。更にこの「BtoB」と「BtoC」が混在しているタイプ(平日はビジネスマン向け、週末は一般消費者向けなど)もあります。

図1
*上記分類は主なケースであり、この分類に当てはまらないケースや分類をまたがるケースも存在する
出所)筆者作成
「展示会・見本市」の一例
「展示会・見本市」の一例
出所)国際宝飾展ホームページ(http://www.ijt.jp/ijt/

■「展示会・見本市」の件数・来場者数は?

 当財団では昨年度、委託事業として展示会主催者および展示場施設に対するアンケート調査を実施し、平成21年の1年間に開催された「展示会・見本市」の開催件数や来場者数の把握を行いました。この結果、「展示会・見本市」として回答されたものは計2,400件、来場者数は計約2,562万人でした(「いわゆる’展示会’」では計555件、来場者数約1,658万人)。もちろん、この数字はアンケートによるものですので日本の全ての展示会・見本市が含まれている訳ではなく、実際にはこれ以上の件数・来場者数になるものと思います。ただ、この数字には大きくは2つの課題があります。

○「展示会・見本市」の定義がはっきりしていない
 「展示会・見本市」に主にどのようなものがあるか、また様々なケースが存在することは既に述べましたが、実際の所、現状では業界においても何を「展示会・見本市」とするのか、どこまでを「展示会・見本市」の統計として含めるのかが明確になっていません。実施したアンケートにおいても一般的に「即売会」「物産展」と言われるものは対象外としていましたが、それ以外は基本的にアンケート回答者の判断によるものとなっています。

○「来場者」の定義がはっきりしていない
 「来場者」と言っても、実はいろいろなカウントの仕方があります。「展示会・見本市」は2~3日間開催されるものも多いですが、来場者として発表される人数が”実数(会期中何度来場しても1人とカウント)”であったり、”延べ数(1日1人とカウント。3日間とも来場すれば3人とカウント)”であったり、あるいは”会場に入った延べ人数(会場に入る度に1人とカウント)”である場合があります。実施したアンケートでもカウントの仕方がはっきりしていないため、今回は回答のあった数字を積み上げたものが来場者の合計となっています。

■「展示会・見本市」を盛り上げるためには、まずは正確なデータ把握を

 こう考えると、冒頭での問い『「展示会・見本市」にどの程度の人が集まっているか』に対する答えは、「数千万人と言われているけど実際の所はわからない」というのが正しいのでは、と感じています。集客・交流産業は全般的に入込客数や来場者数といった数字を押さえることが非常に難しく、観光地でも観光地点ごとの来場者数を積み上げたり(つまりは延べ数)、イベントでは「主催者発表で○万人」という形式でした。しかし最近では、観光地の入込客数もできるだけ実数値にしていこうという取組みが始まってきていますし、イベントでも厳密な数字が発表されてきています(Jリーグ発足あたりからその流れが始まったように思います)。「展示会・見本市」について言えば、特にBtoBの場合は、事前登録制で当日受付でチェックを受けて入場する、という形態が多いので、正確な来場者数を把握していくことは可能ですし、BtoCにおいても同様の形態、あるいは入場券を発行する等の対応を取っていくことも考えられます。
 また、「展示会・見本市」を開催することによる効果は、出展・来場する企業間の取引にとどまらず、出展・来場する人達の宿泊や飲食等、地域の各種産業に波及していきます。また諸外国からの出展者・来場者も増えてくればその効果は更に大きくなっていきます。しかしそのためには、展示会・見本市に関する正確なデータ把握を行い、出展者・来場者に「参加することのメリット」を正しく伝えることが必要ですし、地域にとっての経済効果を数字で示していくことが、展示会・見本市の開催件数を増やしていくために重要となります。もちろん、正確なデータ把握を進めるためには、先に述べた定義の問題や、データ把握・整理に要するコストの問題など解決すべき点が数多いことも事実ですが、関係者間での議論を深めて一歩ずつでも取組みを進めていくことが大切だと思います。

(参考資料)

  • 平成21年度サービス産業生産性向上支援事業(サービス産業の統計整備・実態把握に関する調査)
    「展示会産業統計の実態把握・整備に関する調査」(展示会産業統計整備コンソーシアム)
  • 展示会コミュニケーションサイト「展コミ」(http://www.eventbiz.net/