台湾・高雄のMICE [コラムvol.304]
外観(高雄展欄館HPより)

 ここ数年、アジアの都市を訪れる機会が増えている。

 世界観光機関(UNWTO)では、今後世界の国際観光客数が増加していくなかで、特にアジア太平洋の増加率が最も高くなるとしているが、自身の行動を振り返っても、確かにその流れになっていると感じている。本コラムでは、こうしたアジアにおける観光・MICEにおける取組みの活発化とその一例として高雄を取り上げてみたい。

アジアの都市訪問が増えた理由

 

 筆者のプライベートでの訪問が増えた理由については、円安基調の影響もあり欧米に比べると費用面で行きやすい近場のアジアを選んでいるという理由もあるが、もう一つとして、以前に比べ様々な面で旅行しやすくなったからという理由もある。これは、都市部で地下鉄などの交通網が整備されたこと、各種の案内サイン等の英語や日本語表記も増えてきて移動しやすくなったこと、日本とを結ぶ路線が増えて選択肢が多くなったこと、インターネットで簡単に飛行機と宿泊が手配できるようになったことなどが挙げられる。これらはアジア各国・地域の経済・産業、また都市の発展が進んできたことも大きな要因だと思う。

 実は、経済・産業や都市の発展と観光との関係性で考えると、MICEの分野はその関係が深い分野である。Meeting(企業系会議等)やExhibition(展示会)は一定の企業や産業の集積が必要になるし、Convention(国際会議)なども海外からのアクセスや都市としての発展度合いなどが影響してくる。アジア各都市においてはMICEを経済・産業あるいは都市の活性化のツールとして活用しており、日本の各都市においても参考になる取組みを展開している例も多い。筆者のビジネスでのアジアの都市訪問は、こうした取組みを知る機会として増えてきた。

台湾・高雄のMICE事情

 

 筆者が訪問した都市の例として台湾の高雄について紹介したい。高雄は台湾南部に位置しており、首都台北から台湾高鐵(台湾新幹線)で1時間半の距離にある台湾第2の都市である。

 そんな高雄、国際会議の開催件数順位を近年上げてきている。表は台湾及び日本各都市の近年の開催件数順位を示したものであるが、日本の都市は東京、京都は安定した順位だがその他都市では変動が激しい一方、高雄については着実に順位を上げていることがわかる。

表1 台湾及び日本各都市の国際会議開催件数

 高雄は台湾で唯一地方政府主導の元、6つの業種・組織グループ(コンベンション運営会社、ホテル、コンベンション施設、非政府組織(NGO)、学術団体、コンベンション関連団体)の130を超えるメンバーにより「高雄コンベンション連盟」が設立されており、コンベンション誘致に力を入れている。また、2014年4月には高雄では初となる国際的な展示場として「高雄展覧館」が開発の進むベイエリアにオープンした。展示面積は25,100㎡(屋内17,900㎡/屋外7,200㎡)と国際的にみればそれほど大きな施設ではないが、これまで高雄にはなかった展示場と会議場が一体となった施設として、ベイエリアの拠点となっている。

 なお、台湾新幹線は現在台北市の中心に位置する台北駅から、高雄市のやや北に位置する左営駅の間を運行しているが、まだ構想段階ではあるものの、左営駅から高雄駅まで延伸(高雄の中心部へ)されることとなっており、MICEの面での今後更なる発展も期待される。また台北の話にはなるが、今年7月1日に台北駅から延伸(台北の東側へ)され、南港駅が新たに開業するが、この南港エリアには台湾で最も大きいMICE施設である「南港展覧館」も立地している。

 また、高雄においては観光に関する国際的な人材育成も積極的に行われている。英語の「Hospitality」を意味する「餐旅」が大学名となっている「国立高雄餐旅大学」がその中核となっている。同校は1995年の設立後、2010年に大学に昇格し、現在では高い専門スキルと外国語の応用力をもったホスピタリティ産業の即戦力となる人材を養成している。また観光に関する国際的な学会での論文発表なども盛んであり存在感を高めている。

展示ホール(筆者撮影)

写真2 展示ホール(筆者撮影)

VIP用会議室(筆者撮影)

写真3 VIP用会議室(筆者撮影)

国際的な目線での取組みを

 

 日本においても各都市でMICEに関する取組みが活発化しているが、こうした交通や施設といったインフラ、誘致のための組織、学術機関における人材育成などがうまく連携しながら進んでいるだろうか。学ぶべき点は多々あるように思う。もちろん高雄が全てにおいて順調であるということはないだろうし、アジアの他都市でもっと活発な取組みが展開されている所もあるだろう。いずれにしても、これからのMICE(更には観光も含めた)活性化への取組みを検討・実行していく際には、国際的な目線が不可欠であろうと改めて感じている。