日本人観光客は乗り継ぎ旅行を好まない? [コラムvol.191]

2013.05.16

企画課長  牧野博明
研究員コラム

■直行便はやはりありがたい!

本年3月7日に、新しい石垣空港がオープンしました。滑走路長の延伸により、東京、大阪、名古屋からの定期直行便が就航(一部は再開)することとなりました。さらに今後は、国際線の開設、LCC(ロー・コスト・キャリア)の就航が期待されています。特に、LCCの就航は、旅行費用の低減につながります。観光需要は社会情勢等の影響を受けやすく、航空各社の料金政策によっても需要が変動しますが、島ごとに異なる魅力を有する地域であり、是非とも多くの観光客に訪れてもらいたいと思います。平成22年8月に策定された「石垣市観光基本計画」では、平成21年の観光客数約72万8千人に対し、平成32年までに100万人にすることを目標として設定しており、早期の達成が期待されます。
何よりも、直行便が就航する効果は非常に大きいです。乗り継ぎ便だと、体力的にも、そして精神的にもきついものがあるため、敬遠される可能性が高まります。また、料金面でも直行便は有利になります。しかしながら、乗り継ぎ便でしか行けない場所は国内外にたくさんありますので、そのような地域では“乗り継ぎをしても行きたい”と思わせるような魅力づくりが求められます。
例えば、同じ八重山地域にある竹富島の場合、2012年6月1日の「星のや竹富島」の開業以降、施設を目当てに初めて八重山地域を訪れる人がいるとのことです。空港から船に乗り継いでまで訪れるということは、それだけ“行きたい”という思いが強いことの証左です。一方で、「星のや竹富島」のスタッフは台湾に出向き、施設はもちろん、新空港開港を含めた八重山地域の宣伝も積極的に行っているようです。このような積極的対応も“乗り継ぎをしても行きたい”と思わせる魅力の一要素といえます。

■ハワイの離島への訪問状況

もう一つの例として、ハワイを取り上げてみます。日本からハワイへ訪れる場合、現在はホノルル空港(オアフ島)を経由しなければなりません。ハワイ州観光局作成の『2011 Annual Visitor Research Report』によると、オアフ島を訪れる日本人観光客は96.1%であるのに対し、ハワイ島は13.3%、マウイ島は5.0%、カウアイ島は1.9%しかいません。スケジュールや料金、言葉の問題が大きく影響しているとはいえ、オアフ島以外の島への訪問率がこれほど低いのは、オアフ島で十分満足しているのか、それとも乗り継ぎ旅行が敬遠されているのでしょう。ちなみに、2010年8月まで直行便が運航していたハワイ島については、2011年の日本人観光客数は前年比11.7%の減少となっています。この年は東日本大震災という特殊要因がありましたが、オアフ島は0.7%の増加となっているため、必ずしも震災が原因とは言い切れないでしょう。このように、直行便の影響は非常に大きいと言えます。

表 ハワイの島別日本人訪問率
  2011 2010 2009 2008 2007
オアフ島 96.1 95.6 96.9 95.9 95.6
ハワイ島 13.3 15.1 14.1 14.9 15.4
マウイ島 5.0 4.9 4.8 5.6 6.2
カウアイ島 1.9 1.7 1.8 2.2 2.7
出展:『Annual Visitor Research Report』ハワイ州観光局

■ラナイ島の可能性

その一方で、これまであまり有名ではなかった島々が脚光を浴びるようになってきました。日本の著名な俳優が結婚式を挙げた場所として注目されたラナイ島の場合、高級ホテルが2軒あるものの、いわゆる「観光地」という感じではなく、素朴な雰囲気が漂っています(ホノルルも昔はこのような感じだったそうです)。島外へ行く主要な交通手段は、マウイ島との間を結ぶフェリーで、観光客も多くみられます。島内に空港はありますが、簡素な造りとなっており、小型機がホノルル-ラナイ間を1日5~6便運航している程度です(飛行時間は30分程度です)。しかし、地元の航空会社はラナイ島への観光誘致に力を入れており、近々増便する計画があるとのことです。そうなると、今後はさらに多くの観光客がラナイ島を訪れるようになるかもしれません。その時に、日本人観光客がホノルルから足を伸ばして行くようになるほどの魅力をラナイ島が発揮するのか、それともやはり乗り継ぎは敬遠されてしまうのでしょうか。今後も注目したいと思います。

のどかな雰囲気のラナイ島
のどかな雰囲気のラナイ島
フォーシーズンズ ラナイ
フォーシーズンズ ラナイ
ザ ロッジ アット コエレ

■観光地サイドの対応も重要

 これまでに述べてきたように、日本人観光客がわざわざ一歩先まで足を延ばすには、観光地サイドも“乗り継ぎをしてまでも行きたい”と思わせるような“とがった”対応が必要です。竹富島にしても、ラナイ島にしても、決して賑やかなリゾート地ではなく、「土着性」「田舎っぽさ」「なつかしさ(原風景)」などがアピールポイントとなっています。そこにある宿泊施設も、高級ではありますが地域色が豊かです。このような点が国内外のラグジュアリー層などに共感を呼んでいます。乗り継ぎの不便さや高額な旅費等を理由に観光活性化を諦める前に、やるべきことはまだまだあるのではないでしょうか。

 

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