中国を訪れて感じたこと [コラムvol.74]

2009.03.19

研究調査部 牧野博明
col-74

 仕事の関係で、昨年末から今年初めにかけて、中国(北京、上海、香港)を訪れました。北京-上海間は直線距離で1,500km以上、上海-香港間も1,200km以上離れているため、気候条件はもちろんのこと、生活・文化の違いも明確に感じられました(参考までに、東京-那覇間が約1,500kmです)。この3都市の現地の様子や観光事情等についてご紹介いたします。

■北京

 中国の首都である北京に着き、最初に感じたのが冬の寒さでした。緯度は秋田市と同程度なのですが、内陸部に位置するため、内陸部特有の強烈な冷え込みに襲われました。この寒さの中での生活は非常に厳しいと思われます。
 夏季オリンピックの直後に訪れたこともあり、北京首都空港のターミナルビルは大変立派で、地下鉄の整備も進んでいるようでした。その一方で、市内を縦横に走るトロリーバスやピーク時の激しい道路渋滞をみるにつけ、昔ながらの中国の雰囲気も感じられました。自動車の運転は噂どおりに荒く、歩行者よりも自動車が優先される社会であることを知らなかった私にとって、道路を横断することは一大事でした。現地の人は「オリンピックの影響で街が変わったと聞くことがあるが、どこが変わったのか分からない」と言っていましたが、その意味が分かるような気がします。
 北京には気さくな性格の人が多いようで、地元の人が言うには、「誰にでも(外国人にも)気軽に話しかけることができる」とのことです。外国人に話しかけられると尻込みしがちな日本人と異なるこの性格は、観光面においては有利ではないかと思われます。
 北京での滞在中、万里の長城と天安門広場・故宮博物院を訪れる機会がありました。いずれも短い時間でしたが、中国の歴史の深さと規模の大きさを改めて感じました。その中で気づいたこととして、万里の長城自体には説明板・案内板があまり設置されておらず、設置されていてもその多くは言語表示が中国語と英語のみという点があげられます。市内の飲食店についても、高級レストランや日本料理店等の特殊な施設を除くと、中国語のみかもしくは英語併記のみの店が多かったように思います。多言語化をめざす日本との違いを感じましたが、これは単なる整備の遅れなのでしょうか、それともお国柄なのでしょうか。

万里の長城
写真(1) 万里の長城
天安門
写真(2) 天安門

■上海

 北京から空路にて入りました上海は、北京とはうって変わり、非常に暖かく感じました(参考までに、上海の緯度は鹿児島と同程度です)。湿度が高く、どことなく日本の南国(特に沖縄)の空気に触れているように感じました。温暖な気候のためか、上海の人の性格は北京の人に比べますと穏やかに見えました(但し車の運転は北京同様に激しいものでした)。この点も沖縄等の南国地域に共通しているものと思われます。
 街中を歩きますと、中国のイメージ映像としてよく使われている自転車の集団が行き交い、路地に入れば洗濯物が所狭しと吊らされているなど、こちらも典型的な中国のイメージそのものでした。その一方で、街の一角には歴史的建造物が連なり、繁華街に出ると近代的な高層ビルが建ち並ぶなど、新旧の時代が混在する都市としての混沌の魅力が感じられました。
 上海での滞在中、浦東地区と繁華街(預園、新天地を含む)を訪れる機会がありました。新たな観光スポットとして開発が進む浦東地区では、昨年オープンした「上海環球金融中心」(日本企業が建設した高層ビル)の展望台が"世界一高い展望台"として人気を博していました。このほか、展望台やアミューズメント施設を有する「東方明珠塔」(テレビ塔)や水族館などが集積しており、賑わい空間が形成されています。片や、「南京東路」や「淮海中路」などの繁華街ではショッピングやグルメを楽しむ観光客や地元住民で賑わっていました。このように、上海は観光面にも力を入れています。
 最後に、上海市内と浦東空港を結ぶリニアモーターカーも体験しました。最高時速431kmの世界は圧巻で、これも観光魅力の一つといえるでしょう。

浦東地区
写真(3) 浦東地区(展望台より)
新天地
写真(4) 新天地(上海中心部付近)

■香港

 香港も上海と同様に温暖な気候でした。チェクラプコク空港は香港中心部から離れており、周辺部はのどかな雰囲気を醸し出していますが、香港中心部に入るとそれまでとは異なる光景が目に入ります。中心部は主に九龍地区と香港島地区に分かれており、九龍地区は飲食店やホテルが所狭しと建ち並ぶ昔ながらの街並みが残っており、一方の香港島地区は高層ビルが林立する近代的な街並みが形成されています。
 国際的な経済・金融都市である香港は、周辺国・地域に比べて給与水準が高いため、生活レベルも高いようです。食とショッピングにこだわりを持ち、高級ブランド品を好みます。また、海外旅行も生活習慣の一部となっているようで、香港には数多くの旅行会社が存在します。日本に対してはとりわけ強い関心を持っているようであり、日本の有名人歌手のファンが多く、また女性は年齢層を問わず「キティラー」となっているようです。
 香港滞在中、ピーク・タワー(ビクトリア・ピークにある展望施設)や香港中心部の散策などを行いました。天候はあまり優れませんでしたが、ピーク・タワーからの眺望は素晴らしく、地元民だけでなく多くの外国人観光客が写真を撮っていました。また、昔ながらの風情が残るピーク・トラムも楽しみの一つとなっています。香港中心部を歩いていますと、かつてイギリス領であった経緯もあり、英語表記(あるいは併記)が至るところでみられました。達者でなくともそれなりに英語に慣れている人であれば、苦なく楽しめる街だと思います。交通手段は地下鉄のほかにトラムや二階建てバスがあり、乗り物自体を楽しむことも楽しみの一つといえます。また、香港の大きな魅力の一つとしてホテルがあげられます。多くの魅力的なホテルが存在する香港において、九龍地区にある「ザ・ペニンシュラ」は歴史・風格のある代表的なホテルとして名高く、多くの人が"一度は泊まりたい"とあこがれるホテルです。観光地や都市の顔となるべき代表的なホテルが存在すると、観光地や都市が引き締まってみえます。このように、香港は観光地に求められる魅力要素を多分に有している都市といえます。

香港中心部
写真(5) 香港中心部(ピーク・タワーより)
ザ・ペニンシュラ
写真(6) ザ・ペニンシュラ

■まとめ

 以上、各都市の現状や訪れた際の印象を述べましたが、改めて中国での観光(アウトバウンド)や中国からの観光(インバウンド)を考える場合、特に心にとどめておく必要があると感じた点として、以下の3点があげられます。

ポイント(1) 各都市の性格・特性が観光地づくりに反映されている

 北京は古い歴史を有し、万里の長城や故宮博物院、天安門広場などの観光資源を有するが、首都としての役割・性格を有するため、政治的・経済的機能が前面に出やすく、結果として観光地としてのイメージがそれほど強く形成されていないように感じます。上海は経済・商業の街としての性格が強く、近年になり浦東地区などの観光活性化が進められていますが、こちらも北京同様に観光地としてのイメージはまだ薄いといえます。これに対し、香港は経済・金融の街ですが、イギリス統治時代を通して観光の土壌が形成されており、また狭い面積の中で地域を運営していかなければならないという事情もあり、観光地としての側面が強く表れています。このように、都市の性格や風土等によって、観光地としての捉え方が異なっています。

ポイント(2) 中国内の各地域で用いられている言語への対応が必要

 冒頭にも述べましたとおり、中国は広大であるため、同じ「中国」といえども言語が異なることを考慮する必要があります(日本の「方言」のレベルではなく、全く別物と捉えるべきです)。共通語として「北京語」はありますが、やはり日常的に使い慣れた言語を用いると安心できます。そのため、中国からの訪日客を推進する場合、中国国内各地の言語に対応する表記・表示、各種言語に対応できる通訳ガイドの養成が重要課題となります。

ポイント(3) 中国の国民性や中国でのルールを重視する必要がある

 中国の人は「声が大きい」とよく言われます。中国語特有の発音方法(同じ言葉でも抑揚の仕方によって意味が異なるため、大きな声でないと伝わりにくい)が原因ではないかとも言われていますが、その真偽はさておき、これも国民性として受け止めるしかありません。ただ、静かにすべき場所・場合においては、その理由をしっかりと伝えれば理解してもらえると思います。
 ルール・マナーの違いも考慮する必要があります。例えば、中国の地下鉄に乗った際に携帯電話での話し声が方々から聞こえてきましたが、中国ではマナー違反ではありません(日本ではマナー違反となります)。逆に、中国では地下鉄車内での飲食は禁止されています(近隣のアジア諸国も同様のようです)。

 国により、考え方や習慣、ルールなどが異なるのは仕方のないことです。「郷に入っては郷に従え」という言葉もありますが、時には相手の事情を酌量することも必要ではないでしょうか。

 

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