訪日外国人旅行者を地方に呼び込む [コラムvol.219]

2014.08.04

観光政策研究部   相澤美穂子
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 最近、ホテル価格の上昇を肌で実感する機会が相次ぎました。
 6月末に出身地である札幌に帰る用事があり、飛行機と宿の手配をしようとした時のことです。出発日が迫ってから予約したこともあったのですが、飛行機は希望の時間帯は満席。そしてほとんどのホテルが満室で、空室があってもかなり高い値段の部屋しかない状況でした。
 6月はなんといっても北海道は観光のベストシーズン。YOSAKOIソーラン祭りといったイベントもあるので、その日も何かイベントがあるからホテルが満室なのだろうと思っていましたが、ホテルスタッフに尋ねると特にイベントはなく、単にお客さんが多く満室が続いているとのこと。中でも目立つのは外国人旅行者。朝食会場のレストランにも以前泊まった時には見かけなかった外国人宿泊者の姿がちらほら。街に出ても外国人をあちらこちらで見かけました。
 より顕著だったのは沖縄の那覇に出張でホテルの手配をした時です。那覇には年に何度も仕事で足を運ぶ機会があり、同じホテルに繰り返し泊まることが多いのですが、ここ最近は泊まるたびに宿泊料金が値上がりしています。ホテルのロビーに入ると、チェックインを待つお客様の全てが外国人。もともと外国人利用が多いホテルではありましたが、ここまで増加しているとは、と驚きました。
 日本を訪れる外国人の増加は数値を見れば一目瞭然です。北海道経済部観光局発表の数値をもとに筆者が推計したところ、2013年暦年の北海道の宿泊者数実人数は約1,633万人、うち外国人は約101.5万人で、まだ全体の6.2%を占めるに過ぎません。しかし、前年からの増加幅で見ると全体が約71.4万人増のうち外国人は36%を占める25.9万人増となっており、宿泊者数の増加に外国人が大きく寄与していることがわかります(図表1)。
 一方、沖縄県はというと、2013年暦年の入域観光客数のうち外国人観光客数が占める割合は8.7%の55.8万人(沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課)。こちらも外国人のシェアはまだそこまで大きくはありません。しかし、前年からの増加幅で見ると、約57.8万人増のうち外国人は31.4%を占める18.1万人増で、こちらも入域客数の増加に外国人が大きく寄与しています(図表2)。

図表 1 北海道の宿泊客数変化(2013年/2012年)

資料:北海道経済部観光局公表データを元に筆者推計
 
図表 2 沖縄県の入域観光客数変化(2013年/2012年)

資料:沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課
 

図表 3 外国人延べ宿泊者数上位10都道府県(2013年)
図表3
資料:観光庁「宿泊旅行統計」
 しかし、日本全体がみな同様にインバウンド増の恩恵を受けているわけではありません。2013年の都道府県別外国人延べ宿泊者数を見ると、上位10都道府県のうち、ゴールデンルートが7都府県、残りが上記で述べた北海道と沖縄。外国人延べ宿泊者数のうち上位10都道府県が占める割合は80.7%にも上っており、極めて限定された地域に集中していることがわかります(図表3)。
 2013年の訪日外国人旅行者数は1,000万人を突破し過去最高を記録しました。2014年に入ると昨年をさらに上回るペースで推移しており勢いは留まるところを知りません。訪日外客数は1-6月期累計ですでに600万人を突破しており、大きな災害や事故がない限り過去最高を大きく更新するのは間違いありません。さらに、東京オリンピック・パラリンピックの誘致が決まり、日本政府は新たに2020年に訪日外客数2,000万人の目標数値を掲げ、達成のためのアクションプランを発表したことでインバウンド2,000万人時代を迎えるのはそう遠い先ではなくなりつつあります。
 しかし、現状のまま2,000万人、さらなる目標である3,000万人時代を迎えた際、現状のままの大都市部や北海道・沖縄といった一部の地域だけで受け入れることはキャパシティ的に困難です。訪日外客数2,000万人、3,000万人時代を迎えるにあたっては地方への分散化が必要不可欠と言っても過言ではありません。
 何より、訪日外国人の大半を占めるのは近隣東アジアからの来訪客。訪日リピーターが拡大するにあたって日本を繰り返し訪れてもらうだけの魅力を訴求するためには、地方の多様な観光資源なしに実現するのは困難です。
 そこで弊財団では「訪日外国人の地方分散化」をテーマに昨年から研究に取り組んでいます。昨年は台湾を事例として取り上げ、台湾人旅行者調査や現地ヒアリング等を行い、その結果を機関誌『観光文化』第219号に掲載しました。調査の結果からは、台湾人旅行者の地方訪問の意向は強いものの、交通の手配が面倒であることや地方までの移動時間の長さがネックであることから、まずは“大都市+日帰りで地方へ”というアプローチが地方訪問へのきっかけとなりそうだということがわかってきました。
 今年度は調査対象を5か国・地域(台湾、韓国、中国、タイ、インドネシア)に拡大し、引き続き地方分散化について研究を進めています。つい先日上がってきた調査結果を見ると、いずれの国・地域でも日本の地方観光地への訪問意向は高くなっており、今後の可能性に期待が持たれます(図表4)。

 今後、調査結果の分析を進め、5か国・地域の旅行者を地方に呼び込むには何がネックとなっているのか、どうすれば訪れるのかといったことを明らかにしていきたいと思っています。研究結果については弊財団HPの「インバウンド政策研究レポート」等を通じて発表を予定していますので、ご興味のある方はまたHPを訪れていただければと思います。

 関連リンク 当財団機関誌「観光文化」219号 特集:アジアのFIT客を地域へ呼び込む

図表 4 日本の地方観光地訪問経験・訪問意向

資料:公益財団法人日本交通公社「5か国旅行者調査」

 

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