観光振興と地域経済の活性化 [コラムvol.5]

2007.10.19

研究主幹 岩佐吉郎

観光振興と地域経済の活性化

 観光振興は、地域経済活性化の有効な戦略として全国各地でその取り組みが進められる中で、観光旅行志向の変化や観光客のニーズの多様化に対応した様々なサービスビジネスの発見と育成に、そのカギがあります。

観光振興と地域経済

 地域外から訪れその地域で消費する観光客をマーケットする観光産業は、 “移輸出産業”の特性を持つとともに、その観光消費は、観光客が時間・空間を移動する行程の中で、宿泊、飲食、土産物、交通などに様々な消費を行うため、サービス業だけでなく農林水産業から製造業など広範囲な産業に波及効果を及ぼします。
 このようなことから、多くの自治体が観光振興を地域経済の活性化の柱に掲げていますが、観光産業の振興のもう一つのメリットは、地域の様々な産業との連携により、バランスの良い地場産業の発展につながることにあります。

観光産業の地域における位置づけの変化

 歴史的に見れば、観光旅行のスタイルや志向の変化により観光消費のパターンも変わってきました。例えば、かつて団体旅行が大きなシェアを占めていた時代は、団体バスを単位として決められた宿泊地と立ち寄り地を回る旅行行動が主流であったため、その地域が団体旅行の観光ルート上にあるかないかによって、また団体旅行を企画する旅行会社と送客契約をしているかどうかによって、観光消費に絶対的な開きがありました。
 このころの観光産業は、地域にとって見ると“限られた観光業界”の人たちだけの産業という見方が強い時代?観光業界がクローズドの時代?でした。
 その後、団体旅行に代わり、個人向けフリープラン型のパッケージ旅行やマイカー旅行が増加することによって、個人が自由に見て回るタイプの旅行が主流の時代を迎えました。
 観光客個人が自由に見て回るようになると、主要観光ルート上にないところでも観光客が訪れるようになり、これまで観光地でなかった地域でも、観光と関係なかった人たちでも、観光客を受け入れて商売できるチャンスが出てきました。ごく限られた観光業界内だけで商売をしていた時代から、様々な分野にビジネスチャンスが広がる時代を迎えたといってよいでしょう。エコツーリズムやグリーンツーリズムなどはその一例です。

沖縄県における観光産業の広がり

 沖縄県では、県外からの受け取り約2兆4千億円(平成15年度)のうち、国からの財政移転約1兆2千億円を除くと、観光収入が約4千億円と最も多く、観光産業が地域活性化のリーディング産業に位置づけられています。
 沖縄観光においても、かつての団体バスや観光タクシーを利用した観光行動が主流の時代は、観光客の消費が特定の観光施設や土産品店、飲食店に観光客の利用が集中していました。
 それが、今や観光客は、レンタカーを利用して、沖縄本島の北から南から、西海岸、東海岸へ自由に回る時代となったおかげで、従来は観光地でなかった地域や、観光と関係なかった人たちなど、県内の様々な分野にビジネスチャンスが広がる時代を迎えました。

沖縄型経済発展モデル

 沖縄観光にとって、観光客の増加、リピーターの増加は、観光客が求めるサービスニーズの拡大と多様化をもたらしました。さらにサービスニーズの拡大と多様化は、さらなるサービスビジネスの広がりをもたらします。
 観光立県として観光産業をリーディング産業とする沖縄県にとって、このような発展・拡大の構造に、観光産業を中心とした沖縄型経済発展モデルがあると考えます。
 図に示す外枠の円は、観光客が求める“サービスニーズの大きさ”を示しています。この円の大きさを言い換えれば、求められる“サービスビジネスの大きさ”でもあります。
 かつての沖縄観光では、いくつかの内部の円で示すような限られた業種が、サービスニーズに対応してバランスをとって沖縄観光が成立させていました。しかし、観光客の求めるサービスニーズが多様化するにつれて、新たなサービスビジネスが出現するとともに、既存のビジネスとの競争も激化して、例えば、観光客がホテル内のレストランで夕食を食べずに、街中の沖縄料理店や居酒屋に行く客が増えたり、バス・タクシーからレンタカー利用の観光が主流になったりすることによって、新たなビジネスニーズが成長してきました。
 また一方で、観光客が求めるサービスニーズにまだまだ対応出来ていない領域も多いです。このような状態は、本当はニーズがあるのに、対応するサービスビジネスが存在していない状況を示しています。この部分が多いほど、ビジネスチャンスを逃していることであり、そこを埋めていく“ニッチビジネス”の開拓が全体の観光産業発展にとって重要です。
 沖縄において観光産業は、中長期的にみても継続的に発展する可能性を最も持つ産業であることは、これまでの実績から明らかです。
 そういった状況の中で、「全体として沖縄観光が発展するから、自分たちも発展する」という考え方は危険です。お互いが切磋琢磨して新しいビジネスニーズに対応していこうとすることが、沖縄型経済発展を支えていくこととなり、そうしたところに観光産業をリーディング産業とした地域発展モデルがあるように考えます。

沖縄観光産業経済発展モデル図
沖縄観光産業の経済発展モデル(試案)
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