自国の観光資源への評価は甘い?厳しい? [コラムvol.338]

2017.03.06

観光地域研究部 主任研究員 五木田玲子

Novi Sadを訪れて

 少し前の話になりますが、昨夏、学会に参加するためにセルビアを訪れました。学会開催地はセルビア第二の都市であるNovi Sad。第二の都市とはいえ、時間がゆったりと流れていて、とてものどかな印象の街でした。幼い頃にピアノで弾いた「美しき青きドナウ」のドナウ川をはじめ、ローマ帝国によって造られた要塞、荘厳な建物に囲まれた美しい広場、美しい街並みに溶け込んだ数え切れないほどのオープンカフェなど日本とは異なる文化の異国の街並みを目にし、心を動かされました。

写真1 セルビアの様子
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自分の国の観光資源をどう評価する?

 美しい街並みに触れながら、そこで私がふと思ったことは、「セルビアの人もこれらの観光資源に触れたときに、私と同じような気持ちになるのだろうか・・・」ということでした。

 そこで、世界最大級の旅行クチコミサイト「TripAdvisor」を活用して、私が抱いた疑問を確認してみることにしました。TripAdvisorでは、宿泊施設やレストラン、観光名所等について、実際に訪れた感想を「とても良い」「良い」「普通」「悪い」「とても悪い」の5段階から評価し、他の旅行者と共有できるようになっています。この評価は、観光資源毎に、旅行者の評価別、旅行のタイプ別、時期別、書き込んだ言語別で閲覧することもできます。

 セルビアは残念ながらクチコミ数が多くなかったため、今回は、日本、中国、フランスの3カ国について、TripAdvisor上で各国の観光資源の上位に表示される2つ、計6つの観光資源を抽出し、3カ国の公用語となっている3言語(日本語、中国語(簡体字)、フランス語)による評価を見てみることにしました。(実際は、公用語=その国の人ということではありませんが、ここではそう捉えることにしました。)

 日本からは「伏見稲荷大社」「宮島(厳島)」の2つの資源を抽出しましたが、両資源とも、日本語による評価は3言語の中で最下位となり、フランス語による評価が最も高くなりました。同様に、中国からは「慕田峪長城 (万里の長城)」「秦始皇兵馬俑博物館」を抽出しましたが、中国語(繁体字)による評価が最も低く、日本語による評価が最も高いという結果となりました。フランスの「エッフェル塔」「ノートルダム大聖堂」もフランス語による評価が最低、中国語(繁体字)による評価が最高となりました。つまり、いずれの観光資源も、自国の人からの評価が最も厳しい、という結果となったのです。

 

図1 言語別にみた観光資源に対する評価
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出所:TripAdvisorより筆者作成(2017/2/22時点)

 これは、認知的不協和(自分自身の行動を肯定したくなるため、時間や費用を掛けたものについては自分を納得させる=良かったと思う、という心理現象)が起きている、つまり、遠方から時間と費用を掛けて訪れる他の国の人のほうが良かったと思いやすい傾向にある、とも考えられますが、やはり、異なる文化背景から成る観光資源は、より非日常を感じさせ、旅のワクワク感が高まり、評価が高まるのかもしれません。

 自国の観光資源であれば言語の問題もありませんし、十分に堪能しやすい環境にあるはずです。がしかし、感想は?と問われた時に「とても良かった!」と回答するのは、他の国から訪れた人であり、自国の観光資源への評価は厳しいようです。日本人観光客からの評価を高めることは、インバウンドからの評価を高めることよりもハードルが高いとも言えそうです。

参考

TripAdvisor https://www.tripadvisor.jp/

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