観光プログラム/着地型旅行商品の有望な潜在顧客とは? [コラムvol.231]

2014.11.18

観光研究情報室  外山昌樹

観光プログラム開発の課題

 次号の当財団機関誌「観光文化」(2015年1月発行予定)では、地域発の観光プログラムに関する特集を掲載予定です。地域の観光推進組織や事業者などが主体となった観光プログラム開発は、全国各地で行われるようになっています。これにより、まち歩きや農業体験、自然ガイドツアーといった地域資源を活用した観光プログラムが作られるようになりましたが、流通・販売面ではまだまだ課題が散見されるのが現状です。具体的には、十分な収益を上げられているプログラムが少ないといったことがあげられます。

 こうした現象を説明するための理由はいろいろあるかと思いますが、その一つに、観光プログラムのターゲティング(どのようなニーズを持った旅行者にねらいを定めるのか)がうまくいっていないということが考えられます。マーケティングの教科書通りに考えると、ターゲティングを行う前段として、セグメンテーションという作業が必要となります。これは、市場をいくつかの異なったニーズを持つグループに分類することを指します。

 従来のプログラム開発の場面においても、セグメンテーションとターゲティングは日常的に行われているかと思います。たとえば、「小さいお子様連れ向けプログラム」や「若い女性向けのプログラム」といった表現を耳にしたことがあるかもしれません。「小さいお子様連れ向けプログラム」の場合は、「家族構成」という軸によってセグメンテーションを行い、さまざまな家族構成の中でも、小さいお子さんがいる家族にターゲットを絞っているといえます。同様に、「若い女性向けプログラム」の場合は、「性別・年齢」という軸によってセグメンテーションを行い、その中でも若年女性にターゲットを絞っていると説明できます。

ライフスタイルを分類軸にして考えてみる

 「もしかすると、家族構成や性別・年齢以外にも、適切な分類軸があるのかもしれない」

 このような問題意識の下、当財団が調査を受託した観光庁「観光地域における評価に係る検討実施業務」(2013年度)では、旅行者のライフスタイルという分類軸を採用し、国内観光旅行市場のセグメンテーションを行うためのアンケート調査を実施しました。そして、異なるライフスタイルを持ったグループ別に、さまざまな観光プログラム(観光庁「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」の一環として造成されていた商品群)に対する参加意向を尋ねてみました。

 日常生活や旅行自体に対する価値観を尋ねる多くの質問(たとえば、「環境を守るために、やっていること、心がけていることがあるかどうか」など)に関する回答パターンを分析した結果、回答者を以下の3グループに分けることができました。

 「自己研鑽志向グループ」
 ・自分をより成長させたいと思う志向が強いグループ。社会貢献や、環境配慮への意識も高く、旅行に対しても、自分自身を高めることを動機として持っている。
 「保守志向グループ」
  ・世の中の流行や周囲の環境には流されない志向が強いグループ。周囲との摩擦は好まず、道徳観の強い傾向がある。
 「リラックス志向グループ」
 ・余暇活動や旅行の実施にあたって、リラックスすることを重視する志向が強いグループ。

自己研鑽につながる価値を提供することが重要?

 さて、上記の3グループ別に、さまざまな観光プログラムへの参加意向を尋ねてみたところ、「自己研鑽志向グループ」が、すべてのプログラムに対して、他のグループよりも高い参加意向を持っているという結果となりました。しかも、その差はかなりはっきりとしています。

図:グループ別の観光プログラムへの参加意向(N=2083) ※パーセンテージは、参加意向がある人の割合を示す 出典:観光庁「観光地域における評価に係る検討実施業務」報告書を基に作成

図:グループ別の観光プログラムへの参加意向(N=1392)
※パーセンテージは、参加意向がある人の割合を示す
出典:観光庁「観光地域における評価に係る検討実施業務」報告書を基に作成

 ここから見えてくるのは、自分をより成長させたいと思う志向が強い人たち(自己研鑽志向グループ)は、観光プログラムの有望な潜在顧客であるということです。すなわち、この人たちをターゲットに定めることで、より多くのプログラム参加者を集めることにつながる可能性があります。その際は、プログラムの参加を通じて、自分自身の成長につながると旅行者が感じられるような価値の提供(商品づくり)やプロモーションが重要になってくるでしょう。

 なお、この調査結果から、自己研鑽志向グループは、特定の性別・年代・居住地に偏らず、全国に幅広く存在していることもわかっています。全国各地において、有効なターゲットになり得るといえるでしょう。

 このように、従来とは少し異なった視点から市場を眺めてみることは、売れるプログラムづくりの手がかりとなる可能性を秘めていると思います。

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