観光まちづくりの現場で使える10の「時短」ツール [コラムvol.349]

2017.07.10

観光地域研究部 主任研究員 吉谷地裕

 昨今、「時短家電」が流行しています。

gf01a20150202120033eo7

 食洗機や、乾燥機付洗濯機、フードプロセッサなどは家事の手間を大幅に減らしてくれます。我が家も某メーカーのロボット掃除機を購入し、掃除がずいぶん楽になりました。忙しい共働き家庭や子育て中の家庭など、マルチタスクな現代人の、手を抜けるところは抜きたいというニーズに合っているといえます。

 他方、地域の熱心な観光課や観光協会の職員は、昨今の観光への注目を受けて、大変忙しくなっています。限られた人数・資金の中で、各種イベントなどの現場対応、商品造成、キャンペーン・営業活動、諸会議への参加、各種調整等で多忙なことに加えて、昨今は「日本版DMO」を視野に地域の観光の舵取りも期待されております。このため、多忙な毎日の中に、これまでの取組を振り返ったり、改めて戦略を考えたり、新しい商品やプロモーションのアイデアを紡ぎだす 時間を確保することが重要となってきています。

 そこで、観光まちづくりの現場で使えそうな「時短」につながるツールやノウハウを集めてみました。この数年で、特にインターネットを活用した様々なサービス・ツールが普及してきているほか、過去のノウハウ公開も進んでいます。

目次


1.外国人へ他言語で地図情報を提供する[インバウンド対応 / 情報発信]

GoogleMapとローカルガイド(無料)

googlelocalguide

 地理が分からない外国人をはじめとする遠方からの訪問者にとって最も重要な観光情報の1つと言えます。しかし、外国語に対応した地図を製作するのは非常に手間のかかる作業です。Googleマップは、世界で最も普及したデジタルマップの1つで、訪日外国人もスマートフォンやダブレットから利用しています。この地図上の情報は、「ローカルガイド」に登録することで追加・編集することができ、登録された情報は、ある程度は他言語に自動翻訳されます(手動でも他言語情報を登録できます)。他言語の観光マップづくりは大変な手間と時間がかかるものですが、この方法なら、大幅に手間を簡略化しながら、多くの利用者にリーチできます。

 なお、先日のgoogle社のリリース情報(7/6)によると、アクセシビリティ(バリアフリー)情報の表示機能が追加され、ユーザーが車椅子対応(車いす対応のエレベータの有無、エントランスの対応、駐車場・トイレ・座席などの対応)等が確認できるようになるようです。現時点で国内非対応ですが、2020オリパラに向けて、バリアフリー対応においても活用できるようになるかもしれません。

参考サイト:ローカルガイド https://maps.google.com/localguides
手動で他言語情報を編集する場合は、英語の場合URLのパラメータに'hl=en'と入力し、英語版ページを開いてから編集します(英語はen、韓国語はko、中国語はzh、日本語はja、ロシア語はru、フランス語はfr、スペイン語はesとなります )。
(例: https://www.google.co.jp/maps?q=33.0723757,131.8612544&hl=en
※URLのhttps://www.google.co.jp/mapsの後に'?q='と入力し、'緯度,経度(または検索キーワード)'、'&hl=en'の順に入力します。

 また、Googleマップの情報をベースにした、GoogleTripという人工知能を使って航空券などのメールから自動的に旅程を提案するアプリも広まっています。ご自身で、あるいは有志に呼び掛けて、ローカルガイドのランクを競争しながら編集してみてはどうでしょうか。

参考サイト:GoogleTrip https://get.google.com/trips/

▲ 目次へ戻る

2.自地域のホームページを他言語に翻訳する[インバウンド対応 / 情報発信]

Googleウェブサイト翻訳ツール(無料)

googletranslate

 自地域のウェブサイトを外国語に翻訳するのは大変に手間がかかります。ストック情報(あまり変更がない店舗リストや見どころリスト)だけでも大変ですが、フロー情報(今日の出来事、今月のイベント)は更新の度にこまめに編集しなければならず、持続的にコストがかかります。

 かつて、「自動翻訳ツール」は非常に精度が悪かったのですが、昨今の人工知能の発展で、まだ完璧とはいえませんが、ある程度意味が通るように翻訳してくれるようになってきました。Googleウェブサイト翻訳ツール(無料)を使うと、利用者が言語を指定して翻訳できる「セレクトボタン」を表示するコードが作成され、これを自社のウェブサイトに貼りつけることで、他言語に翻訳できるようになります。

参考サイト:Googleウェブサイト翻訳ツール https://translate.google.com/manager/website/

▲ 目次へ戻る

3.外国人受入に向けて指さし会話帳をつくる[インバウンド対応 / 受入体制]

hokkaido

 全国各地に外国人が訪れるようになり、各地でいわゆる「指さし会話帳」が作成されていますが、その一部は多くの方が活用できるように一般に公開されています。自地域での対応を検討する際に、こうした取組を参考にしてはいかがでしょうか。以下にその一部を例示します(※詳細や不明点等は直接著作者にご確認ください)。

 カンタン5ヵ国語コミュニケーションツール(5ヵ国語会話集)/北海道観光振興機構

参考サイト: https://www.visit-hokkaido.jp/company/material/detail/15

 外国人おもてなし指差しブックレット、大田区 外国語メニュー かんたんキット、銭湯指差し案内マニュアル/大田区 観光・国際都市部 観光課

参考サイト: http://www.o-2.jp/ota_welcome/method.html#download

 インバウンド多言語表示マニュアル/ツーリズムおおいた

参考サイト: http://www.visit-oita.jp/books/

▲ 目次へ戻る

4.膨大な定型テキストを処理する[事務]

seikihyogen

 観光課や観光協会が持っている名簿データや資源データなど、ある程度定型的で膨大なデータについて、一部レイアウトを変更したり、ある文字について別の文字に置き換えたい場合があります。手作業では何日もかかりますし、単純なテキスト検索・置換では、スペースや、改行、タブなどの処理ができません。プログラマーの方々は、これらを「正規表現」と呼ばれる表現方法を使って一括編集しています。場合によっては数日かかってしまう編集作業が一瞬で終わります。

プログラマーでなくとも、対応するテキストエディタを使えば、簡単に利用することができます。例えば、以下のようなことができます。

  • 改行を一括で消して、全てカンマにしたい。 検索:\n 置換:,
  • 連続した改行を消したい。 検索:\n\n 置換:\n
  • タブを一括で消して、全て改行にしたい。 検索:\t 置換:\n
  • 郵便番号を一括で消したい。 検索:〒\d{3}-\d{4} 置換:(空欄)
  • URLを一括検索で消したい。 検索:/^https?:\/\// 置換:(空欄)

正規表現を使えるテキストエディタとしては、例えば以下があります。

※改行の正規表現はファイルや環境によって異なる場合があります。詳細は、各テキストエディタのマニュアル等をご参照ください。

 また、正規表現ではありませんが、テキストエディタの機能として、全角文字を一括して半角文字に変更したり、大文字を一括して小文字に変更する機能が付属しているものもあります。標準装備のメモ帳やシンプルテキストの代わりに、上記のようなより多機能なテキストエディタを入れておくと便利です。

▲ 目次へ戻る

5.資料作成やイベントに使う写真・図版を探す[事務 / プレゼン / 情報発信]

find47

 観光課、観光協会は、現場での対応のみならず、庁内や関連事業者へのプレゼンテーションも必要になっており、分かりやすいスライド資料や配布資料を、素早く作ることが必要となっています。以下のFind47やいらすとやでは、そうした資料作成に役立つ写真やイラストを無料で配布しています(※利用方法や制限事項等は各サイトをご確認ください)。

Find47(無料)

 Find47は、経済産業省が立ち上げたウェブサイトで、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0国際)」の利用条件に基づき、全国の写真家や写真愛好家、旅行者から提供された日本全国の風景写真を無料で商用利用できます。写真を改編して使用することも可能です。また、本サイトは外国人に日本の風景を伝えることも目的の1つとなっており、自地域の写真を本サイトに投稿し情報発信することも可能です(審査あり)。

参考サイト:Find47 https://find47.jp/

いらすとや(無料)

 いらすとやは、かわいいイラストが多数公開されており、一般的なイラスト集ではあまり見当たらないニッチなテーマのイラストが見つかります。サイト管理者のご好意により、個人、法人、商用、非商用問わず無料で使用できます(一部制限あり。詳細はサイトの「ご利用について」をご確認ください)。

参考サイト:いらすとや http://www.irasutoya.com/p/terms.html

公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団

 本来プロの領域の話ですが、会議やイベントで、臨時的に案内用図記号(いわゆる公共サイン、ピクトグラム)を使いたい場合があります。交通エコロジー・モビリティ財団では標準案内用図記号のデータ(PDF形式、EPS形式、GIF形式)を配布しています。

参考サイト:公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 http://www.ecomo.or.jp/barrierfree/pictogram/picto_top.html

Google Photo(無料 ※有料プランあり)

 観光課、観光協会は膨大な写真をストックしていますが、写真探しが大変です。Google Photoは、容量無制限のオンライン写真管理ソフトです(ただしサイズが圧縮されます)。写真をどんどん放り込むだけで、撮影日で整理されます。秀逸なのは検索機能で、人工知能による顔認識で人物名での検索(要名前登録)や、特別なキーワードをつけていなくても写真に写っているもの(赤、黒などの色での検索、海、山、岩、猫、クリスマス、正月など)を自動判別して検索してくれます。

参考サイト:Google Photo https://www.google.com/photos/

縮小専用(無料)

 写真の大きさを小さくしたい、サイズを揃えたいときには、そうした専用ツールも公開されています。例えば、下記の「縮小専用」というフリーソフトは、サイズを設定してドラッグ&ドロップで複数のファイルを一括で縮小することができます。

参考サイト:縮小専用 http://i-section.net/software/shukusen/

▲ 目次へ戻る

6.天球写真やVR写真・動画、ストリートビューを撮影し、公開する[情報発信]

theta

 観光プロモーションには、いつも写真や動画といった素材が欠かせません。近年は、ドローンやVRなどを使って差別化を図っている地域も増えてきました。こうした素材を作るためには、かつては専門的なノウハウと機材が必要でしたが、現在は、ツールが比較的入手可能な価格帯で市販されています。既にこうしたツールを持っている市民等の協力が得られれば、(プロのクオリティとは比較できませんが)ある程度の素材が集まります。

theta/Ricoh

 thetaは360度映像やVR動画等を撮影できるカメラです。撮影した映像や動画はFacebookやYOUTUBE、google street mapなどに投稿することもできます。

参考サイト:theta(Ricoh) https://theta360.com/ja/gallery/index_everest.html

ストリートビュートレッカーパートナープログラム

 Google社では、「ストリートビュートレッカーパートナープログラム」を観光協会等を対象として提供しており、専用機材の貸与を受けて、地域の自慢の場所(登山道や博物館なども含む)を撮影して公開することもできます(※詳しくは、下記よりGoogle社へ直接お問い合わせください)。

参考サイト:ストリートビュートレッカーパートナープログラム https://services.google.com/fb/forms/streetviewtrekkerprogramjp/

▲ 目次へ戻る

7.定例的なSNS更新作業の一部を自動化する[情報発信]

ifttt

IFTTT(無料)

 多くの地域で、複数のSNSを並行して運用されていると思います。1つでも大変ですが、全てを更新するのは大変手間のかかる作業です。IFTTTというサービスは、複数のウェブサービスやスマートフォンの機能を連携し自動処理させられます。連携方法を記述した「レシピ」と呼ばれるプログラムを作成して活用しますが、他のユーザが作成したレシピが多数公開されており、これを流用することができます。例えば、以下のようなことができます。

  • ツイッターと同時にインスタグラムに写真付きで自動的に投稿する
  • 特定のハッシュタグを付けたツイートだけフェイスブックにも自動的に投稿する
  • フェイスブックとツイッターのプロフィール画像を同時に変更する
  • 新年になったら自動的にツイートする
  • 天気予報を自動的にツイートする
  • ワードプレスを更新したら、ツイッターとフェイスブックに記事を自動的に更新情報を投稿する、等々

 基本的に英語ですが、各所で日本語のハウツーが公開されています。

参考サイト:IFTTT https://ifttt.com/discover

▲ 目次へ戻る

8.特定ターゲットに向けた広告を打つ[情報発信 / マーケティング]

facebookad

Facebook広告マネージャ(有料)

 多くの地域でFacebookが活用されていますが、Facebookは日記的な記事配信だけでなく、Facebook利用者に対して広告を打つことができます(有料)。Facebook広告ツールの特徴は、Facebookに登録されている個人情報や日記情報などに基づいて、ターゲットを非常に狭く絞り込むことができることです。私が以前実施した広告では、

  • ユーロ圏在住
  • 海外でタイビングを実施した経験がある
  • ダイビングのライセンスを持っている
  • 訪日経験が無い

といったニッチな条件で条件の絞り込みを行ったのですが、一定のビューを確保できました。この絞り込み作業をする中で、(Facebook利用者の中で)自分が想定する顧客がどの位の規模であるか当たりを付けることができます。自地域でFacebookを運用している場合は選択肢に入れても良いと思います。なお、実際に広告を打つ際には費用がかかりますが、広告金額の上限を決めたり、表示期間を区切ることもできます。

参考サイト:Facebook広告マネージャ https://www.facebook.com/business/help/633662000000451

▲ 目次へ戻る

9.自地域の情報を分析する[マーケティング]

resas

 自分の地域が現在どのような社会状況や経済状況になっているのかを把握することは、将来の戦略を立てる時にとても大切です。そうした情報は、総務省統計局をはじめ、都道府県や市区町村の統計課ホームページなどで公開されています。国内旅行者の統計や訪日外国人旅行者の統計も、同様に観光庁ホームページを始め、都道府県の統計課や観光課のホームページなどで公開されています。外部コンサル等に委託する前に、まずはざっと自分たちで分析してみると課題が分かりやすくなると思います。

RESAS(無料)

 より簡易にこうした情報をみる方法として、経済産業省と内閣府まち・ひと・しごと創生本部が提供しているRESASというシステムがあります(無料)。都道府県、市区町村で絞り込みながら、産業、人口、観光などの統計情報を閲覧することができます。

 日々アップデートされており、公開当時よりも情報が充実し、動作も機敏になりました。

参考サイト:RESAS https://resas.go.jp/

観光予報プラットフォーム(無料 ※有料プランあり)

 2015年度経済産業省事業で構築されたサイトです。日本観光振興協会が運用しており、旅行会社などが提供する全国約7000万泊の宿泊予約・実績のデータや、それに基づく半年先までの予測値を見ることができます。

参考サイト:観光予報プラットフォーム https://kankouyohou.com/

旅行年報(無料 ※冊子は有償)

 観光を取り巻く旅行市場や観光産業、観光地、観光政策などに関する各種統計資料や、当財団が実施した独自の調査結果をもとに、一年の動向を解説しています。PDFでダウンロード(無料)または、アマゾンのPOD出版(有料)で入手できます。

参考サイト:旅行年報 https://www.jtb.or.jp/publication-symposium/book/annual-report

Google Trend(無料)

 Googleの検索ボリュームの推移を視覚的に確認することができ、現在のトレンドを確認することができます。自地域で行ったキャンペーンの反応を確認したり、他地域の取組への反応と比較することもできます。

参考サイト:Google Trend https://trends.google.co.jp/trends/

▲ 目次へ戻る

10.ウェブアンケートを作って実施する[マーケティング]

googleform

 本気でマーケティングを考えていく場合に、既存情報では十分な情報が得られないことがあります。また、自地域の実施したキャンペーンの反応などを確かめたい場合もあります。ウェブアンケートを実施するには一定のコストがかかりますが、より簡易に意見を収集したい時などは、無料ツール等を使って、自前でウェブアンケートを作成することができます。

 最近のウェブアンケートツールは複雑な条件分岐や、テーブル、マルチアンサー、スケールなどにも対応しており、説明ページや、回答後のお礼ページを作ることもできます。また、集計は自動的に行われ、その結果もグラフとしてリアルタイムに表示されます。前述のフェイスブック広告マネージャーと連携して、簡易なニーズ調査を行うこともできます。

Googleドライブフォーム(無料 ※有料プランあり)

参考サイト:Googleドライブフォーム https://docs.google.com/forms/

typeform(無料 ※有料プランあり)

参考サイト:typeform https://www.typeform.com/

questant(無料 ※有料プランあり)

参考サイト:questant https://questant.jp/

 なお、ウェブアンケートのサイトに誘導するために「QRコード」を使うことが多いですが、これも無料の作成サービスがあります。

参考サイト:Google検索結果 https://www.google.co.jp/search?q=qrコード作成

▲ 目次へ戻る

 観光協会や観光課の皆さまから、「資源(ヒト・モノ・カネ)も時間は限られているのに、あれもこれもしなければならない」という声を頻繁に聞きます。対処療法ではなく、抜本的な体制や財源の見直しが必要な地域も多いと思います。

 しかし、こうしたツールもうまく活用していただくことで、少しでも皆さまの限られた資源・時間の有効活用につながり、その結果、営業や出張の日程を1日延ばして関係先と会う時間を作れたり、その地域の観光を自身で体感したり、そして、たまには休息をとっていただくことの一助になれば幸いです。

この研究員のその他のコラム

最新研究員コラム

観光研究コラム一覧