観光地と災害について考える -火山の恵みと噴火への備えを切り口に-[コラムvol.280]

2015.12.04

観光政策研究部 主任研究員 堀木美告

 日本列島には多くの火山があります。火山は温泉をはじめとして私たちの生活に様々な恵みを与えてくれますが、一方でひとたび噴火をすれば恐ろしい災害を引き起こす可能性を持っています。火山の恵みである温泉や美しい景観を魅力の核としてきた観光地ではこの両面が隣り合わせであることを意識する必要があります。

■代表的な火山活動の恵み -温泉-

 日本は火山列島とも言われ、地理的な偏りはあるものの全国に110の活火山*1が認められています。このような成り立ちであるわが国では、観光の魅力につながる要素の中にも火山の活動に由来するものが大変多く含まれています。

 まず「火山の恵み」として誰もが思い浮かべるのが温泉ではないでしょうか。温泉は「火山性温泉」と「非火山性温泉」とに分けられ、火山との結びつきの程度は様々です。(公財)日本交通公社の観光資源評価*2では「温泉」として「草津温泉の湯畑自然湧出泉源広場と温泉街、共同湯と時間湯」「別府温泉郷(八湯)の湯けむり景観と鉄輪地獄、伝統的共同浴場群と入浴法(泥湯、砂湯)」の2件を特A級資源と評価しています。その他に全国で31件の温泉関連資源が特A級に準ずるA級資源と評価されています。

■火山活動に由来する様々な観光の魅力

 「火山の恵み」は温泉だけではありません。観光資源のうち自然資源といわれるものの中には温泉以外にも火山由来のものが多数含まれます。火山そのものである「山岳」に加え、「高原・湿原・原野」「湖沼」「河川・峡谷」「岩石・洞窟」といったカテゴリーの自然資源に関しても、その形成にも火山が関わっているものが少なくありません。

 例えば「岩石・洞窟」のカテゴリーに含まれる鬼押出、三原山溶岩群、普賢岳溶岩流の3件は火山の噴火により地上に表出したものですので、火山との関わりが理解しやすいと言えます。一方、湿原や湖沼、峡谷など、一見すると火山との結びつきが想像しにくいものの中にも火山がその成立に関わっているものがあります。尾瀬ヶ原の成立には燧ヶ岳の噴火による泥流で河川がせき止められたことが関係していますし、十和田湖も元を正せば火山活動で形成されたカルデラであるといわれています。層雲峡も大雪山の噴火に由来する柱状節理「大函・小函」が大きな魅力の一つになっています。

■自然資源の多くを占める火山活動と関連する観光資源

 下の表は特A級およびA級の資源のうち火山に関連する資源をピックアップしたものです。このように見ると様々な美しい自然資源や自然景観の形成に火山活動が関わっていることにあらためて気づかされるのではないでしょうか。

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■恵みと表裏一体の火山災害への備え

 火山はこのように温泉や美しい景観などの恵みを創出する一方で、ひとたび噴火をすれば恐ろしい災害を引き起こす可能性があることも事実です。2014年9月27日の御嶽山の噴火の様子は、その鮮明な映像とともにまだ皆さんの記憶に強く刻み込まれているのではないでしょうか。2011年の東日本大震災以降、日本は「大地変動の時代」に入ったと言われます*3。特に温泉地を含めた観光地では地域住民以外に一時的に不特定の来訪者をお迎えすることから、自然災害に関する情報に対して一層敏感になっていらっしゃる方も多いことでしょう。

 では、そのような「大地変動の時代」において、観光地はどのように備えたらよいのでしょうか。当財団が事務局を務める「温泉まちづくり研究会」では、去る12月1日に「温泉地と災害を考える」をテーマとして今年度第二回目となる研究会を開催しました。京都大学教授で火山学者の鎌田浩毅先生にご講演をいただいた他、草津町長 黒岩信忠氏、(一財)箱根町観光協会専務理事 高橋始氏に温泉地の現場からのご報告をいただき、同研究会会員温泉地のメンバーを中心にディスカッションを行ってまずは問題意識の共有を図りました。当日の様子をあらためて温泉まちづくり研究会のホームページ等でご紹介するとともに、研究会としての議論を深めていきたいと考えています。

 *1 活火山総覧(第4版)Web掲載版(気象庁) による。 http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/souran/menu_jma_hp.html

 *2 同評価では特A級は「わが国を代表する資源であり、世界にも誇示しうるもの。日本人の誇り、日本のアイデンティティを強く示すもの。人生のうちで一度は訪れたいもの。」、A級は特A級に準じるものと定義づけている。特A級は55件、A級は396となっている。

 *3「火山はすごい」鎌田浩毅(PHP文庫)

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