台湾南部(高雄、墾丁、屏東)を訪れて [コラムvol.346]

2017.05.29

観光政策研究部 主任研究員 守屋邦彦

 先月、台湾の南部エリアを訪れる機会があった。訪問の主たる目的は、高雄の国立台湾応用科技大学にて開催された「台日地方観光論壇」において、「日本における観光による地方創生の現状」と題した発表をするためであった(同論壇の概要はフォトレポートNo.54を参照)が、今回のコラムでは、現地を訪れたりお会いした方々と交流したりしたことにより得られた気づきをお伝えしたい。

台湾の方々で一杯の飛行機

 4月中旬の水曜、成田空港18時発のフライトで筆者は高雄へ向かったが、飛行機は概ね満席の状況であり、かつその大多数は台湾の方々であった。台湾から日本を訪れる旅行者にとって良い時間帯のフライトであったとはいえ、日系エアラインでもあったのでこの状況には少々驚いた。なお、同論壇でご一緒した先生によれば、先生が利用した関西空港から台湾・桃園国際空港へのLCCのフライトについても似たような状況だったとのことである。

 多くの方々がご存じの通り、日本を訪れる外国人旅行者はここ数年急増しており、台湾からの旅行者も2016年実績で約417万人と、東日本大震災の影響で落ち込んだ2011年と比較すると実に4倍以上に増加している。一方で台湾を訪れる日本人旅行者はここ数年増加傾向にあるものの、2016年実績で約189万人と、台湾からの旅行者の半分に満たない数である。この数字を考えれば、こうした状況になっていることにも納得できる。

図1 台湾・日本をそれぞれ訪れる旅行者数の比較

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長期滞在を目指す墾丁(Ken ting)のホテル

 同論壇終了後、筆者は墾丁国家公園へ向かった。墾丁国家公園は1984年に台湾で最初に指定された国家公園(※日本で言う国立公園)であり、台湾を代表する観光地である。墾丁国家公園には鉄道が乗り入れていないため自家用車やバスで行く必要があり、高雄市街からは約2時間の距離である。山岳や湖、海と自然が豊かで、特に海についてはサーフポイントやダイビングスポットなどが点在している地域であるが、まだまだ日本人も含めた外国人旅行者が多く訪れる場所にはなっていないとのことである。筆者は今回地元関係者の車で向かったのだが、通常の旅行者であれば高雄市街からレンタカーを借りる、あるいはバスに乗る必要がある。しかしながら、バスの案内や交通標識等については多言語表記が十分ではない状況だったので、個人旅行で訪れるにはまだハードルが高いと思われた。

 現地では、南仁湖企業(Nan Ren Hu Entertainment Co, ltd.)の鄭 宜芳 副理事長にお会いすることが出来た。同社は1989年の小墾丁渡假村(Kentington Resort)のオープンに始まり、現在では同リゾートの他に國立海洋生物博物館や、台湾の高速道路の複数のサービスエリア運営を行う、台湾でも有数の観光産業系の企業である(なお、現在3館で構成されている國立海洋生物博物館のうち、国が建設した2館を運営(※日本で言う指定管理者のイメージ)するとともに、1館を自社で建設し運営している)。鄭副理事長によれば、自社の原点である小墾丁渡假村について、現在の主たるマーケットである台湾国内のファミリーや学生の団体旅行(課外学習など)だけでなく、移住も含めた長期滞在などを取り込んでいきたいとの意向があり、ハード整備だけでなく地域住民との交流活動といったソフトの充実も含めて今後検討していきたいとの話であった。移住も含めた長期滞在については、東南アジアなど競合する場所も多いため、他の場所には無い魅力として墾丁が何を打ち出せるかがポイントになるものと思われる。

図2 交通拠点と関係施設の位置関係
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写真1 小墾丁渡假村

平面図

平面図

中心部に位置する広場

中心部に位置する広場

コテージエリア

コテージエリア

コテージ内

コテージ内

広域連携が求められる屏東(Ping dong)エリア

 墾丁国家公園から高雄への帰路、屏東県政府を訪問し関係者と意見交換を行った。屏東県としても観光に力を入れていきたいとのことで、特に日本からの旅行者増加は重要なポイントと捉え、日本で開催される旅行博等への出展や日本でのプロモーション活動を行っているとのことであった。一方で、日本からの旅行者の多くは台北を中心とする台湾北部を目的地とする観光にとどまり、なかなか高雄や屏東県などの台湾南部まで足を伸ばしてくれないこと、高雄国際空港への路線のキャパシティが限られており直接台湾南部に来づらいなどが課題としてあげられていた。

 一般的な日本人旅行者の目線で考えれば、台湾南部にどのような観光資源があるのか、更には「屏東県」と聞いて台湾のどこにあるかをイメージすることは現状では難しいだろう。まずは高雄、更には台南ぐらいまでを含めた台湾南部の観光としての魅力をアピールしていくことが重要に感じられた。

写真2 呉屏東県副知事ほか関係者を訪問

(右から、嚴助理教授(輔仁大学)、蘇教授(輔仁大学)、鄭副理事長(南仁湖企業)、野澤代表取締役社長(JTB総合研究所)、呉副知事(屏東県政府)、筆者、鄞研究教育所長(屏東県政府)、黄観光広報所長(屏東県政府)

(右から、嚴助理教授(輔仁大学)、蘇教授(輔仁大学)、鄭副理事長(南仁湖企業)、野澤代表取締役社長(JTB総合研究所)、呉副知事(屏東県政府)、筆者、鄞研究教育所長(屏東県政府)、黄観光広報所長(屏東県政府)

日本・台湾双方で地方部の観光促進を

 駆け足の台湾南部エリアの訪問であったが、高雄、墾丁、屏東それぞれで、台湾と日本それぞれを訪れる旅行者数の差の大きさ、地方部における多言語表記、移住や長期滞在などのマーケットの取り込み、広域連携による面的な魅力づくりとそのプロモーションなどの課題を感じることが出来が、これら課題は、正に日本においても重要な課題として取り組まれていることである。

 台湾から日本を訪れる旅行者は近年大きく伸びているが、一方向だけの増加はそう長く続くものではないだろう。日本人旅行者の台湾の訪問先が多様化し、台湾へのリピーターや旅行者数全体が安定的に増加することは2WAYツーリズムの観点からも重要である。これを実現するためには、日本・台湾双方で取組事例の成果や課題などの情報を共有しながら取り組み、それぞれの国・地域での観光活性化、更には地方創生を進めていくことが重要だと改めて感じた。

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