「国立公園」と「世界遺産」、どちらが人気? [コラムvol.315]

リオ五輪が終わって

 先週、リオデジャネイロオリンピックが閉幕しました。日本選手はもちろん、世界各国の選手のみなさんの素晴らしい熱戦に釘付けになり、眠れない日が続いた方も多いのではないでしょうか。次のオリンピックは、いよいよ東京です。4年後の2020年に向けては、官民をあげて様々な取り組みが進められています。

 そのなかのひとつに、環境省が進めている「国立公園満喫プロジェクト」があります。これは、2016年3月に政府がとりまとめた「明日の日本を支える観光ビジョン」に基づき、日本の国立公園を世界水準の『ナショナルパーク』としてのブランドを図ることを目標に実施されるものであり、7月末には、訪日外国人を惹きつける取組を先行的・集中的に実施する8つの国立公園が選定されました。

 ところで、「国立公園」は諸外国においてどのように捉えられているのでしょうか。日本人にとって人気のキーワードである「世界遺産」と比べて、どのような位置付けになるのでしょうか。そこで、Google社が提供しているGoogleトレンドというサービスを利用して調べてみることにしました。

日本における「国立公園」と「世界遺産」に対する関心は?

 以前のコラムでも紹介しましたが、Googleトレンドとは、特定のキーワードの検索ボリュームの動向を調べるサービスです。調べたいキーワードを入力すると、そのキーワードがどの程度検索されてきたのか、その推移がグラフで表示されます(表示される値は絶対値ではなく、経年の推移を相対的に示すものであるという点に留意が必要です)。さらに、Googleの検索システムは世界中で使われているため、特定の国における検索ボリューム(どこの国で検索されたか)を知ることもできるようになっています。

 そこで、まず日本を対象に、「国立公園」「世界遺産」の検索キーワードボリューム比較を行いました(対象期間は2004年から現在)【図1】。「世界遺産」は、毎年、世界遺産登録時期や夏休みなどに検索ボリュームが増えるなど季節波動はあるものの、概ね横ばいからややマイナスで推移していることがわかります。一方、「国立公園」は、「世界遺産」と比べて相対的に検索ボリュームが小さく、概ね横ばいで推移していました。この期間の検索ボリュームを平均でみると、「世界遺産」1に対し、「国立公園」は0.2となっています。

図1 日本における「国立公園」と「世界遺産」の検索ボリュームの推移

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Googleトレンドでの検索結果

諸外国における「国立公園」と「世界遺産」に対する関心は?

 次に、諸外国についても、同様に「国立公園」「世界遺産」の検索キーワードボリューム比較を行いました(対象期間は2004年から現在)【図2】。なお、検索言語は、その国の母国語(例:タイ→タイ語、アメリカ→英語)としました。これをみると、日本での状況とは逆に、いずれの国も、「国立公園」の検索ボリュームのほうが大きいことがわかります。
さらに、2004年から現在の平均値について、各国の「世界遺産」の検索ボリュームを1とした場合の「国立公園」の検索ボリューム(相対値)【図3】にまとめてみました。「アメリカ」は突出して「世界遺産」に比べ「国立公園」が多く検索されています。次いで、「ニュージーランド」、「イギリス」も世界遺産に比べて国立公園人気が高いようです。

 逆に、1を下回ったのは「日本」だけであり、その値も0.2と非常に小さいものとなりました。次に小さい値の韓国も2.5を示しており、日本における世界遺産人気は日本独特のものと言えそうです。

図2 諸外国における「国立公園」と「世界遺産」の検索ボリュームの推移

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Googleトレンドでの検索結果

図3 諸外国における「国立公園」の検索ボリュームの相対値
(「世界遺産」を1とした場合、2004年から現在の平均値)

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Googleトレンドでの検索結果より作成

 このように、日本では当たり前と思っていることも、世界標準でみると日本だけが違っているということがあるかもしれません。自分の国ではこうだから、という固定概念にとらわれないようにしなければ、と改めて感じたところでした。

参考

Googleトレンドhttp://www.google.com/trends/

環境省ホームページhttp://www.env.go.jp/