■富士山で入山料徴収開始
昨年6月に世界文化遺産に登録された富士山において、入山料(正式名称は「富士山保全協力金」)を徴収することが正式決定となりました。徴収期間は夏の登山シーズン、対象者は五合目から山頂を目指す登山者、金額は基本的に1人あたり千円で任意での徴収。協力金の使途は、五合目以上のトイレや救護所の設置・改修、登山者の安全対策や環境対策等に充てられることになっています。
■自然地域における利用者負担
有料化は富士山だけの問題ではありません。自然地域での質の高い利用を実現するためには、適切な管理が欠かせません。そのための財源確保や入域制限については大きな課題となっており、各資源や管理体制の状況に応じて、入山料や利用調整地区制度(※1)、協力金などが各地で検討・導入されています。奈良公園若草山では、なんと1931年から入山料の徴収が始まっています。
※1 :利用調整地区制度
国立公園の利用上核心的な自然景観を有し、原生的な風景が保たれている地区において、将来にわたる持続的な利用を実現するため、利用人数の調整等を行うことによって、自然景観や生物の多様性の維持を推進することを目的とした制度。環境大臣が定める期間に利用調整地区に立ち入る場合は、環境大臣(または環境大臣が指定した機関)に申請し、その認定を受けることが必要となる。
表 入山料・協力金等を徴収している地域(一例) |
上記のように、入山料や協力金などの名目で、利用者から料金を徴収する地域は少しずつ増えています。しかし、上高地や奥日光・戦場ヶ原などの日本を代表するような自然地域では入山料といった形での徴収はほとんど行われておらず(トイレ利用は一部有料)、日本においては無料で利用できる地域のほうが多いというのが実情です。おそらく、この根底には、自然は我々の生活のすぐそばにある身近なものであり、知らず知らずのうちに、空気と同じように「自然の利用は自由かつ無料」という考えが浸透しているのではないでしょうか。
■利用料金の支払いに対する意識
自然地域に立ち入る際に支払う料金について、利用者は、実際、どのように感じているのでしょうか。入場料等の支払いに対する意識について調べたところ、「公共展示施設等の観覧料金」の支払いに対して抵抗がある層は約2割に留まったのに対し、「自然地域の入域料」の支払いに対して抵抗がある層は約4割と、より抵抗感が強いことがわかりました。現状においても、博物館や美術館などの展示施設管理においては、多くの場合利用者負担が基本であり、利用者も当然のこととして負担している場合が多いようです。一方、自然地域については、まだまだ抵抗感が強いというのが実情です。
図 入場料等の支払いに対する意識 |
■自然の利用は無料か?
自然豊かな地域を保護保全しながら安全に楽しく利用するためには、遊歩道や登山道、各種施設の整備など、管理・運営に多くの人の手や資金が必要となります。これらの費用は、誰がどのように負担するのがよいのでしょうか。自然の利用は無料でよいのでしょうか。
利用者の負担であるべきなのか、国民全体の負担(税金)であるべきなのか、はたまた、その資源を活用することで利益を得ている事業者の負担であるべきなのか。対応策はひとつではなく、地域の状況や資源の状況によって異なります。資源を管理・運営する地域だけではなく、利用する側の我々も、そのことを意識し、考えることが第一歩ではないでしょうか。