観光地域づくりを「鳥の目」で見つめ直す [コラムvol.45]

2008.08.22

研究調査部 菅野正洋
研究員コラム

■「Googleマップ」を利用すると見えてくること

 最近では地図検索サービスを提供する数多くのウェブサイトがありますが、中でもよく利用されているサービスの一つが、「Googleマップ」だと思います。
 このサービスでは、地図だけでなく航空写真を見ることもできるのが特徴で、あたかも自分が鳥になったような感覚で、地上の様子を事細かに見ることができます。
 例えば、自分の住んでいる近所を拡大してみると、「この建物はこんな形をしていたのか」、「この道路はここにつながっていたのか」など、新たな発見をすることもよくあります。

■少し引いた視点で全体を見渡すことの重要性

 このように普段とは違った少し引いた視点(先の例で言えば「鳥の目」)で物事全体の姿(地)を把握することによって、逆にその中の個別の要素(図)が鮮明に見えてくるということはよく言われていることだと思いますが、観光地域づくりに取り組む際にも、同じような考え方が必要ではないかと感じたことがありました。
 ある調査の中で、全国から16の「成功観光地」を選定し、これまでの観光地としての取り組みを洗い出し、それらがどのように関わり合って現在に至っているかを表現した「取り組みフロー図」を作成した時の事です。
 その図を見ていただいた観光地域づくりの専門家(いずれも各地の取り組み事例を熟知された方です)が口をそろえて、「そうか、あの観光地はこういう流れの中で進んできていたのか」、「なるほど、あの取り組みは全体の中ではこのような位置づけにあったのか」と興味を示したことが私にとっては意外でした。
 その際に感じたのは、そういった専門家の方ですら、自分のよく知っている観光地の取り組みの流れ全体を意識する、という機会は案外少ないのではないかということでした。だからこそ、自分の知っている観光地の取り組みが1枚にまとめられた図を目にして(つまり少し引いた視点で見ることによって)、上記のような反応を示されたのだと思います。

■観光地域づくりに携わる関係者にも同様の視点が求められる

 実際に観光地域づくりに取り組まれている皆様はどうでしょうか。自分の関わっている事業について、表面的な結果については意識が及ぶとしても、その背景にある本来の意味や長期的に期待する効果などを忘れてしまいがちになってはいないでしょうか(例えば、観光プロモーションに取り組む際に、「どのようなコンセプトを打ち出したいのか」「誰に訴えかけたいのか」が二の次になり、イベントの集客数などのわかりやすい成果を追ってしまうなど)。
 これは、自分の携わっている事業が一連の流れの中でどのように位置づけられているか、またどんな意味を持つのか、という「少し引いた視点」が不足しているときに起こりがちな事なのではないかと考えます。

■「鳥の目」で自らの地域の取り組みの全体像を見つめ直してみる

 そこで、これまでの取り組みと、その全体のつながりを見つめ直してみるために、ご紹介したような「取り組みフロー図」を作成し、関係者間で共有されることをお薦めします。このことによって、既に取り組みが進んでいる地域においては、これまでの軌跡と、現在の取り組みがどのようにつながっているか、また今後何をすべきなのかが見えてくるでしょう。また、これから本格的に取り組もうとする地域においては、道筋を示した「行程表(ロードマップ)」としても機能します。
 この「取り組みフロー図」の作成には、特別な技術は必要ありません。また、作成に当たって必ずしも"正しい図"を目指す必要もありません。取り組みの評価は立場によって様々ですし、また、必ずしも全ての情報を正確に網羅できる訳ではないからです。
 重要なのは、観光地域づくりに取り組む全ての関係者が、少し引いた視点、つまり「鳥の目」で全体を見るという意識を持つことです。そのことが、単発で終わりがちな個別の取り組みに間につながりを生み、より高い相乗効果が生まれるきっかけになるのではないでしょうか。

「取り組みフロー図」のイメージ
「取り組みフロー図」のイメージ
 ※個別の取り組みを一つ一つのボックス、それらのつながりを線で表し、地域のこれまでの観光地域づくりの流れが一枚の図に全て表現されている。

 

この研究員のその他のコラム

 

最新研究員コラム

コラムバックナンバー