中山間地域の活性化(美咲町のたまごかけごはん) [コラムvol.51]

2008.10.03

研究調査部 中野文彦
研究員コラム

 先日、岡山県久米郡商工会にて「観光をキーワードに売上アップ」と題した講演をさせていただきました。久米郡は美咲町、久米南町からなる岡山県の中心に位置します。岡山市と津山市に挟まれ、JR西日本の津山線が通る中山間地域で、棚田百選に選ばれた美しい棚田が4つもある美しい地域です。また、美咲町柵原地区では硫化鉄鉱鉱山として栄えた歴史も有します。
 とはいえ、これまでほとんど観光客とは縁のなかった地域なのですが、最近になって美咲町では「たまごを通じたまちづくり」として取り組んだ「たまごかけごはん」が大ヒットし、県内はもとより県外から多くの観光客がやってくるようになりました。
 ここでは久米郡美咲町の取り組みを通して「観光・交流による地域の活性化」について考えてみたいと思います。

■地域の魅力のシンボル「たまごかけごはん」

 B級グルメに注目したまちづくり・地域づくりは近年盛んに取り組まれていますが、「たまごかけごはん」という着想は私には非常に新鮮でした。と、同時に「なぜたまごかけごはんなの?」という疑問も持ちつつ、当地にうかがいました。

 B級グルメの楽しさと難しさは「どこにでもある。しかし、そこにしかない」という魅力をどのように創るかがポイントだと考えておりますが、この「たまごかけごはん」は"さすが"の一言でした。
 まず、「たまご」。これは西日本最大級の養鶏場が域内にあることと、そのブランドでもある「森の卵」を直接入荷しています。
 さらに、「お米」は棚田百選の「棚田米」。「醤油・たれ」も地元の醤油醸造場のものを使用。さらにさらにお味噌汁、漬け物、器にも「地元産」を用いるという徹底ぶりでした。
 まさに「どこにでもある。しかし、ここでしか味わえない」という「たまごかけごはん」を生み出したのです。
 久米郡美咲町の「たまごかけごはん」は、第3セクターによる専門食堂「かめっち」をオープンしました。席数20席程度と決して大きな施設ではありませんが、予想以上の集客に成功しています。

たまごかけごはん 食堂かめっち
変哲のないたまごかけごはんだが、
中身は地域の「お宝」がぎっしり
美咲町では第3セクターによる
「たまごかけごはん専門店」をオープン

■アイディアを実現する力(突破力)

 ここで考えてみたいのは「アイディアを実現する力」ということです。
 「地域の歴史、文化、自然・・・」等、そこにしかない「地域の資源」を活かした特産品の開発、あるいは地産地消、地域ブランド等の考え方は、地域の活性化に携わる方にとってはもはや当たり前、何度も耳にするキーワードだと思います。皆さんの地域でも既に同様の「アイディア」を豊富にお持ちかもしれません。
 岡山県美咲町をはじめ、いわゆる「成功事例」と言われる地域とそうではない地域の違いは「アイディアを実現する力」ではないでしょうか。
 美咲町を例にすれば、町長が「たまごを通じたまちづくり」をコンセプトに掲げたことからはじまりましたが、当然それだけでは何も進みません。
 「たまごかけごはん」を実現するためには養鶏場や醸造場、棚田米からの仕入れルートの確保、価格交渉などが必要です(当然安全性、品質に最大限の配慮が必要です)。
 また、店舗をオープンするには改築、従業員の確保や教育、保健・安全対策、その予算確保。オープン以降は宣伝、PR、問い合わせ・苦情等への対応など多岐にわたる「調整」「交渉」などが必要になってきます。
 こうした「調整」や「交渉」は経験的には非常に困難が伴います。狭い地域であるがゆえにダイレクトに利害関係がからんだり、地縁・血縁のしがらみからなかなか前に進めない、といった苦労談は本当によく聞くところです。しかしこのハードルを突破しなければ「アイディア」は実現できませんし、地域は一歩も前にでることができません。美咲町ではこうした様々な「調整」や「交渉」に奔走した方が行政におりました。あまり詳しくはお聞きできませんでしたが地域の農家さん、養鶏場、醸造場、役場内を奔走し「アイディアを実現」してきたのではないでしょうか。現在も「たまごかけごはん専門店」の陣頭にたってお客様へのご案内に奔走しておられました。

■実現から発展へ

 今、美咲町、そして久米郡では「たまごかけごはん」に続くものを探っています。
 ブームはいつか過ぎ去るもの。いつまでも「たまごかけごはん」だけではいけないと早くも考えておられます。私は幸運にもこの地域を活性化させようという熱意にあふれた方々にたくさんお会いすることができましたが、お話をうかがうだけでもたくさんのアイディアが出ておりました。
 それぞれの立場で自分に何ができるのか、あるいは連携することによって何か新しいものが生まれるのではないかと、それぞれが積極的に取り組んでおられます。
 一人一人が考えて、実行しようとする地域は強い。「たまごかけごはん」が地域の方々に火を付けたのでしょうか。今後の展開にも注目です。

 

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