地元の観光振興への寄与を考える [コラムvol.364]

2018.02.26

観光文化情報センター 旅の図書館長 企画室長 主任研究員 福永香織

 当財団は、千代田区を中心に何度も引っ越しをおこなってきたが、いずれも賃貸オフィスであったこともあり、なかなか会社の住所を「地元」として認識するまでは至らなかったように感じている。全国の観光地のお手伝いをしている一方で、働いている地元の観光振興にどれくらい貢献できているかと聞かれると胸を張って答えられるものがあまりなく、その点が長年心残りであった。

 こうしたなか、2016年8月にオフィスが旅の図書館と一体となって南青山に移転した。今回の移転はいつもと違い、終の棲家となることを意識している。顔が見える“ご近所さん”も増え、地域とのつながりを以前より強く感じているところである。まずは旅の図書館として港区の観光パンフレットなどが置けたらと考えていたこともあり、港区が実施する「MINATOシティプロモーションクルー認定事業」の認定を受け、昨年から館内の一角に港区専用の観光パンフレットラックを設置している。

MINATOシティプロモーションクルー認定事業

 MINATOシティプロモーションクルー認定事業は、平成29年1月に策定された「港区シティプロモーション戦略」に基づいて実施されているものである。港区の魅力やブランドを国内外に広く発信する団体・個人を「クルー(仲間)」と位置付け、認定した取組に対し、区が所有するプロモーショングッズの貸出し、区の情報発信媒体(ホームページやSNS、観光冊子、メールマガジンなど)での紹介・周知、事業に係る経費の一部助成などの支援を行い、行政だけでなく、団体・個人等が連携を図りながらシティプロモーションを推進するとしているものである。

 2月23日(金)から3月7日(金)までは、港区役所の1階で認定事業の紹介展示がおこなわれている。それに先立ち、認定されている団体が一堂に会する交流会が開催された。交流会では認定された10団体全てが参加し、自己紹介、取り組み内容の紹介、意見交換などがおこなわれた(表1)。

表1 平成29年度 MINATOシティプロモーションクルー認定事業 認定団体一覧

地域の企業同士がつながりにくい理由、つながりたい理由

 認定団体からは、それぞれの団体の特性を活かした取り組み紹介に加え、取り組みの中で工夫していることや課題などが共有された。例えば、エリア内をくまなく回る宅急便の配達員は道を聞かれる機会が多いため、観光パンフレットを携帯し、いつでも案内できるようにしているという。また、なかなかパンフレットを手にとってもらえないという悩みを抱える団体の発言に対し、別の団体からはパンフレットの存在に気づいてもらうため、外から見えやすい場所にパンフレットラックを置くようにしているといった工夫なども紹介された。

 勉強不足極まりないが、近くにこういった活動をしている団体が複数存在していたことに驚かされた。企業同士の横のつながりがないという声はよく耳にするが、実際、その立場に立ってみると、特定の協会などに所属していないと地域内の企業や団体と知り合う機会がほとんどない、日常の仕事に追われ各団体の取り組みを常時ウォッチできる余裕がない、気になる団体があっても気になるという理由だけではコンタクトがとりづらいといったことがわかった。また、課題を共有したり解決策を相談できるつながりが欲しいという想いがあっても、お互いの顔が見えない状況で複数の団体が集まる機会を設けることは多大な時間とエネルギーが必要となる。改めて、当事者になってみて、横につながるということが簡単なようで難しいこと、つないでくれる人や団体の重要性を認識した次第である。

事業期間に縛られすぎない取り組み計画や関係づくり

 各団体の創意工夫に満ちた取り組みと地域に対する熱い想いは我々にとって非常に刺激となった。業種や業態が異なる企業ならではのスキルや強みを活かして連携することで、より多彩なアイデアや新しい取り組みが生まれそうな雰囲気が感じられた。

 一方で、こうした熱い想いや取り組みをいかに継続、発展させていくかがいつも課題とされる。自分自身が自治体の受託事業に関わってきた経験でも、支援してきた団体や地域の取り組みが事業終了後に続かなくなるケースも見られる。もちろん、継続することだけが全てではないし、事業期間中にいかにその後の取り組みの素地を作っておくかが重要であることは間違いない。

 しかし、企業や団体によっては経済的支援ばかりでなく、課題や方針について相談できたり、他の企業や団体とつながれる機会を求めていることも多い。事業終了後は各団体が自立して活動していくことが基本であることは言うまでもないが、各団体との連携が活発に行われている地域をみると団体同士の横のつながりはもちろん、行政側も各団体とつながりを持ち続けているところが多い。団体としても行政としても事業期間に縛られすぎない取り組み計画や関係づくりが重要ではないだろうか。

 当財団の取り組みもまだ始まったばかり。他の団体との連携も大切にしながら、地元の観光振興にいかに寄与できるか長い目で考えていきたい。

参考

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