観光と図書館の連携を考える~飛騨市図書館の取組 [コラムvol.405]

2019.09.24

観光文化情報センター 旅の図書館長 吉澤清良

 当財団は、公益事業の一環で、1978年より「旅の図書館」を運営しています。当館では、約6万冊の観光関連資料を体系立てて配架する独自分類の導入や、専門性・稀少性の高い蔵書の公開、書架のある空間で研究交流を行う「たびとしょCafe」の開催など、観光に関する情報や人のネットワーク拠点となる「観光研究プラットフォーム」の構築に向けて、様々な取り組みを行っています。

 最近では少しずつ図書館界でも知られるようになり、全国各地の図書館職員の研修等でご利用いただく機会も増えてきました。昨今では、まちづくりの中核施設として図書館を整備する動きも全国的に見られるなど、図書館は地域の再生・活性化を図る上で欠かせない存在として注目されているようです。

 さて、次号『観光文化243号』では、「観光と図書館~地域の観光に図書館はどう寄与できるか」を特集テーマとしています。現在、まさに編集作業の真っ最中ではありますが、本コラムでは、今回の特集の中で取り上げきれなかった「飛騨市図書館」をご紹介したいと思います。

四季の移ろいが鮮やかで、日本の原風景を感じさせるまち、飛騨市

 岐阜県飛騨市は、2004年2月1日、古川町、河合村、宮川村、神岡町の2町2村の合併により誕生しました。岐阜県の最北端に位置し、周囲は3000mを越える北アルプスや飛騨山脈などの山々に囲まれ、総面積のおよそ9割を森林が占めています。約24,000の人々が穏やかに暮らす、自然に恵まれた、四季の移ろいが鮮やかな地域です。

 飛騨市の中心は、今でも金森氏の城下町だった頃の碁盤目状の町割がよく残る古川町で、錦鯉の泳ぐ“瀬戸川と白壁土蔵街”、そして“古川祭”は特に有名です。地域の皆さんが、古くからの町並みを活かしたまちづくりに熱心に取り組まれています。

色とりどりの錦鯉がゆったりと泳ぐ瀬戸川

落ち着いた風情の白壁度土蔵街

明るく開放的、優しく落ち着いた雰囲気で、“あたたかさ”に満ちた飛騨市図書館

 8月下旬、その古川町を訪れました。趣のある小さな飛騨古川駅に電車が停まるたびに、多くの外国人旅行者も降り立ちます。古い町並みや社寺、観光施設などの多くは徒歩圏内、飛騨市図書館も駅からほど近いところ、飛騨市役所本庁舎に隣接して建っています。

 近代的な外観に、外光を多く取り入れ明るく開放的な館内、机や椅子に使われている飛騨の家具が優しく落ち着いた雰囲気を醸し出しています。今年7月には10周年を迎えて、例年以上に企画展示やイベントが行われています。

 飛騨市図書館が一躍注目されるようになったのは、飛騨古川の風景がモチーフとなり、同館にそっくりな図書館も登場する、アジア、ヨーロッパでも人気を博した新海誠監督のアニメ映画の公開された2016年夏のこと。今でも同館には国内外から幅広い年代の旅行者が“聖地巡礼(*1)”に数多く訪れています。同館では、図書館利用者の過ごしやすさを第一としつつ、今回の想定外の来館者にも、一定のルールのもとで写真撮影を許可するといったきめ細かな配慮をされています。また趣向を凝らした映画の特設コーナーも設置されています。こうした対応はSNSなどを介して広く知られるところとなり、多くの方から好評を得ています。

 取材に応じてくださった司書の方は、「聖地巡礼の来館者が書かれる『自由記述帳』は早くも14冊目。うちの図書館は“来る者拒まず”がモットー。旅行者の来館が市民の図書館への関心の高まりつながれば。」と笑顔で語られました。飛騨市図書館は、明るく開放的、優しく落ち着いた雰囲気で、そして何よりも“あたたかさ”に満ちていました。

開放感があり優しい雰囲気の館内

映画のシーンにも登場する閲覧コーナー

聖地巡礼者へのお願い

*1:コンテンツツーリズム学を専門とする岡本健氏(近畿大学総合社会学部総合社会学科准教授)によると、(アニメ)聖地巡礼とは「(アニメ)作品のロケ地、またはその作品・作者に関連する土地で、かつファンによってその価値が認められている場所を訪ねること」。

観光と図書館の連携、融合を考える

 飛騨市図書館の事例は、アニメ映画をきっかけに図書館自体が観光対象、来訪の目的となったケースだと言えます。このように「建物自体の魅力や独自コレクションの所蔵等により、図書館自体が観光対象・目的となる図書館」となったケースの他にも、全国各地には、「観光客の滞在・時間消費の場となる図書館(郷土資料などを通した地域文化の探求、イベントへの参加機会の提供等)」、「地域をつなぐ図書館(本を活かしたまちづくり、まちじゅう図書館等)」、「地域の魅力を発信する図書館(HPや館内での地域の観光魅力の発信等)」など、様々な事例を見つけることができます。

 次号『観光文化243号』では、こうした地域の観光に図書館が寄与している特徴的な事例を取り上げて、観光と図書館の連携、融合の現状やヒントを探ってまいります。ご期待ください。

資料

飛騨市ホームページ https://www.city.hida.gifu.jp/

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