公的な観光関連組織も統合・合併の時代へ [コラムvol.96]

2009.09.04

企画課長 牧野博明
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 2010年12月の新幹線開業に向け、青森県では観光施設等の整備・リニューアルとともに、受け入れ体制の見直しも着々と進められています。その一環として、2009年4月に(社)青森県観光連盟、青森県大規模観光キャンペーン推進協議会、(社)青森県産業振興協会(アスパム事務局)が統合し、新「(社)青森県観光連盟」として新たに出発いたしました。青森県及び青森市の観光のシンボルである観光物産館アスパムの事務局組織と、観光客誘致の推進役である(社)青森県観光連盟・観光キャンペーン推進協議会の統合は、限られた予算のもと、誘致から受け入れまで組織一丸で取り組むという強い決意の表れと受け止めることができます。
 このような組織の統合・合併は、官民を問わず今後もますます進んでいくものと考えられます。ただ、順風満帆の組織同士が統合・合併する例はごく僅かであり、多くの場合は人件費や不動産等の経費削減、競争に向けた人材や設備の補強等のために実施されます。なかでも、財政危機に面している公共施設や公的施設(3セクを含む)については"待ったなし"の状態となっており、既に統合・合併を行った組織だけでなく、水面下で動き始めている組織も多いのではないかと思われます。
 統合・合併は"最後の手段"と言えますが、実現するのは簡単ではありません。ここでは、公的な観光関連組織の統合・合併について、私も一部関りを持ちました前述の(社)青森県観光連盟を例にとりながら、考察を述べたいと思います。

■統合・合併までにはある程度の期間が必要("いつ"統合・合併するか)

 統合・合併の時期については、年度が改まる4月とする例がこれまでに多くみられます。但し、必ずしもそれに縛られる必要はなく、特に急を要する場合は早めに行う方がいいと思われます。
 なお、統合・合併までの手続き期間については、統合・合併相手(組織)や内容等にもよりますが、設立準備委員会の設置、統合・合併方針や組織の総括・解散に関する理事会・評議員会の開催等の各種調整に時間がかかるため、ある程度の長さが必要となります。(社)青森県観光連盟の場合、統合・合併する組織同士が近しい関係であったため準備期間はそれほど長くはならなかったものの、それでも新組織発足までに多大な労力を要しました(簡単な流れは下図を参照)。

図1

■統合・合併の素地は重要("誰と"統合・合併するか)

 同業種・業界の統合・合併については、組織風土の違いを除けば相手の業務内容等に対する理解・解釈が比較的容易であるため、相乗効果の発揮(お互いの施設の有効活用など)やムダの除去(管理部門の統合など)等の統合・合併の意義が見いだしやすいと考えられます。しかし、異業種・業界の場合、懇意の間柄であれば別ですが、通常は相手の業種・業界に対する違和感の除去がまずは必要になり、そのうえでお互いの業務内容や考え方に対する理解を徐々に深めていき、最後の段階になって相乗効果やムダの除去に辿り着くこととなります。このように考えますと、異業種・業界よりも同業種・業界における統合・合併が望ましいのは基本的には間違いないでしょう。但し、現実的には異業種・業界での統合・合併が効果的である場合もあるので、その場合には迅速且つ臨機応変な対応が求められることとなります。
 (社)青森県観光連盟の場合、観光推進組織(観光連盟、キャンペーン推進協議会)と産業振興組織(産業振興協会)というやや異なった位置づけの組織同士ではありましたが、「観光振興」というキーワードのもと、共同でキャンペーンを行う間柄でもありましたため、どちらかといえば同業種・業界の合併と言えます。特に、アスパムは物産(物販)機能だけでなく観光施設としての機能を備えているため、他県等の物産組織に比べて観光色が強いと言えます。この点においても、統合・合併に対する理解は比較的得やすかったと考えられます。ちなみに、観光推進組織と産業(物産)振興組織の合併は青森県以外でも行われています(一部を下表に記載)。

図2

■統合・合併後の組織の立地も重要("どこで"統合・合併するか)

 組織の合併・統合を具体的に進めていくうえで、様々な課題をクリアする必要があります。
 まずは、統合・合併後の事務所の立地があげられます。通常であれば基盤となる組織(規模の大きな組織、位置づけの高い組織)に事務所が置かれることとなりますが、観光関連組織の場合は集客効果の高い場所(主要観光施設など)や利便性の良い場所(主要駅など)、もしくは適当な場所がないため県庁や市役所等の観光部局の中に置かれることもあります。(社)青森県観光連盟の場合、アスパムという施設・建物があるため、特に大きな問題にはならなかったようです。

■統合・合併の具体的な条件・仕組みの整備も重要("どのように"統合・合併するか)

 次に、各種規程等の統一があげられます。社員(職員)や臨時雇い等の位置づけ、労働時間の考え方、休暇制度、給与の仕組みや水準など、組織によって異なりがある場合、どのレベルで揃えるかが重要になります。(社)青森県観光連盟の場合、(社)青森県産業振興協会の規程に揃える形で条件設定がなされました。
 また、新たな組織の仕組み(構成)もあります。合併・統合の初期段階では"寄せ集め"的な組織となることが多く、役員や職員の人事配置や役割分担も旧組織単位という非効率(例えば総務部門が実質的に旧組織ごとに存在)な状態となりがちです。多かれ少なかれ、それまでの組織風土や仕事内容が異なるため、慣れるまで-お互いの仕事内容やそのやり方等を理解するまで-に時間を要するのは仕方のないことですが、なるべく早い時期に真の一体化を遂げることがその後の組織の活性化につながっていきます。(社)青森県観光連盟の場合、時間的な制約もあり、旧組織を組み合わせた形態でスタートしましたが、今後は早い段階での人事の交流が期待されます。

■最後に - 統合・合併の"効果"が重要 <合併して本当に良かったか>

 組織の合併や統合は順風満帆に進むとは限らず、どんなに気心の知れた組織であっても「果たしてうまくいくのだろうか」という不安が常につきまといます。しかし、目的を持って統合・合併を行う以上、前向きな対応が求められます。
 そして最後に、統合・合併の"効果"の検証が必要となります。経費削減等の費用面の効果(マイナス要素の低減)ももちろん重要ですが、活性化(相乗効果)や意気昂然等の効果(プラス要素の増大)も重要です。(社)青森県観光連盟に対しては、青森の観光活性化のためにも、今後の多大なる"効果"を期待してやみません。

 

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