中山間地域の活性化(村上市朝日地域・山北地域) [コラムvol.72]

2009.03.06

研究調査部 中野文彦
col-72

 先日ひょんなことから新潟県の最北に位置する村上市の朝日地域・山北地域の視察ツアーに参加することができました。朝日地域(旧朝日村)・山北地域(旧山北町)は2008年に村上市に合併した地域で、日本海の夕日や海産物、川を上る鮭、山の豊かな恵みを活かした地域振興に取り組んでいます。
 私がお会いしたのは、朝日村まゆの花の会、さんぽく生業の里企業組合、さんぽく体験交流企業組合の3団体の方々ですが、その皆さんの一語一語からはいくつかの共通点があるように感じました。

■地域の"宝"が芽を出し、地域の"人"が根をおろした

 「地域が元気になる」ための取り組みとして「まちづくり・地域づくり」からスタートする地域は少なくありませんが、朝日地域・山北地域の取り組みも同様です。
 朝日村まゆの花の会は、地域の産業であった養蚕が衰退する中でその技術や文化を残したいという想いから、さんぽく生業の里企業組合は地域の伝統工芸である「しな布」を活かした村おこしから、さんぽく体験交流企業組合は「魅力ある集落づくり事業」を通した町内全集落を巻き込んだ地域資源(「地域の宝」)の再評価と活用からスタートしています。
 そして、1986年朝日村まゆの花の会設立、2000年さんぽく生業の里企業組合設立、2001年さんぽく体験交流企業組合設立と、地域の活性化の核となる組織が生まれました。こうした「組織」は地域の方々が運営するのはもちろんなのですが、企業組合を設立した山北地域では、地域の方々が"出資する"形態を取ったことが大きな特徴言えるでしょう。具体的にはさんぽく生業の里企業組合では、旧山北町の山熊田という22戸の小さな集落で5世帯が100万円ずつ出資、さらに集落外からも550万円の出資を得てスタートしています。さんぽく体験交流企業組合はメンバー14名で1150万円の出資金とうかがいました。
 同時に、町・村や県、国の事業を活用しながら、地域外の人々との接点となる活動の拠点を持っています。朝日村まゆの花の会は道の駅朝日に体験工房、さんぽく生業の里企業組合はさんぽく生業の里、さんぽく体験交流企業組合は空き校舎をふるさと体験の宿として整備した「交流の館・八幡」の管理運営団体となっています。

 スタートから20年近く、地域の方々、商工会といった団体の方々、地域外の応援団、村・町・県、そして国の方々を巻き込みながら、机上の空論で終わらせない、といったそれぞれの"想い"が少しずつ形になってきたところ、とうかがいました。

【写真1 朝日村まゆの花の会のまゆクラフト】
朝日村まゆの花の会
手作りキットは300円~。
域外からも多くの顧客がおります。
【写真2 さんぽく生業の里のスペシャルランチ】
さんぽく生業の里
旬の食材限定です。
つきたての栃の実餅はまさにとろけました。
【写真3 さんぽく体験交流企業組合の取り組み】
さんぽく体験交流
地域の方と外部のさんぽくファンが活動を支えます。体験プログラムは40以上。

■起"まち"家・起"むら"家のマインド ~自立した地域への夢

 こうした「根をおろした取り組み」は、共通のマインドに支えられています。 それは「コミュニティーを元気に!」という理念に支えられた「自立可能な採算を得る」(コミュニティーを支えるビジネス)といったマインドです。
 それぞれの組織は、それぞれのコミュニティー(まゆの会であれば、メンバーの主婦のグループやまゆを育成する農家、さんぽくでは集落の方々や体験プログラムやスローフードフェスタなどに参加する地元の方々)を元気にすることを目標に掲げています。その上で、地域の特産品販売や観光客の受入など通して一定の対価を得て、それを地域の農業、漁業、伝統産業、地域の人々に還元する仕組みとなっています。年間で1000~5000万円の売上をはじき出し、地域の方々の雇用や活躍の場を生み出しています。

 さんぽく生業の里の國井さんは「売上は集落に落ちる仕組み。組織としての黒字は3万円程度。でもお金が懐に入るようになってはいけない。そのさじ加減が大事。」交流の館・八幡の加藤さんは「体験プログラムは利益は薄いが、地域の人と地域外の人との接点となる。リピーター層を支えているのは体験プログラムなどから生まれた人と人のつながり。地域の皆さんにとって意義のある施設でないと。」と言います。

 こうした「コミュニティーを支えるビジネス」というマインドは、いわゆる観光の成功事例といわれる地域のリーダーや、一部の企業家、行政マンに見られる共通したマインドではないでしょうか。
 「地域が元気」であるためには、こうした、いわば起"まち"家・起"むら"家といった方々から学ぶことは多いと感じます。

 参考・引用:
   地域づくり2009.2月号P12 「しな布の復活と地域特性化への取り組み」
   総支配人 國井千寿子
   新潟県地域資源型ビジネス提案・成果評価事業報告書-「さんぽくごっつぉ物語」
   (2008.3)笹川流れ波物語り受入者協議会

 

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