観光分野における我が国の国際貢献 [コラムvol.293]

2016.03.07

観光文化研究部 主任研究員 菅野正洋

「遺産観光に関する国際会議」開催

 さる2月24日(水)~26日(金)に国連世界観光機関(以下「UNWTO」)と観光庁の共催により奈良県で開催された「遺産観光に関する国際会議」に参加してきました。

 会議では、我が国の重要な観光資源である世界遺産を「どのように磨き上げ、魅せ、守るか」というテーマに基づき、「保存と活用の両立」「観光資源の磨き上げ」「持続可能な活用にむけて」という3つのセッションが設けられました。各セッションでは、国内外からの発表者から取り組み事例が報告されるとともに、会場の参加者とも活発な質疑応答や意見交換が行われました。主催者発表によると、36ヶ国から185名の参加があったとのことです。

 内容については、4月に発行予定の当財団機関誌「観光文化」229号で報告を予定していますので、詳細はそちらをご覧頂きたいと思いますが、この国際会議をはじめとして、ここ2~3年ほど、UNWTOの取り組みに対して、我が国の官民の各セクターが関与を深める動きが見られます。ここでは、その動きを整理してみたいと思います。

UNWTOと我が国の関わり

 UNWTOは、スペインのマドリッドに本部を置く、持続可能で責任ある観光を促進することを使命とする国連の専門機関です。

 158の加盟国、6の加盟地域、2のオブザーバー、480以上の賛助加盟員が参加しており、開発と環境の持続可能性を伴った経済成長を牽引役として観光を促進するとともに、世界の観光部門に対して知見の拡大や観光政策の指導・支援を行っています。

 このUNWTOに関係する我が国の官民の動きのうち、主なものを整理すると表1のようになります。

                表1 UNWTOに関係する我が国の主な動き
hyo1

 このうち特筆すべきは、2015年9月に開催されたUNWTO総会において、中国、韓国、タイとともに、アジア地域に割り当てられている4議席の1つを得て、実に25年ぶりに日本がUNWTOの理事国に就任したことでしょう。

 かねてから、国際的な観光分野における日本のプレゼンスが低いことが指摘されていましたが、今回理事国となったことによって、観光分野における国際的な課題により深く関与することが可能となります。また、観光庁では、我が国の観光政策をインプットしていくことで、国際的なルールの確立や標準化などに貢献していくとしています。

 また、当財団はUNWTOが国連の専門機関となる前のWTOであった時代から賛助加盟員となっていますが、日本からの賛助加盟員が2015年9月にそれまでの3団体から新たに6団体増えて9団体と大幅に増加することになりました(表2)。

                   表2 日本の賛助会員と加盟年
hyo2

 こうした動きを受けて、観光庁では、日本の賛助加盟員等からなる「世界観光機関(UNWTO)活用検討会」を設置しています。2015年11月および2016年3月にはその会合が開催され、当財団も協議に参加しているところです。

観光分野におけるさらなる国際貢献を目指して

 UNWTOでは、重点項目として、「世界的課題における観光のメインストリーム化」「観光の競争力の向上」「持続可能な観光開発の促進」「貧困軽減及び社会開発に対する貢献」「知識の共有・教育・能力開発の支援」「パートナーシップの構築」の6項目を掲げ、様々な取り組みを行っています。また、2015年12月には国連が2017年を開発のための持続可能な観光の国際年とすることを宣言しています。

 これらのキーワードと照らし合わせて見た場合、我が国には、観光地域づくりやエコツーリズムに対する取り組みなど、国際的に貢献できるであろう知見が豊富に蓄積されていると言えます。

 当財団として、また私個人としても、学術的な研究成果の公表や、海外への導入も見据えた国内政策の実施支援といった面で、観光分野における我が国の国際的な貢献やプレゼンスの向上に寄与していければと考えているところです。

この研究員のその他のコラム

最新研究員コラム

観光研究コラム一覧

  
関連するタグ: