コロナ禍での図書館~“知の拠点”としての充実を[Vol.427]

2020.08.03

観光文化情報センター長/旅の図書館長 吉澤清良

 当財団では、公益事業の一環で1978年より観光・旅行分野の資料等を取りそろえた専門図書館である「旅の図書館」を運営している。しかし、今回のコロナ禍では、早い時期から不特定多数の人が集まることやその場所自体の危険性が指摘されたため、当館でもやむを得ず2月下旬から休館という措置をとるにいたった。40余年の歴史の中で、移転による長期休館を除けば、今回の休館は4ヵ月強(2/28~7/17)にも及ぶ長いものとなった。休館中、皆様にはご迷惑・ご不便をおかけしたことを深くお詫びしたい。

 当館では、休館中もスタッフは、来館者への対応以外はほぼ通常通りの業務を行いつつ、観光・旅行業界や図書館界のコロナ関連の動向を注視するとともに、日本図書館協会(https://www.jla.or.jp/)の「図書館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」などを参考にして、再開館に向けた検討とその準備を行ってきた。と同時に、この間は地域における図書館のあり方、観光振興との関わりについて、あらためて考えさせられる機会にもなった。

観光文化243号、地域の観光に寄与する図書館について考える

 当財団では『観光文化』という機関誌を年4回発行している。昨年2019年10月に発行した『観光文化243号』では、「観光と図書館~地域の観光に図書館はどう寄与できるか~」(※1)を特集した。

 近年の図書館は、図書の閲覧・貸出にとどまらず、地域住民の抱える課題の解決に役立つ情報の提供、地域とのつながり・コミュニティの場としての役割も期待されている。昨今では、まちづくりの中核施設として図書館を整備する動きも見られるようになってきた。様々な法制度の整備が進んだことで、特に2010年代に入ってからは、開放的なオープンテラス席や飲食が可能なラウンジを設けた図書館、カフェを併設した図書館、中心市街地の複合施設内に整備された図書館など、様々な図書館が登場している。そして、そうした図書館の中には、地域住民だけではなく、地域外からの通勤・通学者や来訪者(観光客)にもサービスを提供している施設も少なくない。

※1:https://www.jtb.or.jp/publication-symposium/book/tourism-culture/tourism-culture-243/

「知の拠点」として、その更なる充実をはかっていきたい

 ここ数年は、特に地域の賑わいや交流を生む図書館、まちづくりに寄与する図書館が注目を集めていたが、コロナ禍はここにも一石を投じることになったと感じている。図書館の場合、通常の閲覧・貸出であれば、そのサービスの性質上、飛沫や接触による感染リスクは少ないとは思われるが、図書館であっても賑わいや交流の創出は、いわゆる“3密”(密閉、密集、密接)を想起させるからである。

 『観光文化243号』では、図書館は地域文化の根幹を支え、「資料」と「人」、そして「地域」をつなぎ、地域の観光振興にも寄与する可能性を秘めているとして、図書館と観光の融合・連携のために大切な視点を3点整理した【表1】。今でもその考えに変わりはないが、このコロナ禍の現状にあっては、その対応はいささか控えざるを得ないとも感じている。

 現在、全国各地でコロナの感染者数が再び増加に転じ始めている。各種の報道をみると、コロナの治療薬やワクチンの開発には、どうやら今しばらく時間がかかりそうである。この間、各地の図書館でも何らかの制限付きの運営が求められるだろうが、図書館はこうした時期だからこそ「知の拠点」としての更なる充実をはかっていきたい。

 これまでも、特に地域の図書館は「地域住民が必要とする資料等を選書し、保存し、提供する」、「その地域の歴史や文化に関する資料を収集する」など、地域の「知の拠点」としての役割を果たしてきた。これは図書館の本来的な役割であるが、この延長線上に、“図書館と観光の融合・連携”は成立すると考えている。

表1 図書館と観光の連携・融合のために大切な視点

表1 図書館と観光の連携・融合のために大切な視点

図書館同士のつながりからコロナ禍の運営について学ぶ

 先日7月21日(火)、当館も会員になっている「専門図書館協議会(https://jsla.or.jp/)」主催のオンライン会議が開催された。設立の背景も施設の規模も異なる6館が、コロナ禍での苦悩・ジレンマ、再開館に向けた検討経緯、実際の感染拡大予防策、今後の活路を見出していくべきサービスなどについて情報共有が行われた【表2】。当館は、副館長の大隅一志からご報告をさせていただいている。

 他館のコロナ禍における運営について学ぶとともに、その取組姿勢には大いに刺激を受けた。このオンライン会議ばかりではなく、休館中は日本図書館協会や専門図書館協議会などからは、再開館に向けた有益な情報を様々ご提供いただいている。図書館界の横のつながりを非常に心強く感じた次第である。

表2 オンライン会議に登壇した図書館の概要

表2 オンライン会議に登壇した図書館の概要

7月20日(月)、旅の図書館、再開館について

 さて、その当館、旅の図書館であるが、内部での慎重な議論と再開館に向けた入念な準備を経て、7月20日(月)より再開させていただくことになった。当面の間は「事前予約制」で利用人数も制限させていただくことになるが、皆様のご理解とご協力を是非ともお願いしたい。

 当館は、2016年、現在の港区南青山ヘの移転を機に「観光に関する情報や人のネットワーク拠点となる観光研究プラットフォームでありたい」との目標を掲げて運営を行ってきた。先の見通せないコロナ禍にあって、今はまだ十分な受け入れができないことを歯がゆく感じるところもあるが、当館も観光分野の「知の拠点」としての更なる充実・強化をはかり、〝上質で心豊かな旅づくり〞に少しでも寄与していきたいと考えている。

旅の図書館の感染症拡大防止策の様子

■旅の図書館 再開館のご案内(お知らせ)

https://www.jtb.or.jp/library/information-20200716/

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