研究調査活動は当財団の中核的な機能のひとつで、30数名の研究員が観光文化振興基金を活用した自主研究活動に加えて、国や地方行政などからの委託調査に取り組んでいます。私も、1992年の入社以来、研究員として委託調査を中心に研究調査活動に従事していますが、特に地域の「観光振興計画」策定やその後の計画監理業務など、長年お付き合いを続けていますと、いつの間にか、組織内で担当の方面(地域)が決まってきたりするものです。
私の場合は、入社一年目で関わった青森県にはじまり秋田県、岩手県といった北東北(東北)が、自他ともに認めるフィールドであり、仕事を離れてもふらっと遊びに行くほどになっています。
さて、皆さんは”北東北”というと、何を思い浮かべることでしょう。この時期ですと、色鮮やかな紅葉でしょうか。あるいは青森ねぶた祭や秋田竿灯まつり、盛岡さんさ踊りといった夏祭りでしょうか。おそらく冬季の北東北をイメージされる方はそう多くはないかと思います。
どちらかと言うと人文資源よりも、山や渓谷、湖などの自然資源に秀でた北東北では、その”売り”となる観光資源が雪に覆われてしまう冬季は、北東北観光最大の課題と言われています。確かに訪れる観光客は多くありませんが、冬の北東北は寒くもなければ、暗くも、寂しくもありません!
今回は、”冬こそ、あたたかい北東北”のワンシーンとして、秋田県の冬祭り・小正月行事をご紹介したいと思います。
■ 2月の秋田は冬祭り・小正月行事が目白押し!
2月、秋田県内では、全国的にも有名な「横手のかまくら」(横手市)をはじめとして、それぞれに特色のある冬祭り・小正月行事が数多く開催されています。中には、六郷かまくらの小正月行事のひとつとして行われる「竹うち」(美郷町)のように町を南北に分けて激しくぶつかり合う勇壮な祭りもあれば、武者絵や美人画が描かれ灯火をつけた巨大紙風船が真冬の夜空に舞い上がり、幻想的な「上桧木内の紙風船上げ」(仙北市)など、首都圏にあっては思いもよらない祭りも数多く行われています。
長くて厳しい冬にあって、どの行事も一年間の無病息災や豊作などを願う、地域の風習に根ざしたもので、地域の方々が大切に守り伝えてきた伝統あるお祭りです。そして、見渡す限りの雪景色と澄み切って凛とした空気の中で繰り広げられる伝統的なお祭りは、不思議と雪国の”あたたかさ”を感じさせてくれます。
しかし、そうした伝統的なお祭りばかりでなく、比較的新しい祭りやイベントの中にも見応えがあり、感動的なものも少なくありません。私が10年来お付き合いしている湯沢市秋の宮温泉郷の「かだる雪まつり」もそうしたお祭りのひとつです。
■地域住民も、観光客も、一緒に”かだろう”!
かだる雪まつりの開催される秋の宮温泉郷は、秋田県南、西栗駒国定公園の豊かな自然の中に位置し、かつては政府要人や武者小路実篤ら文人墨客も多く訪れた、知る人ぞ知る山あいの小さな温泉郷です(http://www.akinomiyaonsen.jp/)。
ここ数年、私は、この小さな温泉郷を舞台に開催される「かだる雪まつり」に、”スタッフ”として参加させてもらっています
【かだる雪まつり】
- 温泉郷の活性化を目的として、1999年から毎年2月上旬に開催されています。
- 「かだる雪まつり」の「かだる」とは、この地域の方言で”参加する”を意味しています。
- “手づくり”にこだわり、温泉旅館や飲食店や商店などの観光関連事業者のみならず、地域住民や地域外のボランティアが一致団結して実行委員会組織で運営しています。
- 当初は「雪像作り」「浪漫街道ミニかまくら作り」「地域のライトアップ」などのイベントから始まり、近年はさらに「かだる雪中餅つき」「どんと焼き(小正月行事)」「七小町娘撮影会」など、祭りを盛り上げる参加体験型のイベントを増やして、バージョンアップを図っています。
秋の宮温泉郷の位 |
3000個のミニかまくらづくり(右側は筆者) | メイン会場を彩るミニかまくら |
誰でも参加可能なかだる雪中餅つき | 手づくり感いっぱいのイベントコーナー |
かだる雪まつりは、何とも言えずあたたかく、心地よく、ひととき寒さを忘れさせてくれます。
毎年、地域住民、観光客ともに、”かだる仲間”が増えていると聞いています。何度となく集まり議論を交わし、お金も労力もかけて取り組んできたその成果が、今、ゆっくりと、しかし着実にあらわれつつあります。”かだる”という明確なコンセプトのもと、”観光客も自分たちも一緒に楽しみながら”という肩の力を抜いたおもてなしが、観光客に受け入れられたのでしょう。
昨今、地域の観光振興において、”地域密着”、”体験”、”交流”などが重要視されていますが、かだる雪まつりはそうした取り組みのまさに好例です。
皆さんも”冬こそ、あたたかい北東北”へ、是非お越しください!!