観光のバリアフリー [コラムvol.20]

2008.02.22

研究調査部 吉澤清良

 日本は世界にも類を見ない少子高齢・人口減少社会を迎えています。これからの観光地には、こうした市場の環境変化にも対応して、“バリアフリー”、“ユニバーサルデザイン”の観点から、ハード・ソフトの両面において高いレベルで、「誰もが旅行を楽しめる観光地」の創造が求められています。
 今回は沖縄県の事例をもとに、観光のバリアフリー化について考えてみたいと思います

■リーディング産業だからこそ、真摯に取り組む観光バリアフリー

 沖縄県では観光がリーディング産業として順調に発展を遂げています。しかし、2006年に沖縄県に来訪した観光客564万人のうち70歳以上の高齢者や障害者が約33万人、1日あたり900人近くにも上るとみられています。
 こうした状況にあって、沖縄県では「誰もが楽しめる、やさしい観光地」を目標に、観光のバリアフリー化による、さらに質の高い沖縄観光の実現と、それに伴う“県内経済の活性化”、“県民生活の安定”、“県民の生活環境の向上”を目的として、2004年度から3カ年間、「観光バリアフリー化推進事業」(観光商工部)を実施していました。
 当財団は同事業の事務局を担当し、行政(観光、福祉、土木、教育等)、民間事業者、観光推進団体、福祉団体、NPOといった関係機関等との密接な連携・協力のもと、バリアフリーセミナーの開催、バリアフリー観光情報サイトの開設、「観光バリアフリー接遇ハンドブック」や車いすトイレ・マップの発行等々、様々な事業のお手伝いを行ってまいりました。
 2007年2月に3カ年間を総括したシンポジウムでは、仲井眞 弘多 氏(沖縄県知事)が、沖縄観光のさらなる飛躍に向けて、「誰もが楽しめる、やさしい観光地づくり」への高い気運を『観光バリアフリー宣言』として宣言するまでに至っています。

■沖縄バリアフリーツアーセンター開設!

 3カ年間の取り組みを通して、「沖縄観光のさらなる飛躍のためには、行政、民間ともに今から将来のマーケット構造をしっかりと見据えた戦略を立て、対応を図っていかなければならないこと」、また、「誰もが楽しめる、やさしい観光地づくりに終わりがないこと」が再確認され、沖縄県では、観光バリアフリー化を強力に推進していく仕組みとして「沖縄バリアフリーツアーセンター」の開設への期待が高まりつつありました。
 同センターの立ち上げには、観光バリアフリー化推進事業でも中心的な役割を担っていた「NPO法人バリアフリーネットワーク会議」や「NPO法人脳文庫」があたり、事業内容の精査、開設場所の選定、関係機関との調整等々に半年以上の時を経て、ようやく開設の運びとなったのです。
 2007年11月17日、念願の「沖縄バリアフリーツアーセンター」(運営:バリアフリーネットワーク会議、運営協力:脳文庫)が、那覇空港国内線到着ロビーに全国で初めて空港内に開設され、カウンターでは車いすを使用するスタッフが、利用者の目線に立ったきめ細かな情報とサービスを提供しています。
   (事業内容)
  ・バリアフリー対応の宿泊施設や観光施設の案内、介護タクシーやバス、レンタカーなどの紹介、
   車いすや音声集音装置などの補助器具の貸し出し 等
  ・「観光ケアサポーター」(同センター認定、介助に加えて観光ガイドも担う)の派遣 等
 バリフリーネットワーク会議事務局長で、同センター長の親川修氏は、「利用者の目線に立ったサービスができるだけでなく、車いすの方の社会参画にもつながる。沖縄なら、小さなお子さんから車いすに乗っているおじいちゃんやおばあちゃんまで、安心して家族全員で来ることができる。そういう場所にしたい。」と意気込みを語っています。

■観光バリアフリー化の取り組みは“第2ステージ”へ

 12月1日には、那覇市ぶんかテンブス館にも「沖縄バリアフリーツアーセンター国際通り窓口」が開設され、両センターとも多くの利用者を集めていると聞いています。
 2004年度からの3カ年間が第1ステージ(県が中心となり観光事業者をはじめとして広く県民の意識啓発を促していた段階)であったとすれば、沖縄観光のバリアフリー化は、同センターの開設で、第2ステージ(民間事業者を中心に関係機関の幅広い連携のもと具体的な事業を行おうとする段階)へと入ったと言えましょう。
 観光地は“日常生活にはない何かを期待し求めて多様な人が訪れる場”であり、ゆえに、日常の生活空間よりもハード・ソフトの両面において高いレベルで、“誰をもあたたかく、やさしく迎え入れる受け皿づくり”が大切になってきます。沖縄県と言うと、“青い海”、“青い空”、独自の文化といった卓越した資源ばかりが思い出されますが、沖縄観光はこうした地道な取り組みに支えられていると言っても過言ではありません。
 今後、同センターを中心に“沖縄観光のバリアフリー化がどのような進展をみせるのか”、大いに注目していきたいと思います

観光バリアフリーシンポジウム
・ 観光バリアフリーシンポジウム(2007年2月14日)にて、「観光バリアフリー宣言」をする仲井眞 弘多 氏(沖縄県知事)
沖縄バリアフリーツアーセンター(空港内
・ 沖縄バリアフリーツアーセンター(那覇空港内)。車いすの方でも利用しやすいように、カウンターが低く作られている。

 

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