“リムデイランチ”生みの親、本田先生に学ぶ [コラムvol.145]

2011.07.19

観光文化事業部 吉澤清良
col-145

■ 観光文化事業部で始まった“楽しく、有益な試み”

 ここはJTBF新小会議室、時は昼過ぎ。三々五々、職員がおにぎりにお茶、調理パンにジュースといった“軽め”のランチを持って集まってきます。そう、今日は“中年メタボ対策ダイエットデイ”、、、ではなく、観光文化事業部 恒例「リムデイランチ」の日。

 ところで、皆さんは「リムデイ.11」ってご存じですか?、、、
 「リムデイ.11」とは、札幌大学が始めた東日本大震災への募金プロジェクトで、“いつもの食事をちょっとだけ軽めにして、浮いたお金を募金しよう”という、継続的に被災地を支援する仕組みのことなのです。

【リムデイ.11の概要】
リムとは無理の反対。だから「無理じゃない」。「無理なく確実に支援する」というコンセプトで毎月11日に被災地に募金を送金。大学の食堂でリムデイランチ(400円)や週替わりリムメニュー(カレー、丼もの)を注文すると、それぞれ300円分、50円分が募金される。「リム・ファミリー」は自宅や会社での食事を軽めにしてその分を、大学指定の口座に募金する。また6月からは新たに大学内売店での買い物時のおつりを募金できる「レジリム」もスタート。
  札幌大学HP:http://www.sapporo-u.ac.jp/univ_guide/rimu.html
リムデイ

 観光文化事業部では毎月2回(第1・3月曜日)、リム・ファミリーとしてリムデイランチを楽しんでいます。職員は皆、「ちょっとしたことが被災地の継続的な支援につながるのなら」と好意的。また、ある職員は夕食時に子供たちと「月2回だと1か月に○○円、1年で○○円ぐらいになるんだね。いっぺん募金するのは大変だけど、少しずつならできるね」、「人を思う優しい気持ちは大切だね。うちでもリムデイをやろうよ」などと話が盛り上がったそうです。

■ リムデイランチ、きっかけは素敵な先生との出会いから

 観光文化事業部がこのリムデイランチを始めたのは、5月初旬に業務で訪れた阿寒湖温泉(北海道釧路市)で、札幌大学 本田優子副学長にお会いしたことに遡ります。
 本田先生は「リムデイ.11」の生みの親。アイヌの歴史や習俗に関する研究の第一人者で、アイヌ社会に伝承されてきた様々な物語を手がかりとしつつ、その“世界観”にまで踏み込んだ研究で知られています。

 本田先生は北海道大学卒業後、北海道平取町「二風谷」(アイヌ集落)に移り住み、11年もの長きにわたり、二風谷アイヌ文化資料館長 萱野茂氏(1926~2006)の助手として、アイヌ語教室講師(子どもの部)やアイヌ語辞典編纂の手伝いをされていたとのこと。先生はおっしゃいます、「二風谷も研究のためではなく、アイヌの人達のお手伝いがしたいと思って行った」と。
 そして、2005年に札幌大学助教授に就任されてからは、研究者でありながら“社会活動家”としても活躍されています。

 本田先生の最近の武勇伝は、2009年、アイヌの若者に対する奨学金制度「ウレシパ・プロジェクト」の創設。当時、文学部長の本田先生はその立ち上げに奔走。学内でも賛否両論がある中、若者の、地域の、そして日本の将来を思い、それこそ“クビ”を覚悟で奔走し、制度の創設にこぎつけたとのこと。今ではアイヌの若者がアイヌ語や独自の歴史・文化などを、一般の学生とも交流を深めながら学んでいます。

【ウレシパ・プロジェクトの概要】
「ウレシパ(育て合い)プロジェクト」は、アイヌの子弟を毎年一定数受け入れ、未来のアイヌ文化の担い手として大切に育てるとともに、学内に、多文化共生コミュニティーのモデルを創り出す仕組みを整えようとするもの。①アイヌ民族への奨学生制度、②学生の育成に協力する企業を募るウレシパ・カンパニー制度、③社会全体に共生の気運を発信するウレシパ・ムーブメント、3つの柱からなる。
  札幌大学HP:http://www.sapporo-u.ac.jp/soryo/no120/no120-01.html

 普段の先生はとても気さくで、笑顔の素敵な方。しかし、お話するにつれて「地域」(自然、歴史・文化、人)への熱き思い、その未来を見据えた活動に、私は共感し少しでもお役に立てればと、リムデイランチを観光文化事業部で行うことにしたのです。

■ 本田先生の“生き方”を目の当たりにして気づく

 本田先生は、ある雑誌に「私はいつも、我が頭上にきらめいているはずの『放浪の星』を信じ、導かれるように新たな世界への一歩を踏み出してきた」と書かれています。20代半ば、札幌に向かうバスの中で、偶然巡り会った占い師に、「あなたはね、放浪の星のもとに生まれているの。止まったらダメよ」とのご託宣を受けたのだそうです。
 本田先生はアイヌの歴史・文化を研究する研究者のお一人です。しかし、その“生き方”には、驚かされることばかり。先生はアイヌ研究、私は観光研究と分野は異なっても、同じ研究者として、とても尊敬のできる方。

 そして、私の脳裏には、「論語読みの論語知らず」(本などを読んで、その内容を知っていても、その本当の意味するところを理解していないため、その知識を、活用し実行できない)、そんな言葉がよぎったのでした。。。

■ 理論と“実践”の研究者へ

 私どもは、「受託事業や自主事業などを通じ、ツーリズムを手段として、観光文化を振興する」というミッションのもとに活動しています。
 しかし、時には「観光文化の振興とは何か」、「誰のための研究か」、「報告書にまとめるだけでよいのか」、「誰が喜んでくれるのか」と自問自答することもしばしば。そして、そうした時に思うのは、研究のための研究では“ダメだ”ということ。

 今回、本田先生にお会いして、改めて気づかされたことは、“学んで実践すること”の大切さでした。
 アイヌの歴史や習俗を研究し、アイヌの精神を学んだ本田先生は、絶え間なく奔走されています。今度は、「リムデイ奨学金」(被災した高校生が進学し学び、社会に貢献できる人材となるための奨学金)を創設したいのだそうです。
 そして、本田先生はおっしゃいました。「この時代にアイヌ文化を学んできた人間が伝えなければならないこと、果たさなければいけない役割があると私は感じています」と。

 私も観光研究者の一人として、本田先生に負けないように、学び、そして実践していかないと。“地域が豊かになる”、“人々を幸せにする”研究を、実践に活かせるように発信し、主体的に関与し、サポートしていきたいと強く思っています。

 

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