訪日中国人観光客数とクルーズ客数の推移から見えてきたもの [コラムvol.393]

2019.04.18

観光経済研究部 研究員 川村竜之介

訪日クルーズ客市場の状況

 2018年の訪日外客数※1は3,119万人で前年比9%増となった一方、近年注目を浴びていたクルーズ客(船舶観光上陸数)※2は234万人と、前年比5%減となりました。

 このクルーズ客ですが、国籍としては中国が190万人とクルーズ客全体の約8割を占めています。18年の訪日中国人は838万人ですが、このうちクルーズ客数が23%を占める状況となっており、訪日中国人市場の中では大きな存在です。そこで今回は訪日中国人市場の動向に着目し、クルーズ客と、それ以外の航空機等で来訪する観光客(以下「観光客」)との関係について探ってみたいと思います。

滞在日数による動向の違い

図1 中国人観光客数・クルーズ客数の推移

 図1は、訪日中国人観光客数※3とクルーズ客数の推移です。クルーズ客数は、入国審査手続きの円滑化(船舶観光上陸許可制度)の影響もあり、14年から17年にかけて大きく伸びています。しかし18年に入ってからはクルーズ客数の伸びが止まり、代わりに観光客数が大きく伸びることになりました。

図2 中国人観光客数・クルーズ客数の推移(滞在日数別)

図3 中国人観光客数・クルーズ客数構成比の推移(滞在日数別)

 これを滞在日数別に見ると、ある傾向が見えてきます。観光客を「6日間以内」の短期滞在者と「7日間以上」の中長期滞在者に分けて示したグラフが図2、そしてそれを合計100%の構成比で示したグラフが図3となります。

 構成比のグラフ(図3)を見ると、「7日間以上」滞在者の構成比が30%前後でほとんど変化していないのに対し、クルーズ客の構成比と「6日間以内」滞在者の構成比は連動しながら推移していることが分かります。ここ5年ほどは、クルーズ客比率が上がると「6日間以内」滞在の観光客比率が下がり、逆にクルーズ客比率が下がると「6日間以内」滞在の観光客比率が上がる、という関係にあったようです。

クルーズ客が増えると

 なぜ、「6日間以内」の観光客数だけがクルーズ客数と関係しているのでしょうか。ひとつの理由として、訪日中国人観光客のうち、短期で滞在する客層の一部が、クルーズ客に置き換わっていた可能性が考えられます。たとえば中国から沖縄県を訪問するクルーズ船の多くは、海上での移動も含めて3~4日程度の旅程となっています。「6日間以内」で日本を旅行しようと考えていた客層の一部が、航空機で来訪する代わりに、同程度の日程で訪日できるクルーズ旅行を選択していた可能性があります。

 トータルの人数としては、クルーズだろうと一般客だろうと、増えていればいいように思えますが、消費の観点からはそうは言えません。クルーズ客は、日本での滞在時間が少ない、宿泊施設を利用しない、現地での飲食が少ないなどの理由から、航空機で訪れる観光客より支出額は低い傾向にあります。観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、18年における中国人観光客の旅行中支出額は、滞在日数「4~6日間」の客層で平均16.4万円であるのに対し、中国人クルーズ客は平均3.5~5.0万円程度と大きな差があります。もし仮に、航空機で来訪していたかもしれない観光客がクルーズに移っていたのだとしたら、日本にとっては経済的な機会損失が発生していたことになります。

 これらはあくまで仮説に過ぎませんが、こうした可能性についても考慮し、航空機で来訪する観光客数とのバランスについても議論する必要があるのではないでしょうか。

※1:JNTO「訪日外客数」
※2:法務省「出入国管理統計」より、13~14年分は海港の寄港地上陸数、15年以降は船舶観光上陸数を使用。13~15年分は国籍別数値が公表されていないため、16~18年の国籍別構成比より推計。
※3:JNTO「訪日外客数」からクルーズ客数を引いた数値と、観光庁「訪日外国人消費動向調査」の「観光・レジャー目的」客比率を使用して推計。

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