地域別、訪日客の「食」に関する分析 [コラムvol.355]

2017.10.16

観光経済研究部 研究員 川村 竜之介

 日本を訪れる外国人にとって「食」は大きな楽しみのひとつである。観光庁の訪日外国人消費動向調査(平成28年)によると、日本滞在中の活動(「今回したこと」)における「日本食を食べること」の選択率は96%と非常に高い。好まれる「食」も客層により傾向が異なり、同調査の「日本旅行中に『一番満足した飲食』」は、韓国と香港が「肉料理」、台湾が「ラーメン」、中国が「魚料理」、そして米国が「寿司」などとなっている。

 この「食」の好みに関して、訪問する地域による特徴を探ってみたい。日本を訪れて何を食べるかは、どの地域を訪れるかということと関連している。今回は旅行口コミサイトにおける言語別口コミ数をもとに大まかな分析を試みた。

 データは、某旅行口コミサイトに掲載されている全国の飲食店のうち、口コミ数が10件以上の店舗について、言語別(英語、韓国語、中国語)の口コミ数をカウントすることで取得した。口コミは必ずしも良い評価ばかりではないが、飲食店への訪問の多さや関心の高さについては、ある程度の傾向を把握することが可能であると思われる。

 口コミサイト上では、各飲食店に、提供する飲食の種類に応じて「カフェ」「バー」「居酒屋」などといった飲食店タイプが複数設定されている(例えばお酒を提供するカフェでは、「カフェ」「バー」などと二つの飲食店タイプが設定されている)。今回は飲食店タイプのうち、「寿司」「海鮮」「焼肉・ステーキ・鉄板焼き」「居酒屋・バー」の4種類に絞って分析を行う。

 分析地域は、訪日外国人が多く訪れている東京都、大阪府、北海道、沖縄県と、逆にあまり訪れていない地域注1(東北6県、茨城県、群馬県、新潟県、福井県、三重県、滋賀県、鳥取県、島根県、岡山県、山口県、四国4県、佐賀県、宮崎県、鹿児島県)を「その他23県」として加えた5地域を対象とする。

図表-1 言語・地域別、各飲食店タイプの口コミ数比率

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※1)東北6県、茨城県、群馬県、新潟県、福井県、三重県、滋賀県、鳥取県、島根県、岡山県、山口県、四国4県、佐賀県、宮崎県、鹿児島県
※2)nは各言語・都道府県の総口コミ数

 図表-1は、各言語・地域における、飲食店タイプ別の口コミ数比率である。例えば韓国語の東京都における口コミ1,944件のうち、「寿司」タイプである飲食店の口コミは18.2%であることを示している。この数字を地域間において比較することで、地域における訪日客の「食」に関する特徴が見えてくる。

 「寿司」は中国語と英語では東京都における口コミが多い一方、韓国語では北海道における口コミが多い。「寿司」の中でも、北海道では”回る”寿司屋、東京都では”回らない”寿司屋の口コミが多い傾向にある。韓国語圏の訪日客は回転寿司をより好む特徴があるとみられる。

 「海鮮」は全体的に北海道における口コミが多い。主に海鮮系の食堂・レストラン・居酒屋で、北海道ではカニやウニを扱う飲食店の人気が高い。また、その他23県においても「海鮮」の口コミは他の飲食タイプと比較して多いが、特定の人気店に集中する傾向がみられる。

 「焼肉・ステーキ・鉄板焼き」については、言語にかかわらず沖縄県での口コミが多い。その多くがステーキ店であり、国籍にかかわりなく沖縄のステーキは人気であることが伺える。加えて、韓国語では北海道においても「焼肉・ステーキ・鉄板焼き」の口コミが多い。北海道では特にジンギスカンの焼肉店が多く、韓国語圏の訪日客から人気があるものとみられる。一方、その他23県では「焼肉・ステーキ・鉄板焼き」の口コミがとりわけ少ない。その他23県各地においてもブランド牛等は存在しているが、あまり訪日客の口に入っていないとすれば、もったいない状況であると言える。

 「居酒屋・バー」は全体的に英語圏の口コミが多い。地域別に見ると、大阪府で中国語と英語の口コミが多い傾向にある。大阪府では洋風の酒場やバーでの口コミが多く、中国語・英語圏の訪日客に人気であることが伺える。

 このように、口コミ数から様々な食の特徴を見つけることができる。今回は地域・飲食店タイプともにおおまかな区分で分析を行ったが、より細分化した分析も可能である。訪日客の地域と食に関する特徴を捉えるべく、今後も分析を深めていきたい。

注1)観光庁 訪日外国人消費動向調査 平成28年年次報告書の都道府県別訪問率(全体)が1%未満の県を選択。
注2)飲食店タイプが設定されていない飲食店は除外している。

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