頑張っています、"富士山・富士五湖観光圏" [コラムvol.77]

2009.04.13

研究調査部 吉澤清良
col-77

 皆さんは、「観光圏」をご存じですか?昨年度、私は必要に迫られて(?)、随分と観光圏には詳しくなりました。今回は、私が事業推進のお手伝いをしている「富士山・富士五湖観光圏」(山梨県富士北麓地域:富士吉田市、西桂町、山中湖村、忍野村、富士河口湖町、鳴沢村)の取り組みをご紹介したいと思います。

■ 観光圏とは?-平成20年度、全国で16地域が観光圏に認定される-

 2008年7月に成立した「観光圏整備法」(観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律)は、同年10月に設置された観光庁の柱となる法律の一つです。平成20年度は同法に基づき、全国で16地域が観光圏に認定されています。そもそも「観光圏」とは"国内外の観光客が2泊3日以上滞在して楽しんでもらえるよう複数の観光地や幅広い関係者が連携し、地域が主体となって創意工夫した取り組みを行うエリア"のことで、観光圏に認定されると地域が行う各種事業に対して、観光庁をはじめとした関係省庁が様々な支援をしてくれることになっています。

<支援の一例>
 (1) 観光圏整備事業費に係る補助金(補助率上限40%)
 (2) 着地型旅行商品の販売に係る旅行業法の特例
 (3) 周遊割引券の導入に係る運送関係法令の手続緩和
 (4) 宿泊施設に係る設備投資に対する財政投融資    など

■ "富士山・富士五湖観光圏"の誕生!

 富士北麓地域は、この観光圏の認定に向けた準備に全国でもいち早く着手し、2008年3月には市町村、観光事業者など関係者による会合を開催し、その後も打合せを重ねて、6月には「富士山・富士五湖観光圏整備推進協議会」(代表団体:(財)ふじよしだ観光振興サービス)を設立しています。その後、協議会による「観光圏整備計画」、「観光圏整備実施計画」の策定、同実施計画の認定を受けて、10月、『富士山・富士五湖観光圏』の誕生に至りました。
 ところで、皆さんは富士北麓地域がどこだかお分かりになりますか。山中湖や河口湖、富士五湖と言えば、「あぁ、あの辺りね。」とお分かりいただけるでしょうか。以前から観光振興に熱心に取り組んできた山中湖村や富士河口湖町はご存じでも、他市町村(富士吉田市、西桂町、忍野村、鳴沢村)の観光地としての印象は薄いかもしれません。
 現在、その"富士北麓地域6市町村"が一体となり、協議会「幹事会」(6市町村、観光事業者など)を中心として、多くの関係者(観光事業者、観光協会、旅館組合、商工会議所・商工会、農協など)との連携のもと、広域観光を推進しつつあります。


 <2008年度に実施した主な事業>

  • 観光サービス・ステップ・セミナーの開催(観光事業者向け)
  • 宿泊滞在プランの開発(宿泊施設関係者による検討)
  • 体験プログラムの開発(データベースの作成、観光事業者向けパンフレットの作成)
  • 着地型旅行商品の開発(観光事業者向け勉強会の開催)
  • 2008年秋のスタンプラリーの実施、2009春のフォトラリー開催(2009年4月1日~)
  • 共通乗車船券「富士五湖周遊パスポート」の作成(2009年4月25日発売開始)
  • ホームページの開設(http://www.fujigoko-net.jp/pc/
  • メールマガジンの発行
  • 広域観光パンフレット「ふじごっこ」の作成
  • 観光客アンケート調査(顧客満足度調査「CS-t」)の試験的実施
    http://www.jtb.or.jp/investigation/index.php?content_id=73
パスポート ワークショップ
富士山・富士五湖エリアの電車・バスが
3日乗り放題のお得なパスポート
富士北麓地域ならではの"宿泊滞在プラン"を
考えるワークショップの様子

 わが国を代表する観光資源の富士山を有する地域ですから、その観光のポテンシャルは絶大です。しかし、それだけに、こうした事業は"富士山に頼み"のイベントやプロモーションばかりに陥りがちですが、今回実施してきた事業は、見た目に派手で華やかな印象のものはほとんどありません。人材育成や観光情報の共有・発信、二次交通の整備など、地味ではありますが、観光地の基盤づくりに不可欠な内容であったと言えましょう。幹事会でも、「特に各種の人材育成セミナーなどは受講者にも好評であり、"ボディブロウ"のように、じわじわと観光圏内に広がっていくのではないか」との期待が高まっています。
 また、富士北麓地域では、観光圏整備事業の推進により、複数の観光地や関係者がそれぞれの特性を活かして、その機能や魅力を補完し連携することで、次のような効果が見込まれています。
 (1) 多様性の確保-個々の観光地の多様な魅力がアピールできるようになる
 (2) ポテンシャルの拡大-個々の観光地の魅力が集積してポテンシャルが拡大する
 (3) 機能の高度化-宿泊、体験、見学などの選択肢が増えて機能が高度化する

■ 課題を克服し、広域観光の先進地へ

 広域観光の推進はメリットばかりではありません。ある程度、予想されたことではありますが、富士北麓地域においても、いくつかの課題が顕在化しています。特に、「推進体制の強化」は、当面の大きな課題となっています。現在は、協議会では「責任担当制」(幹事会メンバーが1~2事業を責任者として担当する方式)を採用して事業を展開していますが、複数の市町村、複数の観光地が連携していくためには連絡調整が不可欠で、そのための時間と労力は膨大なものとなっています。今は、その連絡調整役を幹事会メンバー(富士吉田市、富士五湖観光連盟など)が担っていますが、将来にわたり広域観光を強力かつ効果的に推進していくためには、今後の推進体制のあり方(広域観光推進組織の立ち上げ、専任者の配置等)関する本格的な議論が待たれるところとなっています。

 これまで富士北麓地域における広域観光の取り組みは必ずしも活発であったとは言えません。しかし、平成20年度、観光圏の認定を機会に、広域観光の推進に大きな一歩を踏み出すこととなりました。いくつかの課題をかなえながらも、富士北麓地域は比較的スムーズに広域観光の取り組みに着手することができたと言えましょう。
 国の支援は最大で平成25年度まで継続されると言われています。この間に、もともと恵まれた観光のポテンシャルを有した富士北麓地域が、名実ともに広域観光の雄(先進地)となれるか否か、今後の展開にご注目ください。

 

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