観光地における個人情報保護 [コラムvol.111]

2010.02.26

観光調査部 菅野正洋
col-111

■観光地で割と見かけるこんな場面

 突然ですが、皆さんは以下のような場面について、何をお感じになりますでしょうか。

・・・とある有名観光地への出張の際の出来事。現地についてから、観光案内所で観光案内のパンフレットを物色していると、地域の歴史を解説しながら街並みを案内してくれるガイドツアーが実施されていることを知った。
 早速申し込もうと窓口へ行くと、担当の方から「これに必要事項を記入してください」と記入用紙を渡された。それを見ると、自分の前に参加の申込みをした観光客の名前や住所、連絡先、年齢などがリスト形式になって記入されている。
 仕事柄、全国の観光地にどういった観光客が来ているのか、特に出身地や年代は気になるところ。それを見て、「へー、こんなに全国いろんなところから観光客が来ているんだ。さすが有名どころ。あれ、年配の方だけでなく結構若い方も多いな」と無意識に目で追いながら考えた。・・・

■観光地における個人情報の扱いについての現状は?

 お読みになって「あれ何かおかしいな」と違和感をお感じになった方もおられると思いますが、ここで引き合いに出したかったのは「個人情報の扱いの方法」についてです。上記のケースでは、観光客がガイドツアーの申込みをするときに、それ以前に申込みを行った観光客の個人情報がいやでも目に入ってしまうのです。(上記のケースはあくまで仮想的なものです。念のため)
 さすがに観光地で、たまたま目に入っただけの他の観光客の名前や住所が悪用されるといったリスクは低いかも知れませんが、逆にゼロとも言えません。また実際の被害が無いにしても、個人情報保護について意識の高まっている今日、一部の観光客からすれば、そういった対応を取っている事業者に対しては、一種の「不信感」を抱くことにもつながりかねません。
 考えてみると、私たちが観光や旅をする際、旅行の申込みや現地に着いての宿泊のチェックイン、上記の例のような現地でのオプショナルツアーの申込みなど、自分の名前や住所、連絡先といった個人情報を提供する局面(観光事業者などから見れば入手する局面)が意外と多いことに気づきます。
 平成15年に個人情報保護法が成立し、最近では社会的にもかなり意識が高まっていますので、旅行業や運送業など、観光に関連する各業界では個人情報保護に向けた取り組みは既にかなり進んでいるものと思われます。
 ただ、全国の観光地などいわゆる「着地」側での取り組みについては、上記のよう例を始めとして、まだそれほど意識が高まっていると言い切れないのが現状ではないでしょうか。

■観光地単位での個人情報保護教育の必要性

 実際のところ、私自身は上記のような場面に対して、以前であればそれほど違和感を感じなかったと思います。それが、特に最近そういったことに気がつくようになったのは、2年ほど前に私たち財団法人日本交通公社が「プライバシーマーク」の認証を取得した際、社内プロジェクトチームの一員として、認証取得に向けた社内の個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の整備を担当したことにより、知識を得て意識が高まったからです。
 こうした自分自身の経験からも、個人情報保護についての対応や配慮には、何より教育(特に現場でのスタッフ教育)が重要だと感じます。
 例えば上記のプライバシーマークの取得に当たっては、相応の手間とコストがかかります。また、教育といっても大規模事業者ならいざ知らず、中小の観光事業者にとってはそういった機会を設けることも難しい部分もあると思います。
 ただ、例えば冒頭に挙げた申込み受け付け名簿のケースで言えば、「リスト形式」ではなく「個票形式」にするといったように、必ずしも大きな手間やコストをかけずとも、ちょっとした点を改善することで対応可能、といったことも案外多いのではないかと思います。
 また、個人情報保護に関する教育については、各事業者で実施することが難しければ、例えば、各観光地の観光協会などが年1回講師を招いての勉強会を開催したり、簡単な対応策をまとめたガイドラインなどを策定することによって、観光地全体での意識喚起を図るといったことも場合によっては必要なのではないでしょうか。
 このことにより、個別の事業者だけでなく地域全体でしっかり取り組んでいる、という地域イメージが観光客に意識されれば、地域全体の好評価にもつながるものと思われます。

 

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